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グラード荒野の戦い【7】

「さて、答えて貰えるのかしら?」


「はて、何だったか? 聖剣だかの『適合者』…だったか? んなもんいねぇよ。アイツ(・・・)以外に勇者なんかありえねぇ」




深く、深く、暗い場所。


人が魔窟と呼ぶ深淵。名を魔界。


視認できる程の濃厚な魔力が瘴気として噴出する紫色の霧に覆われた地獄。


かつて魔王が座し、その配下が膝まずいていた魔城に、それは居た。


川を流れる水の様に蒼く長い髪を持つ女と、燃えたぎる火のように紅い髪を伸ばした女。

二人とも人の姿でありながら青白い肌に金の瞳をしていた。……魔族だ。



「それを理解しているからこその適合者なのよ? それに話を逸らそうとしても、ダメ。 ……何故勝手に帰還したのか、よ。 元々貴女は出る予定ではなかったのに、貴方が望むから出してあげたら、直ぐに戻って来て…………何があったの?」


「気分が乗んなかっただけだ」


「嘘を言っても無駄よ? 帰って来てから私がここに呼び出すまで貴女、物凄くご機嫌だったじゃない。何故庇おうとしているのかわからないけど、貴女がそう言う反応を見せるのはただ一人。……()ね?」


黒一色の椅子に腰かけている二人は、和気藹々と言った様子ではなく、寧ろ今にも殺し合いをしそうな雰囲気を出していた。


「アイツには手を出すな!俺のモンだ!」


ガタン、と音を立てて立ち上がった深紅の髪の女……アグニエラは周囲を熱で揺らしながら蒼い髪の女を睨み付けた。


「ああ、やっぱり。彼がこちらの世界にまた召喚されていたのね?」


アグニエラの態度で理解した蒼い髪の女はクスリと笑って足を組み直す。


「ぐっ、……アクアディーネ!

テメェ、かま掛けやがったな!」


「掛けられる貴女の方が悪いのよ?」


怒鳴り散らすアグニエラに対し、アクアディーネと呼ばれた女は水のように軽く受け流す。


「そう……彼が、ユウ・ヤシロが来てしまったのね。先代の勇者……いいえ、彼はまだ当代の勇者だったわね」


「アクアディーネ!ユーヤに手を出したら燃やすぞ!? アイツを殺んのは俺だ!」


「貴女の彼の好きっぷりは理解したけど、名前くらいちゃんと言ってあげなさいな」


少し呆れたように溜め息をついたアクアディーネは、静かに席を立ち歩き出す。



「っ!!」


「……安心してくれて構わないわ。何も彼にちょっかい出したりしないわよ。……私には私の計画がある。その障害にならないのなら別に勇者の事なんて良いわ。貴女の好きにしなさい」


首もとに炎斧を突きつけられたアクアディーネは涼しげな顔で言い、指で炎斧を退かしその場を立ち去って行った。


「………好きに、か」


アグニエラは、数日前の、再びの邂逅を思い出す。





「!?」


アグニエラの顎が上を向く。 まるでアッパーを食らったかのように仰け反ったアグニエラ。


強い衝撃(・・)を食らい、アグニエラは少しの痛みでありながら、まさに世界がひっくり返った時のような、大きな衝撃を受けた。


「ふぅ、……咄嗟だったけど復活までの時間稼ぎにはなったか」


アグニエラが爆発させたはずの目の前の男の頭が、無傷だったのだ。いや、それだけじゃない。


「お、……お前!」


吹き飛んだフードの合間から、黒い髪……そして見知った顔が現れる。

驚きと歓喜を感じながら、アグニエラは声を上げる。


「く、……クハハハッ! 最高だぜ!お前が帰ってきていたなんてなぁっ!!」


炎の斧槍を振り回し、笑いながら勇に斬りかかったアグニエラ。


神速で放たれるそれを、紙一重で避けながら勇はまた、親指を弾くような動作をした。


「二度も効かないぜ?」


素早い動作で斧槍を引き、アグニエラは斧槍の柄で不可視の弾丸を楽々と防ぐ。


「くっ…俺が中学卒業から高校入学、そして再召喚されるまでの間に極めた消ゴム要らずインビジブル・イレイサーが効かないとは……っ!!」


「そんな小手先の技で、俺が止まるかよぉぉっっ!!」


アグニエラがその長い脚で地面を踏みつけると、地面を吹き飛ばし、辺りに炎柱が噴き上がる。


「このっ…!」


ランダムに現れる炎柱から逃げるため距離を取った勇に、炎を纏ったアグニエラが肉薄する。


霊化(エレメント)!? テメェ、マジで殺る気かよ!?」


「当然だろ?…あたし(・・・)が何年待ったと思ってんだ?」


咄嗟に水晶剣を抜き、アグニエラの攻撃を防いだ勇が驚きに声を上げる。

皮膚は赤く、髪は炎のように揺らめき、炎を纏った裸体のアグニエラが、二振りの斧槍を巧みに操り、勇に攻撃するチャンスを与えないよう連撃を叩き込む。


(ちっ………我が儘(・・・)は言ってられねぇか)


アグニエラの猛攻を防ぎ切りながら、活路を見いだせない勇が、大きく舌打ちをする。


「この三年、お前と殺り合いたくて殺り合いたくてたまらなかったんだ! 

……本気を出してくれなきゃ、困るぜ」



二振りの炎斧が一つに交わり、巨大な炎斧となる。


「!?」


「なんで本気を出さねぇのか知らねぇが……本気を出さねぇなら出させるまでさ」


高く跳び上がり、空中で身体を捻り、投擲の構えを見せる。



「吹き飛べ、悉く……『ゲヘナ・フレイム』!」



それは全てを灰塵とする炎。


たった一撃で国を滅ぼした事もある一撃が、この荒野に放たれた。


「…………やれやれ、やっぱスローライフなんて無理なんかねぇ」


溜め息混じりに苦笑した勇が、空に手を掲げる。まるでそこに何かがあるように、まるでそこに何かが来るように、大きく手のひらを広げる。


我が魂は願う(ソウル・ディザイア)



辺りを、眩い極光が包む。






聖ロンバルディア暦146年。


聖女(アマテル)再臨の地、グラード荒野。


この年、グラード荒野は後々に続く伝説の始発点と言われている大きな戦いが起こった。


『グラード荒野迎撃戦』


魔王軍混成三十万対ルクセリア王国を盟主とした、大陸最大の軍事国家バランシェル帝国と魔法大国リーゼリオン皇国を始めとする諸国、そして各都市から集めた傭兵らで結成された連合軍十万。


当初こそ爵位持ちを始めとした敵達に苦戦を強いられていたものの、

『勇者カイト』と『蒼天騎士レオンハルト』の二人は共闘し公爵(デューク)級の、風鎌の戦兵ウェントスを見事撃破。

戦局を大きく覆す。



勇者と聖騎士の活躍の裏で、『黒き執行者』と名乗る謎の男の伝説もここで幕を上げる。

二振りの剣を使う事と、全身を黒い服で揃えている事以外に外見的特徴は知られず、疾風のような疾さで戦場を駆け、嵐のように敵を葬る姿を見て、戦場を共にした者達は皆、


死を与える黒い風(ストームブリンガー)


と呼んだ。


彼は勇者と聖騎士がウェントスを倒すのと時を同じくして、彼と同格と知られる岩鎚の戦将テラキオを一人で撃破したと言われている。



またこの戦争には四人目となる六刃将の登場も確認された。


神聖ウルキオラ教が付けた仇名『断罪のアグニエラ』だ。


しかし彼女は登場して直ぐに撤退する事になった。否、撤退せざるをえなかったのだ。



『断罪のアグニエラ』は、極光と共に現れた白き鎧に身を包んだ、先代の勇者に倒されたのだ。

かつて世界を救った英雄。魔王を撃退した最強の剣士。先代の勇者の登場に、アグニエラは彼に挑むも手も足も出ずに撤退していったと言われている。



彼はかつて苦楽を共にしたシルヴィア・ロート・シェリオット・リーゼリオンのために駆け付けたとされているが、その本当の理由は定かではない。



魔王軍の頂点である六刃将を二柱も失った魔王軍は爵位級が息を合わせて撤退し、魔物だけとなった魔王軍は連合軍に殲滅させられた。


連合軍は三万を越える死傷者、重負傷者を出しながらも、快挙と言われる程の勝利を手に入れたのだった。





『聖女ティリアールリと黒の勇者、出逢いの章第七節から一部抜粋』



エセ戦記風に止めて見ました。

聖剣の全貌はまだお見せできません!



そして更新が一日遅れた事と、感想への返しが遅れた事、深く申し訳ないと思っています。

本当に申し訳ありませんでした。




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