表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先代勇者は隠居したい(仮題)  作者: タピオカ
孤島の大迷宮ノルドヨルド編
125/192

天よりの使者

古き翼(アル・ト・フリューゲ)


手に携えた聖剣から光が溢れ出し、次の瞬間には、俺の身体は淡く光る白亜の鎧に包まれていた。

勇者として語られる白亜の鎧姿に、パイモンが目を見開いた。


「な、ななななぁっ! そ、その姿……巫女の血統などではなく、『担い手』であったかっ!!」


心底驚いた様子のパイモンに対し、俺は自分でもわかる程冷静だった。


「『担い手』を知っているってんなら戦おうって気は起こすな? 公爵相手でも、この姿の俺を止める事は叶わない」


聖剣を解放した俺に対し、対抗できるのはまさに魔王だけとなる。六刃将が集まっても一撃を耐えれる程度でしかない。


「ぐ、ぐぬぬ……っ! わ、わかっておるわい」


パイモンは完全に予想外だったらしく、額には汗が浮かび、先ほどまであったある種の

カリスマとも言うべきものが吹き飛んでいた。


「そもそも、初代さんの子孫だからって何で人間を配下に置こうと思ったんだよ」


「それは無論、世界征服のためじゃ」


俺が尋ねると、パイモンは当然、とでも言うように笑って言い切った。


「天も地も、人も魔族も、神ですら皆等しく配下に置いて、わらわがこの世界に君臨するのよ。キキキッ、どうじゃ、楽しそうじゃろう?」


冗談に聞こえる言葉だが、当のパイモンは冗談を言っているとは思えない。……本当に、やろうとしているんだ


「そいつは……うん。優しい世界になりそうだ」


ふと俺の脳裏に浮かんだのはエルフを始めとする亜人達の姿。パイモンが言う世界には、人種差別は無さそうに思えたのだ。

己が望んでも手に入れられなかった世界だが、この吸血姫ならば成し得るのではないか? とそんな考えが生まれる。……が、


「ま、悪いが配下にはならないけどな」


もう勇者としての俺は、この世界には必要ないはずだ。……そうであってほしい。


「キキッ、そうじゃろうな。……見逃せ。わらわの頼みはそれ一つじゃ」


「人間を悪意ある暴力で従わせるな。その時俺はお前の敵になる」


「キキキッ、契約成立と言うわけじゃな」


そう言ってパイモンは俺に対し手を差し伸べて来た。握手を求めて来たのだ。


「全く……」


苦笑しながらも握手に応えようと手を伸ばすと、



パイモンの身体を、眩い程の光が貫いた。


「む、お、お?」


「閣下っ……っ!?」


何が起こったのか把握できずに首を傾げるパイモン。その主を救おうと駆け出したリヴァイアサンもまた、光に身を貫かれ、身動きが取れなくなってしまった。


「これは……、おのれ、おのれおのれおのれおのれ!! 使徒如きが……ッ。わらわを『魔界大元帥』ベルゼビュート大魔王の孫娘、二百の軍団を操る『パイモン』と知っての狼藉か!!」


パイモンは真上から降臨・・して来たものを見て、呪詛を吐くように叫んだ。


それにつられ見上げた俺の視界に、ある種魔族より厄介な、人間でも魔族でも精霊でもない存在が写った。


《二百の軍団を操る程度の矮小なる存在が、良くも我らが父にして母なる神を貶められると思えたものだ》


やけに頭に響いてくる、感情なんて感じられない無機質な声。その癖高圧的に感じるこの声の主は、光の槍に串刺されたパイモンとリヴァイアサンの前に降り立った。


「……ッ、またなんて面倒くさい奴が現れたもんだ」


三対六枚の翼、人に似た姿でありながら人を大きく逸脱した存在。

美しい女の姿をしていながら、まるでロボットのような無骨な鎧の身体を持つ存在。

天よりの使者、天上の防人さきもり戦乙女などとも呼ばれる存在。

その名を『使徒』。


《神の子らよ、お前達の選択は誤りである》


パイモン達に背を向け、俺達に向き直った使徒は、まるで罪を告発するような物言いでそう言った。


「誤り? ……」


《魔族の身でありながら神に対する不届きなる発言。よもや聞き逃したとは言わせないぞ》


「神でさえ配下にする、って? 別に俺はどうでもいいんだが? 神敵なんて言われてるし」


《神の子でありながら神を貶めるか、担い手よ》


使徒の目が鋭くなる。感情を感じさせない声だが、その実肌がピリピリする程の殺気を放ってきている。


「神が何をしてくれた。神が何をしてくれる? 救いを求めて伸ばした手を眺めているだけの神に、俺は恩義も何も感じねぇ。崇めてもらいたきゃ少しは働けって言っておけ!」





「って事があってな?」


「な、なっ、なんてことをしてるんですか貴方はああああっ!!」


テーブルを叩き、ベルナデットが声を上げながら立ち上がる。


ここはノルドヨルドの大衆酒場。迷宮を脱出して来た俺達はベルナデットが起きるのを待ち、この酒場に集まっていたのだ。


「吸血鬼を見逃そうとしたのは……ま、まぁヤシロさんですし解ります。けどっ、何も使徒様と戦う事無いじゃないですか!」


実はあの使徒と言うのは、神聖ウルキオラ教団が崇める、教団のシンボルのような物なのだ。

一応天の使いだしな。


「いやしかしだな? 先方はやる気十分だったわけだし……」


「使徒様が神様をコケにされて黙っていられるわけないじゃないですか! ヤシロさんはもう少し穏便に済ませるよう努力してください!」


グワーッ、とまくし立てるようにベルナデットは叫び、次いでテーブルに突っ伏した。


まぁ何はともあれ奇っ怪な台風は消え去って、無事に迷宮から脱出できたんだ。それで良しとしようじゃあないかベルナデットよ。


「キキキッ。我が主の武勇を見せたかったぞ、巫女の血統よ」


「貴女が付いてきている事が一番の問題ですよ!」


新たな火種がついて来る事になっちまったけどな。


お待たせしました、最新話です。使徒がなぜ登場したかは次話で解説します。


ではまた次回。お楽しみにー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ