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97話:誘惑


 常夏の島から戻った翌日からみんなのレベリングを再開した。

 昼間はみんなと一緒に、夜もDP(ダンジョンポイント)を稼ぐために1人でダンジョンに潜ってるからな。最近の俺は結構忙しいんだよ。


 他にも諜報部隊が集めた情報についてエリザベスと打合せしたり。エリザベスだけズルいとサターニャが拗ねるから相手をしたり。

 クエスから辺境伯領の報告も聞かないといけないから、それなりの頻度で会ってるし。トライアンフが一緒に飲もうってうるさいから毎週飲んでる。


 あとは魔族軍側の情報源としてバレスとも定期的に会ってるな。

 そう言えばバレスの奴は、魔族軍の大規模侵攻が失敗しても上手く立ち回って失脚しなかったんだよ。

 俺が殺した総司令のバリスタ・エリミダスに敗戦の責任を全部押しつけたらしい。バレスは嫌な奴だけど、結構侮れないよな。


 まあ、こんな感じで結構忙しい毎日だけど。忙しさを言い訳にして先延ばしにした訳じゃないんだ。

 あいつ(・・・)に会う前にもっと情報を調べようと思ったら、巧妙に隠されたから時間が掛かったんだよ。


 今は午前零時過ぎ。俺は獣人の国ギスペルの首都グラニカを訪れてる。

 アレックスの昔の仲間の1人、レヴィン・ペトリューシカに会うためだ。

 獣人には夜行性の奴もいるせいか、グラニカは眠らない街だ。

 盗賊ギルドも当然のように24時間営業で、事前に連絡したらこの時間で構わないと言われたんだよ。


 盗賊ギルドの入口でレヴィンに会いに来たと告げると、1番奥の部屋に行けと言われた。

 中に入ると如何にもって感じのガラの悪い連中がいたけど。話が通ってるらしく誰も俺を止めなかった。

 廊下が入り組んでいて解りにくいけど、たぶんここが一番奥の部屋だよな。

 ノックすると『入れ』と言われたので扉を開ける。


「アレク・クロネンワース。そろそろ来る頃じゃないかって思っていたよ」


 部屋の中には、ふかふかのソファーに寝そべる雪豹の獣人レヴィンがいた。

 縦長の瞳孔の目で面白がるように俺を見てるけど。相変わらずビキニにショートパンツの露出度の高い格好だから目のやり場に困るんだよ。


「勿論、アレクはあたしを抱きにて来たんだろう? 奥にベッドがあるから早速行こうじゃないか。それともソファーの方が良いかい? あたしはどっちでも構わないよ」


「なあ、レヴィン。ふざけるなら帰るぞ」


 俺を揶揄(からか)うなよ。真面目な話をしに来たんだからな。


「なんだい、詰まらないね。あたしは結構本気だったんだよ。あんたみたいな男は嫌いじゃないからね」


 何だよ、まだ言うのか? 客観的に見ればレヴィンは大人の魅力があるし、美人でスタイルも良いけど。俺はそういうのに興味ないんだよ。


「勝手に調べさせて貰ったけどさ。レヴィンは結構手広くやってるんだな。ギスペルだけじゃなくて、あんたの息が掛かった組織は世界中にある。

 それに俺が同じようなこと(・・・・・・・)をしてることも、あんたは知ってるんだろ」


 こっちから先に手の内を晒さす。探り合いをするのは時間の無駄だからな。

 エリザベスと諜報部隊がレヴィンの組織の情報を粗方掴んだけど。レヴィンの方も諜報部隊が情報源として使ってる各地の組織については調べがついてるようだ。

 レヴィンの組織の連中は、こっちが探っていることを初めから解ってるような反応だったって話だからな。


「あたしは年季が違うからね。情報を探ってる奴らは常にマークしているから、同じ意図で行動している奴らは直ぐに解るよ。背後にいるのがアレクだって思ったのは私の勘だけどね」


 俺がレヴィンの組織を探るように指示を与えたことで、諜報部隊は各地の組織を一斉に動かした。

 同じタイミングで探り始めたから、レヴィンは俺の意図に気づいたってことか。なるほどね。勉強になるけどな。


「なあ、レヴィン。そこまで解ってるなら俺に協力してくれないか。俺は前世の記憶に目覚めてからまだ2年半しか経ってないから。この世界について知らないことが多過ぎるんだよ。手掛かりなしで情報収集しても、本当に知りたい情報に辿り着けないからな」


 俺は腹の探り合いをするつもりはないからな。ストレートに話す。


「レヴィンなら俺が知らないことを知ってるんじゃないか。例えば俺たちを転生させた奴の正体とか。今ダンジョンに起きてる変化の原因とか。

 そのものズバリじゃなくても、何か情報を掴んでるだろ。それを教えてくれるなら、俺は対価として元魔王としての力を提供するよ」


 俺の勝手な思い込みかも知れないけどな。レヴィンみたいな奴がこの世界に14年もいて何も掴んでない筈がないと思ってる。


「アレク、何を言ってるんだい。あたしがそんなことを知ってる筈がないじゃないか。もし知っていたら、とうに高値で売ってるよ」


「そうか? 俺も転生者だから情報の価値は解ってるつもりだ。情報を持ってると知られるだけで、命を狙われる可能性があるだろ。

 レヴィンなら上手く立ち回るだろうけど。アレックスたちを巻き込むかもかも知れないよな」


「何を言ってるんだい。あいつらがどうなろうとあたしの知ったことじゃないよ」


 レヴィンが素直に認めるとは思ってなかったよ。こいつは大胆に見えて用心深い。

 こうして話をしてても自分の情報はほとんど明かしていないからな。


「まあ、レヴィンの目的はどうでも良いんだよ。俺が知りたいのはこの世界のことについてだ。力だけで足りないなら、あんたが欲しいものを教えてくれよ。俺は仲間たちを守るためなら手段を選ぶつもりはないからな」



「ふーん……アレクはあたしと違って仲間思いなんだね。

 だけど本当に知らないんだから教えられないよ。仮にあたしが何か知ってるとしてもさ…………アレク、あんたがあたしの共犯者になれる器かどうか。まだ解らないからね」


 レヴィンは立ち上がって、俺にしな垂れ掛かる。左の手で俺の頬を撫でながら、右手の指先が胸をなぞる。


「もっとあんたのことを知らないと……本音の話はできないよ」


 妖艶な笑みを浮かべながら、耳元で囁く。レヴィンは舌なめずりするように唇を舐めると、俺をソファーに押し倒した。


「なあ、レヴィン。こんなことをしなくても俺のことなら何でも教えてやるよ」


 どこまで教えるかはレヴィン次第だけどな。


「何言ってるんだい……こうする(・・・・)以外に、男と女がお互いの全てを知る方法なんてないじゃないか……」


 レヴィンは肉食獣のように迫る。

 だけどレヴィンの唇が俺の首筋に触れる前に、動きがピタリと止まった。


「覗き見している奴ら(・・)がいるね。あたしをデバガメするなんて、良い度胸してるじゃないか。隠れてないで姿を現しなよ」


 俺は内心で驚いていた。エリザベスとサターニャがいることを俺は当然知ってたけど。レヴィンのレベルで『認識阻害(アンチパーセプション)』を発動した2人に気づく筈がないんだよ。

 だけどレヴィンは殺意を放つ2人がいる場所を見てる。


「悪いな、レヴィン。部下が勝手にやったことだけど俺の責任だ。今日は出直すことにするよ」


 シラを切ることもできるけど。レヴィンなら気づきそうだからな。


「アレク、部下の(しつけ)はキッチリしなよ。今度は邪魔が入らないところでゆっくり楽しもうじゃないか」


 見えない筈のエリザベスとサターニャをレヴィンが挑発する。

 だけど止めてくれよ。さっきから物凄い数の殺害許可を求める『伝言(メッセージ)』が届いてるからさ。



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