71話:密会 ※『深淵の支配者』視点※
※『深淵の支配者』視点※
魔王アレクに転生した奴の対策を練るために、俺は昔の仲間に相談に行くつもりだったが……『伝言』を送っても『忙しいから』と断られた。
おい、何を考えてるんだ。おまえら危機感が無さ過ぎるぞ。
だが強引に押し掛けても無駄だからな。『だったら、いつなら良いんだ』と『伝言』を送って全員を招集することにした。
我がままな奴ばかりだからな。個別に会って説得するのも面倒だし、意見の擦り合わせもしたいからな。
結局、全員のスケジュールを合わせたら収集するまでに1ヶ月以上も掛かった。
だがこれでようやく話が進展する。相手が魔王アレクじゃけなれば、こんな面倒臭い奴らに相談などしたくないがな。
「ねえ……アレックス。あの子に倣って貴方のことは『深淵の支配者』と呼んだ方が良いのかしら?」
ほら、いきなり下らないことを言い出した。
銀髪で黒い肌のエルフは、ケイリヒト・ブリュンヒルデだ。
エルフのくせに胸がデカくて、誰もが振り向くような美女だ。だけど良いのは見た目だけで、性格は最悪だけどな。
「おい、ケイリヒト。ふざけるのは止めてくれ。俺は真面目な話をするためにみんなを集めたんだ」
「真面目な話ねえ……魔王アレクに転生した奴がいるなんて笑えない冗談だけど。勿論、きちんと裏は取ってるんだろうね?」
猫耳だけど、こいつは猫じゃなくて雪豹の獣人レヴィン・ペトリューシカだ。縦長の瞳孔の目を煌めかせて、俺を挑発するように笑う。
「ああ。俺の目で確かめているし。奴はキスダルを一撃で黙らせたからな」
「倒したんじゃなくて黙らせた? つまり手を出さなかったってことだよな。だったら強さなんか解る筈がねえだろう。間抜けなキスダルが騙されただけじゃねえのか?」
髪の毛も髭も赤いドワーフのくせに身長が180cm近くあるこいつは、トライアンフ・グレイテストアックス。背が高いだけじゃなくて横幅も広いだけどな。
「だが直径1kmのクレーターを作ったんだぞ。そんな『流星雨』を放てる奴は1,000レベルをとうに超えてる筈だろう」
「ねえ……アレックス。昔から馬鹿だと思っていたけど、相変わらずね。貴方は魔王アレクが『流星雨』を放つところを見た訳じゃないんでしょう? 巨大なクレーターを作るだけなら、土属性の魔法を使えばそんなに難しいことじゃないわ」
ケイリヒトが言うには『地震』で地盤沈下を起こせば同じことができる。
だが直径1kmのクレーターを作るのに何発『地震』を放てば良いんだよ。
「アレックス。貴方は本当に馬鹿ね。『流星雨』が落ちた衝撃で揺れるから、その余波と思わせて『地震』を連発すれば一般人なんて騙せるでしょう。1,000レベル超の相手がいる可能性よりも、そう考えた方がずっと現実的だわ」
「だが『始祖竜の遺跡』の侵入者のことはどう説明する? 魔王アレクを倒さないと、転生者以外は『始祖竜の遺跡』に入ることができないだろう。
他に派手なことをしていてる転生者はいないんだ。魔王アレクに転生した奴が『始祖竜の遺跡』に挑んで、レベルアップしたと考えるべきだろう」
「確かに魔王アレクに転生した奴が『始祖竜の遺跡』に侵入したかも知れないけどさ……レベルアップしたかどうかは解らないじゃないか。
私たちだって最初は6人掛かりで何とか生き残れるってレベルだったんだ。侵入したけれど殺されそうになって直ぐに逃げ帰ったんじゃないのかい。
『始祖竜の遺跡』のモンスターを倒せるレベルの奴らなら、とうに噂が広まっている筈だろう」
ソロで『始祖竜の遺跡』に挑むなんて、いくら魔王アレクでもあり得ないからな。魔王アレクの能力は色々チートだが、それでもソロで潜るなんて完全に頭がイカれているし。そんな奴が『始祖竜の遺跡』で生き残れる筈がない。
だから魔王アレクに転生した奴が『始祖竜の遺跡』で1,000レベル超までレベルアップしたなら、一緒にパーティーを組んだ奴らも1,000レベル超になっている筈だ。
だが他に派手なことをやってる奴はいないんだ。1,000レベル超なら世界征服だってできるのに、そんな奴らが大人しくしてる筈がないだろう。
レヴィンはそう言いたいようだが、メインキャラたちが魔王アレクと一緒に『始祖竜の遺跡』に潜った可能性はある。
メインキャラたちはそこまで派手な行動はしていないが、魔王アレクを隠れ蓑にして何かを企んでいることだって考えられるだろう。
「メインキャラたちまで1,000レベル超だと? アレックス、てめえはパラノイアか」
トライアンフが心底馬鹿にしたような顔で笑う。
「おい、トライアンフ……ふざけるなよ。俺は可能性の話をしているんだ」
だからこいつらとは会うのは厭だったんだ。いつも喧嘩になるからな。
「馬鹿同士が何を熱くなってるのよ。これ以上下らないことに付き合うつもりはないから、私は帰るわよ」
「あたしは面白そうだから、もう少し見物していこうかね。アレックス、トライアンフ……男なら殺し合いで決着をつけたらどうだい」
「レヴィンも焚きつけるようなことを……みんな本当に馬鹿なんじゃないの」
「ケイリヒト……てめえから先に仕留めてやろうか!」
「あら、トライアンフ……脳筋の貴方が私に勝てるとか、己惚れているのかしら」
ケイリヒトとトライアンフが本気の殺意をぶつけ合う。
周りがヒートアップすると俺は冷静になるタイプだ。
こんなことで殺し合うとか……さすがに馬鹿らしいからな。
「なあ。ケイリヒトもトライアンフも、その辺で止めにしないか。全部俺のせいで構わないから……頼むから矛を収めてくれよ。俺はこれ以上仲間を失いたくないんだ」
「おい、アレックス……チッ、解ったよ。てめえはいつも……」
「そうね……そこまで言われたら、私も引き下がるしかないわね」
2人は拍子抜けしたようだ。レヴィンは余計なことをするなって顔をしてるがな。
昔からこんな感じでいつも俺が貧乏くじを引くことになるけど、仲間を失いたくないって気持ちは本当だ。
こんな奴らでもたった4人しかいない仲間だし……もう誰も死なせないって、あいつに約束したからな。
「まあ、メインキャラたちが1,000レベル超えなんて唯の妄想だって……俺が証明してやるよ」
「トライアンフ……どういうことだ?」
トライアンフがニヤリと笑う。
「アレックス、てめえはメインキャラたちの消息を掴めてねえようだな。奴らは今俺の国にいるぜ」
クラーナの街でキスダルと衝突した後。魔王アレクとメインキャラたちは忽然と姿を消していたんだが……なるほど、そういうことか。
トライアンフが治めるドワーフの国ギガンテには、こいつが邪魔するから俺の協力者はいないからな。消息を掴めなくても仕方ない。
「魔王アレクもメインキャラたちと一緒にいるぜ。奴らの化けの皮を俺が剥がしてやるよ」
「トライアンフ……何をするつもりだ?」
「まあ、黙って見ていろよ。てめえが心配なんかしなくても、俺がケリをつけてやるぜ……『転移魔法』!」
「何だい、詰まらない結末だね。あたしも帰るよ。『転移魔法』!」
2人が姿を消すと。
「アレックス、貴方は馬鹿なんだから。余計なことを考えないで、トライアンフに任せなさいよ。あいつは脳筋だけど、やるときはやる奴だから。ねえ、そんなことよりも……」
ケイリヒトがいきなり俺の唇を塞ぐ。デカい胸を押しつけて俺を押し倒した。
「久しぶりに会ったんだから……アレックス。楽しみましょう……」
俺は昔からケイリヒトが苦手だ。絶対に勝てないからな。
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