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60話:エリスの想い


 俺はちょっと冷静になって……エルリックの部屋にいた全員を洗脳しようかと少しだけ本気で考えた。

 いや、真面目にやろうと思えばできるんだけど。そういうのは人として間違ってるからな。


 とりあえず結論から先に言うと、エルリックは俺の要求を全部飲んだ。

 魔族軍との戦いが終わるまで俺たちは自由に戦って構わないし、エリスとの結婚の話もなかったことにすると。

 エリスは何故か不満そうな顔をしてたけど、エルリックに好き勝手なことをされて頭に来たんだろうな。


 それでも全部丸く収まった訳じゃない。

 『時間停止(タイムストップ)』を解除したら、近衛騎士たちがいきなり切り掛かって来た。

 まあ、今度は物理的に黙らせたけど……いや、殺して()ないから。


 自慢の近衛騎士たちを瞬殺(?)したからか、エルリックは怯える子供のような目で俺を見ていた。

 近衛騎士には完全に恨みを買ったし、エルリックも恐怖を忘れた頃に何を仕掛けて来るかは解らない。

 だけど、とりあえず今回のイベントが終わるまではこれで大丈夫だろう。

 念のために諜報部隊に監視させるけどな。


「「「…………」」」


 室内練習場に戻ると、いきなりみんなにジト目をされた。

 エリスの顔がまだ赤くて、態度がおかしいのは解るけど。何で俺にジト目を向けるんだよ?

 それにしてもエリスも俺に抱きつくとか、そこまで感謝することもないだろ。

 俺だってエルリックには頭に来たんだからさ。


 エルリックの部屋でやったことを全部正直に話すと、2度目のジト目をされた。


「アレク、あんたね……完全に王太子に喧嘩を売ってるじゃない。まあ、あんたが怒った理由は解るけど……」


 レイナが視線を向けると、エリスが再び真っ赤になる。


「アレクはエリスのために怒ったんだ……ねえ、アレク。私が同じようなことをされたら、アレクは怒ってくれる?」


「何言ってるんだよ、ソフィア。当たり前だろ」


「本当! アレク……私、凄く嬉しいよ!」


 ソフィアは急に機嫌が良くなったけど、セリカは何故か溜息をつく。


「アレク……貴方はやっぱりそういう(・・・・)人よね。純情乙女なエリスに勘違いさせて、申し訳ないとは思わないの?」


「セ、セリカ、何を言い出すのよ! お願いだから止めて……」


 エリスがこんなに取り乱すのは珍しいな。

 だけど純情乙女って……エリスは何を勘違いしたんだ?

 勘違いしてるのはセリカの方じゃないのか。


「全部アレクのせいニャ……だから責任を取るべきだニャ」


 ライラがニヤニヤ笑っている。

 ああ。エルリックに喧嘩を売ったのは俺だからな。俺が責任を以て対処するよ。

 王太子のエルリックに喧嘩を売ったことで、聖王国そのものを敵に回す可能性があることも覚悟の上だ。


「はあー……今さらすっけど、アレクは本当に気づいてないみたいっすね。ソフィアの気持ちは、いつか報われる日が来るんすかね?」


「そんなこと、私に解る訳がないでしょ。でも相手がアレクだから仕方ないんじゃない」


 良く聞こえないけど、シーラとメアが何か話している。


「なあ、アレク。俺はおまえが良い奴なのは解ってるし、王太子に喧嘩を売るのも構わねえけどよ……さすがに、いい加減にした方が良いと思うぜ」


 そうだよな、グラン。さすがにやり過ぎたよな。


「アレク、その何だ……」


 振り向くと、ガルドが同情するような顔をしていた。


「こういうことは、俺には良く解らねえが……まあ、頑張れよ」


 ああ。相手は王族だからな。どんな陰湿な手を使って来るか解らないよな。

 その辺は俺も詳しくないから、頑張って対処するしかないな。


「みんなが言いたいことは解ってるよ(・・・・・)。エルリックのことは全部俺が何とかするからさ。

 魔族軍との戦いには継続して参加することになったから、まずはこっちを片付けよう。

 今回はみんなと一緒に出撃するから、やり方を変えようと思ってるんだ……」


 いや、俺だって本当に悪いと思ってるからさ……

 残念な奴を見るような目で見ないでくれよ。


※ ※ ※ ※


 3日後。本隊と合流して11万になった魔族軍が予定通りに攻めて来た。

 地平線を埋め尽くすほどの物凄い数の敵だけど、対する聖王国軍も15万だ。

 数では勝ってるし、カスバル要塞で迎え撃つ訳だから、互角以上の戦いができるだろう。


 俺たちは聖王国軍とは別行動で、11万の大軍の只中に突入することになる。

 目的は聖王国軍を勝利させることじゃなくて、魔族と人間の両方の被害を最小限にして、魔族軍を撤退させることだからな。


 モンスターを削り捲って、魔族たちの戦意を喪失させるか。本陣に乗り込んで、総司令官を仕留めるか。その辺りが勝利条件だろうな。


「王太子殿下。私は聖王国のためではなく、仲間たちのために戦います」


 俺たちが出撃する前に、エリスはエルリックに宣言した。

 魔族軍との決戦に水を差すような発言だけど、エリスは王家と決別する覚悟を決めたんだ。

 戦いを前にハッキリさせておきたいエリスの気持ちは解るから、俺たちは止めなかった。


 兵士たちが注目する中、エルリックが怒りに顔を歪める。


「何故、今そのようなことを……エリス、おまえは自分の立場が解っていないようだな。戦の前にそのような発言をするなど、聖王国の王族として失格だな」


「はい、勿論承知の上です。今から私はエリス・クロームではなく、唯のエリスとして生きます」


「エリス……その言葉、忘れるなよ」


「はい。絶対に忘れません」


 これでエルリックも認めたことになる。兵士たちの前で宣言したから、撤回することはできないだろう。

 だけど決戦が始まる直前じゃなく、もっと早く宣言することもできた。

 わざわざこのタイミングを選んだのは……たぶん俺のためだな。


 エルリックに喧嘩を売ったのは俺だけど、エリスは自分が原因だと責任を感じている。

 だからエルリックにとって最悪のタイミングで宣言することで、奴の怒りの矛先を自分に向けようとしたんだ。


「エリス、おまえ……俺に気を遣っただろ」


「何のことかしら? アレクこそ私を庇ってくれたじゃない。私は嬉しかったんだから……」


 ちょっと照れたように微笑むエリスに、俺は思わず見惚れてしまった。

 いや、勘違いしてる訳じゃないから。エリスもこんな風に笑うんだなって……


「え……ちょっと、アレク……」


「アレク……あんたは何やってんのよ。今から戦いに行くんだから、真面目にやりなさいよね」


 レイナに睨まれて、気を引き締める。

 そうだな。俺が下手を打てば、犠牲が増えることになる。


「じゃあ、みんな。そろそろ行くか」


 カスバル要塞の外壁の上から魔族軍が押し寄せる地上へと、俺たちは飛び降りた。


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