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40話:エルフの国


 エルフの大森林に到着すると、俺とエリザベスは『不可視(インビジブル)』と『認識阻害(アンチパーセプション)』を解除する。

 モンスターを少し狩ろうと思ったことと、突然エルフの隠れ家に現れるよりも俺たちの存在を事前に察知させた方が、相手も準備ができると思ったからだ。


「とりあえず、あまり派手にやるなよ」


「アレク様、解っていますよ。でも嬉しいな。アレク様の隣で戦えるなんて」


 ちなみに今の(アレク)は人間の姿をしている。

 魔族軍が侵攻している状況で、いきなり魔王の姿を見せるとエルフたちと話をする余地もないと思ったからだ。


 森の中にはトレントなどの植物系や、動物型のモンスターが出現した。

 森を破壊するとエルフたちには敵対行為に映るから、派手な魔法は使わずに武器だけで戦う。

 冒険者の設定のときと同じで、俺の武器は適当だけど『始祖竜の遺跡』でドロップしたアイテムを使っているから、それだけでオーバーキルだ。


 不死の女王(ノーライフクイーン)であるエリザベスは、自分の血液を剣に変えて戦う。

 2,000レベル超のエリザベスの魔力が宿る『血の剣(ブラッドソード)』は、『始祖竜の遺跡』のマジックアイテムよりもさらに強力だ。


 モンスターを狩りながら森を進んでいると、エルフたちの視線を感じた。

 向こうは隠れているつもりだろうけど、俺とエリザベスには通用しない。

 適当にモンスターを狩っているフリをしながら、イルマーハ辺境伯の娘が隠れている場所へと向かった。


 暫く進んでいると、いきなり多数の矢が飛んできた。

 いや気づいていたから、いきなりじゃないけど。

 全部足元に刺さったから、威嚇攻撃なのは解っている。


「これ以上進むならば、貴様たちを排除する」


「おい、エリザベス……すまない、こっちの話だ」


 エリザベスの殺気が駄々洩れなので、釘を刺しておく。

 こんな矢なんか当たっても俺達にはノーダメージだろ。


「だけど、アレク様……」


「エリザベス、我がままを言うなら強制送還だからな」


 俺はエリザベスを黙らせて、エルフたちを観察する。


 俺たちの前に現れたエルフは12人。レベルは10から22とそれなりだ。

 だけどジェリル・スレイアが討伐部隊を出せば、簡単に壊滅するレベルだな。


「俺たちを排除する? 好きにすれば良いけどさ、俺たちは敵じゃないからな。イルマ―ハ辺境伯の娘に会いに来たんだ。俺たちを傭兵に雇わないかって売り込むためにね」


「クエス様だと……クエス様がこのような森にいる筈がなかろう」


 隊長らしいオレンジ色のショートカットのエルフが応える。

 いや、名前を言ってる時点でバレバレだろう。


「悪いけどさ、隠しても無駄だから。シャトラから避難したエルフたちが、この森に逃げ込んだのは解ってるし。俺たちが魔法を使えば居場所を探すのは簡単なんだよ」


 俺の言葉にエルフたちの態度が固くなった。

 一斉に弓を構えて、魔法の詠唱を始める。

 今度は威嚇射撃という訳じゃないみたいだけど……


「おい、エリザベス。反撃するなよ」


「……アレク様、解ってますよ」


 何だよ、今の間は。俺が注意しなければ反撃してたってことか。

 魔法と矢の集中砲火を浴びたけど、勿論俺とエリザベスは無傷だ。


「ば、馬鹿な……」


「攻撃しても無駄だからさ。おまえたちから攻撃してきたんだから反撃しても良いけど、さっきから言ってるけど俺たちに敵意は無いんだよ。

話をする気がないなら俺たちは帰るけど。魔族軍が侵攻して来たら、このままじゃ全滅するって解ってるだろ」


「貴様たちを……信用しろと?」


「何なら俺たちを拘束して連れていくか? 話をする気があるなら、それでも構わないけど」


「アレク様……」


 エリザベスが文句を言おうとしたので視線で黙らせる。


「本当だな……解った。この者たちを拘束しろ」


 エルフたちは俺とエリザベスをロープで縛る。

 エリザベスがキレて反撃しないかと冷や冷やしたけど。

まあ、そのときはそのときだな。


 ご丁寧に目隠しまでされて、エルフたちに連れられて1時間ほど歩いた。

 (アレク)探知(サーチ)千里眼(クレアボヤンス)を常時発動しているから、目隠しも無意味だけどな。


 森の奥にあるエルフの村は、植物操作の魔法で木を変形させて家にしていた。

 生きている木に魔力を与えることで徐々に家の形を作るから、都市でエルフも普通の家に住んでいる。

 周囲に結界を張ってあるから、村を見つけるのは難しいだろう……普通のレベルの奴ならな。


 村に着いた後も、目隠しとロープを付けたまま30分ほど待たされた。

 そして俺たちを連れて来たオレンジの髪のエルフたちと一緒にやって来たのは、他の奴らよりも豪華な服を着ているエルフの少女だった。

 プラチナブロンドの髪にエメラルドの瞳。こいつがイルマーハの娘ってことか。


「私がイルマーハ辺境伯の娘、クエス・イルマーハです。貴方たちが傭兵として雇われたいという方ですか?」


 目隠しだけを外されて、俺たちは少し距離を置いてクエスと対峙する。

 クエスの左右には妖精銀(ミスリル)の鎧を纏うエルフの騎士が控えていた。


「ああ。だけどその前に確認したいんだけど。俺たちがシャトラ奪還の件で交渉するべき相手は、あんたで間違いないか?」


「貴様……クエス様に何て口の利き方を! 無礼だろう!」


 あ、不味い……と思ったときには遅かった。

 エリザベスは一瞬でロープを引き千切ると、俺に文句を言った騎士の喉元に『血の剣(ブラッドソード)』を突き付けていた。


「君たちの方こそ無礼だよ。たかがエルフのくせに、この方が誰だか解ってるの?」


「エリザベス、止めろ。『集団麻痺(マスホールド)』」


 とりあえず戦闘が始まらないように、俺はエルフたち全員を麻痺させる。

 それから援軍が来ると面倒だから『魔法防壁(マジックシールド)』で入口も塞いで、クエスの麻痺だけ『解除(ディスペル)』した。


 青い顔のクエスに、俺は苦笑する。


「ちょっと想定外の展開だけど、まずは自己紹介だ。俺はアレク・クロネンワース。元魔王で、今は冒険者をしている。そこにいる彼女は俺の部下のエリザベスだ」


「元魔王って……行方不明だと言われている、あのアレク・クロネンワース陛下なのですか?」


 何だ。クエスは意外と肝が座っているし、良く解ってるじゃないか。


「ああ。魔王を辞めたから陛下じゃないけどな」


 俺は2本角と黒い翼の本来のアレクの姿に戻る。

 クエスは目を見開いて驚くが、落ち着きは失わなかった。


「では……私がシャトラ奪還の交渉相手に相応しいかということですが、答えはYESです。

 お父様もお兄様たちも戦死しましたので、今のイルマーハ辺境伯領の実権は私にあります。

 アレク様、こちらからも質問してよろしいでしょうか?」


 俺が頷くと、クエスは続ける。


「ありがとうございます。アレク様が冒険者をされているのは本当なのですか? それに私たちに雇われたいというのは、シャトラ奪還に手を貸して頂けるということですか?」


「クエス嬢は話が早くて助かるよ。俺は魔王をやるのに飽きたから冒険者になった。勿論、身分は隠してだけどな。

 シャトラ奪還に協力するのは、シャンパルーナに侵攻した魔族軍が気に入らないからだ」


「つまり……アレク様の意向に反して魔族軍がシャンパルーナに侵攻したため、力を貸して頂けるということですか?」


「まあ、そんなところだな。俺は魔族と他種族が戦争をするのは反対なんだよ。

 こんなことを言ってもクエス嬢が何処まで信用するか解らないけど、俺の力はクエス嬢も知っているだろう?」


 先代魔王は完全実力主義で、100人以上いた王位継承権を持つ者たちに殺し合いをさせて、最後に生き残ったアレクが魔王を継承した。

 その後も反魔王派を実力で排除して来たのは有名な話で、魔王アレクの実力は広く知れ渡っている……全部、前世の記憶に目覚める前のアレクがやったことだけどな。


「クエス嬢が俺の力を借りるのが嫌なら仕方ない。俺はもう魔王じゃないから、魔族軍を放置して帰るよ」


「お待ちください、アレク様……解りました。どうか、アレク様の力でシャトラを奪還して下さい」


 クエスが深々と頭を下げる姿に、エリザベスが満足げに笑みを浮かべる。

 エリザベス、おまえさあ……これじゃクエスを脅したのも同じだろ。

 もう少し穏便に話を進めたかったんだけどな……まあ、結果的には狙い通りだけど。


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