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24話:誘惑


 その日の夜も、俺は転移魔法(テレポート)で抜け出した。

 今夜の目的は、例の約束を守ってソフィアに会いに行くことだ。


 クルセアの街の外に転移すると、姿を消してソフィアが泊っている宿屋の部屋に向かう。

 人目を避けるのは、ウルキア公国に向かった筈の俺がこんなところにいると不審に思われるからだ。


「ソフィア、俺だ」


 ノックすると、直ぐにドアが開いた。


「ア、アレク……久しぶり。えっと……10日ぶりだよね」


 すでに真夜中だというのに、ソフィアは部屋着じゃなかった。

 肩が露出したレモンイエローのワンピース。小麦色の肌のソフィアに良く似合っている……おい、屈むなよ。胸元が見えて目のやり場に困るだろ。


伝言(メッセージ)で毎日やり取りしてるけどな」


 だけど俺はいつものように鈍感なフリをして、完全にスルーする。


「それとこれとは話が違うよ。わ、私はアレクに……」


「それで伝言で聞いたけど、そろそろ『グラスコーの迷宮』が完全攻略できそうなんだろ? おまえたち5人だけで頑張ったじゃないか」


「そうなの! 私たちも頑張ったよね!」


 あからさまに話を逸らしたけど、褒めたせいかソフィアは嬉しそうだ。


 『グラスコーの迷宮』は俺がソフィアたちチョップスティックのメンバーと攻略を進めていたダンジョンだ。

 クルセアのイベントが始まったから途中で止めたけど、その時点で全30階層のうち25階層まで攻略が終わっていた。


 ソフィアたちと別れてから3週間以上経つから時間的には十分だけど、俺が抜けてチョップスティックは5人に戻ったから攻略速度は落ちた筈だ。

 それに攻略を急ぐよりも楽しく冒険することがソフィアたちのモットーだから、このタイミングで30階層に到達したのは十分頑張ったと思う。


「アレクがいない分は、みんなで考えてカバーしたんだよ。私も少しはタンク役ができるようになったし、グランもパワーアップしたし。カイだってSTRを伸ばして革鎧だけは着られるようになったんだよ」


 アタッカーとタンクの両方ができる俺が抜けたからな。

 残りのメンバーだけでさらに下の階層を攻略するには、やり方を工夫する必要があったんだろう。

 新しいメンバーを入れるにも、ソフィアたちに匹敵するフリーなB級冒険者が簡単に見つかる訳じゃないしな。


「へえー……ホント、ソフィアたちは頑張ったんだな」


「うん。だって、私も次のイベントに参加したいから」


 クルセアのイベントに参加して、ガーランドがサリア村を襲撃する現場に居合わせて、グランたちも何か思うところがあったらしい。

 正義感に目覚めたとか、そう言うことじゃないけど。魔族が再び襲ってきたら、もっと強くなっておかないと敵わない。だから自分たちも強くなろうと。


 次のイベントが起こるウルキア公国へ向かう件は、俺から伝言(メッセージ)で『バレアレスの大迷宮』に誘われたとグランたちには伝えた。

 伝言の指輪のことと、俺たちが『風の馬(ウインドホース)』を使って短期間で移動したことも彼らには伝えてある。

 218レベル設定のアレクなら、それくらいのマジックアイテムを持っていても、風の馬をテイムできても不思議じゃないからな。


 ということでチョップスティックも『グラスコーの迷宮』を攻略したら、ウルキア公国へ向かうことになっている。

 今から普通に向かうとイベントの途中からの参加になるけど、メインのイベントには十分間に合うからな。


「でも、ウルキア公国までは1ヶ月以上掛かるんだよね。できれば、もっと早くアレクたちと合流したいな」


「『従属の手綱(レインオプスレイプ)』を使えばソフィアたちの分の風の馬も用意できるけど。さすがに不自然だろ」


 『従属の手綱』は10レベル以下の動物型モンスターを使役できるマジックアイテムだ。

 これならテイムのスキルがなくても、風の馬を使うことができる。

 だけどまず風の馬を捕まえる必要があるし、『従属の手綱』は人気アイテムだから余り市場に出回らない。冒険者じゃない貴族とかでもモンスターを使役できるアイテムだからな。


「そうだよね。仕方ないか」


「まあ、前半のイベントは時間ばかり掛かって、チョップスティック向きじゃないからな。おまえたちがウルキア王国に来ても、暫くは『バレアレスの大迷宮』に潜って、最後のイベントだけ参加するってもアリだろ」


「えー! ダンジョンは後からでも行けるから、私はアレクと一緒にイベントに参加したいよ」


「いや、ソフィアの好きにして構わないけどさ。まあ、その辺は流れ次第だな」


 その後はお互いのパーティーメンバーの近況報告とか、ソフィアが最近見つけた美味しいお菓子の店とか、雑談のような話になった。

 エリスたちの話をするとソフィアの機嫌が悪くなったけど、だったら訊かなければ良いじゃないかと思う。メインキャラのパーティーで男は俺とガルドだけだし。


「じゃあ、そろそろ俺は帰るよ。ソフィアだって明日もダンジョンに行くんだろ?」


「うん、そうだけど……」


「早く攻略した方が早く出発できるんだし」


「そうだね……解ったよ」


 名残惜しそうなソフィアと別れて俺が次に向かったのは、ウルキア公国の西の都市カタルナだ。


※ ※ ※ ※


 アルニカはウルキア公国のイベントの後半で中心になる場所であり、リアルエボファンの世界では背景となる事件がすでに進行している。


『アレクだ。今、到着した』


 アルニカ郊外の待ち合わせ場所に着いたことを『伝言(メッセージ)』で伝える。

 ゲームと同じタイミングでイベントが起きるとは限らないし、他の転生者が干渉している可能性もあるから、俺は諜報部隊を使って調査を進めていた。


「クンクン……あれ、おかしいな。アレク様から女の匂いがしますよ」


 変化の指輪で人間の姿に化けた諜報員と待ち合わせた筈だが、現れたのは豪奢な金髪(プラチナブロンド)の美女、エリザベス・ドラキュリーナだった。

 ノーライフクイーンである彼女は『始祖竜の遺跡』全階層副統括の1人であり、諜報部隊の責任者も兼任しているけど。


「おい……何でエリザベスが来るんだよ。俺がウルキアの調査を命じたのは諜報部隊であって、エリザベス個人じゃない。それにおまえには副統括としての仕事もあるだろ」


「嫌だなあ、仕事なら全部完璧にこなしてますよ。でも僕にとっては、仕事よりもアレク様の方がずっと大切なんです。だから……ちょっとだけ、アレク様の顔が見たかったんですよ」


 エリザベスは当然のように俺に抱きついて、豊満な胸を押し付る。

 こいつはソフィアと違って、羞恥心という言葉を知らないからな。


「おまえなあ……」


「僕はアレク様のために沢山情報を集めたんだすから……少しはご褒美を下さいよ」


 エリザベスの形の良い唇が、吐息が掛かる距離まで接近する。

 腕に当たる柔らかい感触と、甘い匂い……いや、さすがに俺も男だからな。


「いや、褒めるのはまだ早いな。それに俺が褒めるべきなのは、実際に諜報活動をしているメンバーの方じゃないのか?」


 それでも努めて冷静に振舞う。

 責任者であるエリザベスが有能だから諜報部隊が完璧に機能していることは俺も解っているが。そんなことを言えばエリザベスが、もっとガンガン迫って来るからな。


「もう……アレク様は意地悪ですよ」


 エリザベスは上目遣いで、俺を揶揄(からか)うように笑みを浮かべる。


「ああ、そうかもな。さあ、前回の報告以降に解ったことを教えてくれよ」


 俺は内心を隠して、無関心な態度を貫いた。


「解りました。まずはですね……」


 エリザベスはしれっと俺に抱きついたまま報告を続ける……いや、俺も離れろとは言わなかったけどさ。


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