101話:それぞれの想い ※アレックス視点※ ※ケイリヒト視点※
※アレックス視点※
14年前。前世の記憶に目覚めた俺たち6人は、出会うべくして出会った。
前世でコアなゲーマーだった俺たちが近くに居合わせたことに、レヴィンは転生させた奴の悪意を感じるって言っていたけど。
あの頃の俺はゲームの世界に転生したことが嬉しくて、みんなと一緒に冒険できればそれで良かった……転生直後の中二病だった黒歴史は忘れたいがな。
俺たちはみんなコアなゲーマーだったが、エボファンを一番やり込んでいたのはケイリヒトだった。
ケイリヒトだけはエボファンに関する知識のレベルが違ったし、エボファンにおける戦い方を知り尽くしていた。
それでも全員がエボファンをそれなりにやり込んでいたし、俺とトライアンフはゲームのときに『始祖竜の遺跡』に挑んでいた。
それにゲーム自体はみんなやり込んでいたからな。ケイリヒトに教えて貰うことでプレイヤースキルは直ぐに上がった。
他の転生者たちにはリアルな世界で危険を冒してまでレベルを上げるのは異常だって言われた。
だが何て言われようと俺たちには関係なかった。『始祖竜の遺跡』を完全攻略するという目的があったからな。
将来エボファンの物語が始まったときに有利な立場に立ちたいとか、そんなこととを考えていた訳じゃない。
俺たちはリアルなエボファンの世界でダンジョンを攻略して、強くなっていくことが楽しかったんだ。
だけど『始祖竜の遺跡』を攻略する途中でエイジとマリアが死んだ……いや、俺が2人を死なせてしまったんだ。
リーダーの俺がもっとしっかりしていれば……
もっと早くモンスターの奇襲に気づいてれば……
2人を死なせてしまってから、俺はずっと後悔し続けている。
「ねえ、アレックス。たぶん1番強いのはケイリヒトで、2番目がトライアンフだけど。みんなのことを守るのは私とあなたの役目よ。
だって2人は戦いに夢中になっちゃうから。だから、もしもの話だけど……もし私が死んだらアレックスがみんなのことを守ってね」
あいつは……マリアは『始祖竜の遺跡』の10階層に挑む前にこんなことを言った。
自分の死を予感してたのか、それは解らないけど。
マリアはみんなのことが好きで、絶対に死なせたくないといつも言っていた。
いつもみんなのことを考えていたマリアのことが……たぶん俺は好きだったと思う。
「僕は……ケイリヒトみたいになりたいんだよ。ケイリヒトは魔道剣士なのに、スペルキャスターの僕より魔法の使い方が上手いからね。
いつか僕の方が上手くなって、ケイリヒトに認めて貰うんだ」
エイジはいつもこんなことを言っていた。あいつはケイリヒトに憧れていたんだ。
前世で死んだのが14歳と1番年下で、素直な奴だったから。みんなは弟のように思っていた。
俺とマリアはエイジと1つ違いだから、俺たち3人はいつも一緒だった。
だけどモンスターの奇襲を受けたとき、エイジはまだ生きていたのに……俺はあいつを救うことができなかった。
ケイリヒトが『転移魔法』を発動したことを責めるつもりはない。あいつがどんな気持ちで魔法を発動したか、解っているからな。
だけど……俺も残ってエイジを救いに行きたかったんだよ。
俺はエイジを死なせてしまったから、マリアとした約束を破ってしまった。
だけど、だからこそ……もう誰も死なせたくない。今度こそ、俺がマリアの代わりにあいつらを守ってみせる。
ケイリヒトもレヴィンも、それにトライアンフだって口にはしないけど。エイジとマリアを死なせてしまったことの責任と後悔を今も抱き続けている。
だけどケイリヒト、レヴィン、トライアンフ……おまえたちは絶対に認めないだろうが。エイジとマリアを死なせてしまった罪の十字架を背負っていくのは、リーダーだった俺の役目なんだよ。
俺には……そんなことしかできないからな。
※ ※ ※ ※
※ケイリヒト視点※
アレックスから珍しく『伝言』が来た。
私たち4人で話したいことがあるから、アレックスの城に来てくれと。
だけど私は忙しいのよ。理由は解らないけど『闇の魔神の大迷宮』のモンスターが急にレベルアップして、経験値の稼ぎ時だから。
ダンジョンが変化するなんてゲームのときもなかった。何が起きているのか調査する必要があるけど。
このままレベルアップしたままだって保証はないから、私は経験値を稼ぐことを優先した。
私の狙いはラスボスだけ。レベルアップしたところで私の敵じゃないわよ。
元魔王アレク・クロネンワース。あいつのことを私は信用した訳じゃない。
あいつが強いことは認めるけど、何を企んでるのか解らないわ。
私がもっと強くなって。アレクが何か仕掛けて来ても、アレックスたちを守れるようにならないと……
「ケイリヒト。随分と忙しそうだな」
だけど『闇の魔神の大迷宮』に、何故か突然アレクがやって来た。
「アレク、どういうつもり……私の邪魔をしに来たってこと?」
「いや、俺はそこまで暇じゃないから。アレックスから『伝言』が来ただろ。その件で話があるんだよ」
「ふーん……つまり、全部貴方の差し金って訳ね。アレックスを騙したら私が許さないわよ」
私が睨みつけてもアレクは素知らぬ顔をする。
「俺にはアレックスを騙す気はないし、ケイリヒトを怒らせるつもりもないけどさ。エイジとマリアのことで、おまえたち4人に話し合って貰いたいんだよ」
「どうして貴方が2人のことを……アレックスかトライアンフの奴が喋ったのね!」
あいつらは何を考えてるのよ。こんな奴に2人のことを喋るなんて!
「ああ。最初に聞いたのはアレックスからだけど。トライアンフからも話を聞いたよ。だけど今回のことは俺が勝手にやってるから。あいつらに文句を言うなよ」
「アレク……貴方は何を企んでいるのよ」
私は本気の殺意を向ける。私たち6人のことに土足で踏み込むなら、絶対に許さないわよ。
私はあのコに……エイジに約束したんだから。
『ケ、ケイリヒトは……僕じゃなくて、みんなのことを守って……』
自分はボロボロなのに『転移魔法』で私を飛ばすなんて……なんで最後にあんな魔法を使ったのよ。
「俺は参加するつもりはないんで、おまえたち4人で話してくれよ。だけどケイリヒトが無視するなら、こっちで勝手に話を進めるからな」
アレクはそれだけ言うと『転移魔法』で姿を消した。
本当に何を企んでいるのよ……だけど放置する訳にはいかないわね。
アレックスの『伝言』を読み返すと、指定された日は明後日だった。
『解ったわ』と了承の言葉だけ送り返して、私はラスボス戦を再開する。
アレクが何を企んでるか解らないけど。あいつと戦うことになるかも知れないから。少しでも多く経験値を稼いでおかないと。
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