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必勝の聖眼の神殺しと戦女神  作者: 暁 白花
第1部 エピローグ
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66話 証人喚問

 千尋達が部屋へ入ると、冒険者組合のおさガーリッツが席に着くように勧める。


「お前さん方も、先ずは座んな。早速お前さん方の申し開きを聞こうじゃあねぇか、なあ?」


 翔真と一誠を猛禽類の様な目付きで睨む。

 苛立ちにより、セフィーリアに対する言葉も雑なものになる。

 その後ろにシュリカが立ち、組合長ギルド マスターの言葉使いが雑になっていることに眉をひそめ、控える。

 このあたり、ガーリッツも元冒険者というところか。


「ガ、ガーリッツ殿、此度の呼び出しは一体どの様な……」


 セフィーリアが召喚理由を告げずに話を聞き出そうとしたガーリッツに説明を求めた。


「……何も聞かされてねぇのか?」

 

 フム……、と組合長ガーリッツは無精髭の生えた顎をジョリッと撫でり。


「セフィーリア殿下もクレア嬢も知らねぇ様だ……」


 そして、ギロリ、と千尋達を見据える。


「翔真達は朝からずっと別行動、紗奈も同じ……。それに私達は、セフィーリア様、クレアさん、そして、お二人の温情で個人活動を許可をして貰っているわ」

「翔真達とは、先刻、帰りに偶然一緒になったんだけど?」


「な!? 千尋、紗奈どういう事なんだ個人活動が認められているって!! どういう事なんだ? 俺は聞いていないっ!!」

「て、停止されてるんじゃっ!? ち、千尋、裏切らないよな!! 俺達仲間だよなっ!!」


 バンッと、机を叩き、翔真は紗奈に詰め寄り、一誠が千尋に迫る。


「ほたえるなっ!! 小僧どもっ!! 女に詰め寄る前にてめぇらの過ちを認めろっ!! 彼女等ぁを責めて、喚き寄ってんじゃねぇっ!!」


 ガーリッツの喝破が部屋の空気をビリビリと震わせる。


「「ッ!!」


 翔真と一誠はガーリッツの音声おんじょうに気圧され、怯んだ。



「お前さん等が、セフィーリア殿下の金を食い潰してる間、嬢ちゃん達は講習を受けて、【潜在能力ポテンシア】に見合った依頼をこなして居たっつう事だ」


 千尋と紗奈を見て、翔真達は信じられないと言いたげにセフィーリアとクレアの顔を窺う。


「御理解下さい、私達にはチヒロとサナを蛮勇で死なせてしまう訳にはいかないのです」

「それに、手持ちの貨幣は依頼の失敗による損害の賠償で消えていってしまい、宿に飲食代にと日々消えていくばかりで実入りが無いのです」


 セフィーリアとクレアは心を鬼にして、翔真と一誠を叱責した。

 そんな二人に、信じられないと言った風に翔真と一誠は絶句する。


「お、俺達だって今日は早朝から魔物を討伐に行っていたんだ! 成果もあったんだ!!」

「俺と翔真の二人で、連携して紅牙猪を斃して、炎の魔結晶と化した牙を採取して、大きさが良かったのか金貨3枚だったんだぜ?」


 二人は競うように武勇伝を熱く語る。


「俺達の勇者と闘士の【潜在能力】に見合った魔物を探して森に入って行ったら、紅い牙を持ち、背に矢が何本も刺さった大きな猪を見つけたんだ」

「そこで、俺達は思ったんだ! こいつは名だたる冒険者や騎士が戦い斃せなかった、歴戦の猪だってな!」

「そんな奴がスティンカーリンの街を襲ったら大変だろ? たがら、俺達、本物の勇者が斃さないといとね、ってさ」

「ああ、俺達は勇者なんだ! ほっとけねーよっ!!だろ?」


 翔真はセフィーリア、クレア、シュリカ、それに自分に好意を懐き、寄せている紗奈と幼馴染みの千尋に爽やかに笑いかける。

 一誠も千尋とシュリカ、クレアに熱血男、丈夫ますらおぶりをアピールする。


 だが、組合長室の温度は下がり、女性陣の醒めたを向けられ、組合長ギルドマスターガーリッツは米神こめかみに青筋を浮かべば、目元は怒りで痙攣してしまっている。


 そんな剣呑な空気の中、組合長室の扉が叩かれた。


「私よ」

「応、入んねぇ」

 

 玲瓏たる鈴の音の様な声に、ガーリッツの応答し、その後に扉が開かれ、現れたのは千尋達が今朝出逢ったばかりの金髪の美少女エルフのリーゼだった。


「ブラン殿、アラン殿、エリナさん、冒険者一行【ジルヴァラ】の方達を連れてきたわ」


 リーゼの後に続き、戦士といった筋肉質な男と優男な男の二名、最後に魔法士の様なローブを纏った女性が入ってきた。


「すまねぇな、お前さんを使い走りにして」

「別に……、それで?」


 リーゼが翡翠の瞳で翔真達を一瞥する。


「ぇ……?」

「ぅ……?」


 突然リーゼが翔真と一誠の目の前に顕れる。


『うあぁぁーーーーっ!!」


 翔真と一誠は不様に声を上げ叫び、ソファーから転げるように落ち後ずさる。


「戦う覚悟も、勇者としても気概を感じられない。それに見世物じゃないの、不躾では無いかしら? 」

 

 リーゼが見せたのは親友から伝授された技だった。そして、手刀を振り下ろしただけでこれでは情けなさ過ぎた勇者達には最早、興味をむけることはなかった。


「チヒロ、サナ、今朝がたぶりね」


 と、チヒロとサナに向かい、リーゼが微笑した。

 

【ジルヴァラ】の面々が、転げ落ちた少年達を見下ろしていた。

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