表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必勝の聖眼の神殺しと戦女神  作者: 暁 白花
3章 はじまり
44/301

22話 不信

「黙りやがれぇぇっ!!」


 アレクシの慈悲深さに感銘を受け称えていると、アレクシの怒声が響き謁見の間が静まり返った。


「今のが余興と抜かした奴ぁオレの前に出やがれっ!!」


 貴族、騎士たちが顔を見合わせる。


 特に騎士なら尚更だ、”オレ常に戦場に在り”と轟剣の二つ名を持つアレクシの前になど出られる筈が無い。


「余興でもオレの前に出やがれねぇ奴が囀ずるなっ!!」


 アレクシが貴族、騎士を睨み付けると彼等は目を逸らす。


 そんな中、国王アマディウスがアレクシに問い掛けた。


「フム。アレクシよ主は本気だったと申すか?」


 アレクシは、王座を見上げ父王を見返す。


「オレは本気にさせられた。勇者と闘士の二人より、アイツと向き合った瞬間にオレは戦場しかも死地に立たされていた」


「ほう……」


 アレクシの感想に国王が感心をし、総司を見る。


「ツカサ殿。……ツカサ殿にも魔神を討ち滅ぼす為の力になって貰えぬか? ウタネ殿は責任を持って保護しよう」


 アマディウスが詩音を捕らえる様に陰で指示をだす。

 それを受けて動き出す。



 陰で悪意が動き出し、騎士たちが殺気を纏う。


(稚拙すぎだが、やはりそう来たか……)


 総司は詩音を強く抱き寄せる。


総司そうじ……」


 詩音が小さな声で総司の本当の名前を呼ぶ。


「離れるなよ、詩音しおん


 詩音にそう呟きを返し、総司は鋭い視線で国王アマディウスを見返し答えを返す。


「断る。約束をした端から破るつもりの口約束など信じる程甘くは無いさ」


 王命を一刀の元に斬り捨てた総司の返答に、謁見の間がざわついた。


「な、何故……と、問うても良いだろうか?」


 アマディウスが頬を引きつかせながら笑みを浮かべる。


「何故も何も、どうせ交渉決裂だろう? 詩音ウタネを捕らえて俺に魔神殺しを強制するつもりだろう?」


 そして、総司は動き出した影の存在を殺気を込めた視線でわかってると、位置を示す。

 詩音と千尋は、決定的にアルフィード王家と決別し、敵対しようとしている総司を心配する。

 翔真と紗奈、一誠はギョッとし、何言い出すんだコイツと言う顔をした。

 

 そして、総司はアマディウスに向き直りその言葉に侮蔑と憐憫を込め更に言葉を返す。


「問答無用で異世界に連れ去り、その挙げ句の果てに自分達の後始末をさせようとし、断ろうとする者には人質を捕り強制する……。お前達の見通しの甘さの失敗に巻き込まれ、そこの貴族共は”無能”と嘲笑してくれたりもした。そんな連中が厚かましくも自分達の無力の尻拭いに死地に行けと言う」


 総司は冷たい声で言い捨てる。


 その言葉に召喚の儀式を執り行ったセフィーリアとクレアが顔面蒼白になる。


「そんなモノを軽々しく承った奴等は、俺たちの世界の遊び(ゲーム)の様な世界で勇者等と持て囃され、浮かれてるのかも知れないが――」


 と、総司は言葉を一度切り、物語ラノベの様な状況、立場に興奮していた翔真と一誠を見た。


「――それでも俺たちにも家族も居れば家庭での役割もあった。この不始末、どう決着をつけるつもりだ?」


 セフィーリアとクレアが震えだす。


 「ムウ……ヌゥ……」とアマディウスは唸るばかりだ。


 総司は手を弛めない。


「本来なら俺たちは家に着き、家族と食事をとっている時間だ。俺たちが未だに帰らない……。さぞかし心配しているだろう。理解していない様だから何度でも教えてやる。此方の意思を無視し蔑ろにして、勝手に連れ去り、戦へ行けと言い、従わないと人質を捕り強制する。それだけでお前たちがれだけ人の命を軽く見ているか証明するには十分すぎるだろう?」


 その言葉を聞き、セフィーリアとクレアは耐えられず 膝から崩れ落ち「あ……ぁ……」と、二人が嗚咽を漏らす。


 それを見た国王アマディウスは総司に言い訳を募る。


「た、確かに、お主達の都合も考慮せず召喚してしまった事には申し開きの余地も無い……。しかし、しかし、我等には最早この手段しか考えつか無か――」


「――ほう、それで? だからそれがどうした。この戯け」


 アマディウスが言葉を言い終える前に、総司がアマディウスに剣気を込め睨みながら言葉を被せ国王の言葉を遮る。


「俺たちは異世界人。この世界に家族は居ない。戦場で例え戦死したとしても、この世界に家族が居ないのだから補償をしなくてすむ都合のいい捨て駒とでも思っているのだろう?」


 国王たちは言葉を失い黙り込む。それは彼等の隠れた、もしくは目を逸むけた事実だったからだ。


 今度こそ、セフィーリアとクレアは泣き崩れる。


 総司はそれを見て――


「お前たちの仕出かす事がどう言う事か理解して、それを執り行わされた二人の心すら顧みない。それがどれ程愚かしい事か理解しろ」


 はっ、とセフィーリアとクレアが顔を上げると詩音が涙を拭くようにハンカチを渡す。


総司ツカサは心を傷めていても、涙出来ない二人に涙を流させる為に、ああ言う言葉を選んでる。彼等に怒りを表してるから辛辣だけど……」


 三人は総司を見詰める。


「それに一番重要な事を先から言っていない」


「そ、それは……」


 アマディウスが冷や汗を流す。


「帰還の方法だ」


「「「「「あ!!」」」」」


「そうね。先から聞いてれば勇者に成る事、【潜在能力】の事

魔神を討つ事、そして、その後エストレーヤで英雄として暮らすメリットばかりね」


 詩音が翔真たちが浮かれ頭から考えが及んでい無かった事を指摘する。


「「「「……」」」」


「「あ、あのウタネ様……」」


「どうせ、今から分かるでしょ」


 そう言って総司とアマディウスとの成り行きを見守る。


「それを言わなかったのは勇者を逃さずにその仲間の誰かを―― 南條か有馬を人質にするつもりだったのたろ? その間に帰還方法を調べると時間稼ぎをして、戦いさせ続ける。それが狙いなのだろう?」


 違うか、と総司の眼光が鋭さと冷たさを伴い、アマディウスに突き刺さる。


「い、いや……き、帰還の術は、ある……」


「ほ、本当ですか?」


 セフィーリアが喜びです見せて父王を見上げた。


「あるのですかっ!」


「う、うむ、本当だ勇者殿」


 アマディウスは翔真と一誠ならば、 おだて乗せれば操れると、見抜いていた。


 翔真がその言葉に心底安堵し、総司を睨む。


「お前、先から賢しらに言ってたが見ろあるじゃないかっ!!」


「ほら見なさいよ……っ!!」


 ”せんば”と言いかけて、総司が睨み黙らせる。


「ち、千羽ちば、ちゃんとあるじゃない。あ、アンタも雪城せつじょうもクラスメイトでしょ!」


 紗奈が総司と詩音に仲間アピールをする。


「はあ……。クラスメイト……ね。本当都合のいい言葉だよ。クラス一丸もだが」


「な、なによ……」


「個人の得手不得手を無視し、個人の歩みの速さも考えも蔑ろにし何時でも生け贄の羊(スケープ ゴート)に出来る都合のいい言葉ワードだろ?」


「そ、それは……」


 と、紗奈が言い淀む。


「はぁっ? 何言ってんだよこんな時に」


 一誠が総司の言い分に声を荒げる。


「せっかく同じクラスで異世界に召喚されたんだからさ、協力してエストレーヤを救っちまおうぜ。なっ!!」


 一誠が熱く拳を握り総司にグータッチの為に拳を突きだす。

 そんな一誠に総司と詩音は心底呆れた様子を見せる。


「この一年お前らのグループに誘われた事も、一緒に何かをした覚えもないが?」


「クラスメイト、ホント都合のいい言葉……」


 総司とそして詩音の駄目押しで翔真たちは静かになる。


「南條とは接点はあったけど――」


 その総司の言葉に翔真が反応する。


「な、ならっ……」


「――お前らとは接点なかったはずだ」


 と、翔真の考えを先に潰す。

 それでも、翔真は詩音を見る。


「悪いけど、私もごめんよ」


「と、言う事だ。両陣」


 詩音が総司の腕を掴む。



「と、父様……。彼等の帰還の方法とは……」


 涙に濡れるセフィーリアを一目見て、国王は――


「我等は救世の勇者を召喚し……、その勇者モノを邪魔に思う魔神が帰還の術を知っておるのだ」


 父王の言葉にセフィーリアは心が晴れた様に感じた。


「ほ、本当ですかっ! 俺たちは、そいつ等を殲滅すれば……戻れる」


「ウム。安心するが良い。それは、古き伝承にも残っておる。ツカサ殿が案じておる家族にしても、世界が辻褄を合わせる為に召喚術にはその様な力も作用しておる」


「ではっ!」


 セフィーリアは総司を見る。


「セフィーリア……」


「は、はい」


「全部、嘘だ」


 総司の信じられない一言にセフィーリアの時間が一瞬止まる。


「な、え……?」


セフィーリアは父王と総司を交互に視る。


「考えてみればいい。その魔神を滅すればどのみち帰還なぞ出来ない。世界を滅ぼそうとしている奴等に手加減して勝てるのか?」


 総司はセフィーリアとクレアに問い掛け、勢いと立場に酔っている翔真を醒めた目で見る。


「それに、辻褄合わせと言っていたが、俺たちの世界で俺たちの存在が最初から生まれて居なかったと言うモノなら、向こうでも問題は無いだろう。もしくは、戦死した時に俺たちが向こうで生まれて居ない、と言う事実に変わる。このどちらかだ」


「そ、そん……な」


 セフィーリアは最早立っていることさえ出来なくなり、クレアにささえられる。


 国王アマディウスは顔を俯かせどうするべきか思案する。


 はあ、と総司はアマディウスを見て溜め息を吐き、まだこの茶番劇が続くのかと覚めていく。

 

 元々、こう言った事が嫌いなのだから。


 一方的に押し付けられる知識、例えば、世界地図に載っている国、何処でもいいが自身で行った事はあるだろうか?

 自身で体験し、見て、触れ、聞いて確認したのなら確かにそれは存在するのだろう。だがしかし、もしそうでなければ、それは在ると言えるのだろうか。それは異世界と何ら変わらないのでは無いだろうか。


 ――閑話休題――


(この浮かれた奴等で懸念していたのは、やはり南條だけか。氷鏡と妻夫木は気付いてすらいなかった。有馬は世話焼き正義感か……)


 総司は詩音を見る。


(さて、問題は如何にして此処から詩音と共に無事逃げ切る事が出来るか……だね)


 と、総司は詩音と、出来れば南條を連れての逃走の方法を考える。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ