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第95話.クールさん

 食堂の少し重めの扉をギイっと開けると中に入っていった。既に食堂の中には何人か生徒がおり、もう食券も買い終えて、並んでいる生徒もいる。


「先に席取ろっか?」

「だな」


 そう返すと2人が座れる席を見つけ出して、その席の机の上にハンカチやらポケットティッシュを置いて、他の生徒に席を取られないようにした。


「よし、これでオッケー!あとは食券を買ってー、それで並んでご飯を貰うだけだよ!」


 空宮はビシッと人差し指を立てながら俺にそう言ってくる。


「そうだな。空宮は何食うんだ?」


 そう聞くと空宮は少し悩むような仕草を見せる。

 そして、「あっ」と言うと何かを思い出したかの様に駆けだした。


「日替わり定食のメニューを見てから決めるよ!」

「そうか、じゃあ俺は先に買っとくぞ」

「りょーかいっ!」


 そう言うと日替わり定食の見本が置かれている場所にへと移動した。

 空宮が移動したのを軽く見届けた後、俺は食券を購入するために、既に数名が並んでいる列に並ぶ。


(食べるとしたら唐揚げ丼か、ラーメン?いや、シンプルかつハズレのないカレーも捨て難い)


 1人そんな感じでむむむと悩んでいると、目の前に並んでいる女子も似たような感じで悩んでいた。違う点があるとしたら、むむむと実際に声を出してるところだろう。


「むむむ……」


 ほら、また言ってる。

 この人ブレザーを腰に巻いてて少しヤンチャそうな見た目に赤っぽい茶髪してるけど、意外と女の子っぽい所もあるのな。


(完全な偏見だけどな)


 前のその女子をしばらくじっと見ていると、向こうが俺の視線に気付いたのか、こちらの方を振り返った。

 振り向いたその女子の目は髪の毛の色に似て瞳孔に少し赤みがかっている。下ろしている長い髪の毛はふわりと揺れて、シャンプーのいい香りがこちらにまで届いてきた。


 俺が少しの間その様子に思わず見惚れていると、その女子がキッ!っと睨んできた。


(めちゃ怖いです)


「何?」


 先程の「むむむ」とは全く違う低い声のトーンで俺にそう聞いてきた。もちろん俺は見惚れてしまっていただけなので、何か用がある訳では無い。


「い、いや別に、何も無いけど……」


 その鋭い視線に思わずたどたどしい言葉になりながらもそう言った。


「あっそ」


 俺がたどたどしいながらも伝えると、クールさんは一気に俺から興味を失った。ように見える。

 出来れば失っていて欲しい。これで興味を抱かれてたら、俺の心臓が持つのかどうか。


 俺がそんな事を考えているとまた前から声がかかる。


「ほら、私食券買い終わったからあんたも買えば?」

「お、おう」


 クールさんはその名の通り俺にそう言うとクールに去っていく。

 その名の通りって俺が勝手にそう言ってるだけなんだけどね。

 俺はそう思いながらも食券の購入を始めた。


(うん、もう適当でいいや)



✲✲✲



 私は「あんたも買えば?」と、初対面の男子にそう言った後にある事を思い出した。


 私はあいつをこの学校以外で見たこと、もしくは会ったことがあると。

 ただ、どこで会ったのかはパッとは出てこない。

 私はこの気になってどうしようもない、胸の中にわだかまっているモヤモヤを無視するために、日替わり定食のオムライスを口に運んだ。


「やっぱりどっかで会ったよな」


 私は他の生徒が誰かと一緒にご飯を食べているのを横目に見ながら、一人ご飯を黙々と食べ進める。


 私緋山(ひやま)(かえで)はいわゆる「ぼっち」というものに近しい存在なのだろう。私的には一匹狼という方がしっくりくるのだけど。ただ、事実として一人だということには変わりはない。


 この赤みがかっている茶髪もブレザーを腰に巻くというスタイルも、この女子にしては鋭い目つきも、どこか突っぱねたような口調もきっとそれら全てが私を一人にする要因として働きかけているのだと思う。


 だけど実際問題私は今の自分が嫌いではないし、一人というものも案外悪くはない。誰かに合わせる必要もなければ、遊ぶ約束もしないのでバイトのシフトも入れ放題だ。


(夏休みの間も短期のバイトで水族館で働いてたしね。二学期からはカラオケでのバイトだけど)


 私はそう思いながらまた一口オムライスをスプーンですくって口に運ぶ。


(今度のバイトの時給ってどれくらいだったっけな)


 私はふと気になってスマホを開き調べ始めた。

 バイト、バイトの時給……。


 ……バイト?


 ……あっ!?思い出した!

 私は思わぬ方向である事を思い出す。

 先程少しだけ言葉を交わしたあの男子のこと。

 多分だがあの男子は夏休み私がバイトしてた所に客として来てたはずだ。確かソフトクリームを三本危なげな手つきで頑張って運んでいたはず。

 そして、向こうが全然気づいていないのは私が店員であったのと同時に、私サイドが日陰で、あちらサイドが日なたになっていたため光の差で見えにくかったのだろう。

 実際私からは見えてたし、それに私は黒い帽子も被ってたからね。気づかないのがむしろ普通。もし気づいてたら観察眼が凄すぎるってことで。


 私は一人そんな感じでどうでもいいことを考えながら、オムライスの最後の一口を口に運んだ。


「ごちそうさまでした」


 私は両手を合わせてそう言うと席を立ち、食器類を棚に戻しに行く。

 この後は古文だっけかな。

 教科書でも見とこ。


第95話終わりましたね。いや、ついに出ました新たな新キャラ!その名も緋山楓!思いついたの自体は結構前なんですけどね、出すのにどうしても時間がかかっちゃいました。でも出せたからそれでよし!よく頑張った自分!

さてと次回は、1日です。お楽しみに!

それとブックマークと☆もぜひお願いしますね!

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