第76話.水着のお披露目
乗っているモノレールは次第に速度を落としていき、30秒程すると完全に速度を失った。そして、アナウンスが流れるとモノレールの扉が開いた。
「やっと着いたよー」
「長かったね〜」
現と空宮の2人はそんな話をしながら、俺たちの前を歩いていく。
「ねぇねぇ刻くん!」
「ん?なんだ?」
後ろからかけられる凛の忙しない声に振り向く。見てみると凛は右手を胸の辺りに当てながら、自信ありげな顔をしていた。
「僕達の水着楽しみにしといてよねっ!」
「はいはい、楽しみにしとくよ」
適当にあしらいながら改札の方に向かい、俺が歩き始めると、華山と凛の2人分の足音が着いてくるのが聞こえた。
「僕達結構な時間かけて選んだんだよー?だから、悩殺されること間違いなしっ!」
「されねーよ」
「あははっ。またまたそんなこと言って〜、本当は悩殺される準備万端なくせに!」
そんな会話を続けながらひたすら進む。
悩殺のくだりは華山苦笑いして聞いてたなと思いながら、前を歩く現達に追いつくよう少しペースを上げた。
「刻兄遅いよー」
「ほんとだよー」
改札を抜けてかけられる第一声は現と空宮の文句。
「あ、ユウと凛早く行こー」
「そうしましょう、そうしましょう!」
そしてなぜか文句の一つも言われることがない華山と凛。
(これはあれだと思うんですよね。世間は男女平等だなんだって言ってますから、こういう所も男女平等にしないとね?)
俺は内心で文句を空宮達に返しながら、4人の後を着いて行った。
✲✲✲
駅を出てから少し歩き見えてきたのはデカパトスのゲート。ゲート前自体に人はあまりいない。おそらく、開場が始まってからしばらく経ったためだろう。いたとしても、俺達のように高校生だけで来た人などがほとんどだ。
「さーて、ササッと入場を済ませちゃおうか」
現がそう言うと俺達は入場手続きを始める。
入場料は900円と決して安くはないので、お昼ご飯にどうお金を回そうか悩むな。
この際どうでもいい事に脳細胞を使用ながら、俺は脳内会議を繰り広げさせる。
ゲートをくぐると、空宮達は一度立ち止まってこちらを振り向いた。
「じゃあ刻、更衣が終わったらここ集合ね」
「了解」
「じゃあまた後でねー」
「おう」
そんなやり取りを終えると男子と女子で分かれる。俺は別れた後1人寂しく更衣室にへと向かった。
中に入ると当たり前だが、俺以外にも小さい子供や俺よりも少し年下くらいの男の子。あとはパパさんなんかが着替えている。
空いているロッカーに手を掛けて扉を開くと、そこに持ってきておいたカバンをポイッと放り込む。そしてその中から水着を取り出すと、光の速度で着替えを済ませた。
「よしっ」
そう言うと、バスタオルに貴重品とレジャーシートを片手に持ち外に出る。
「さすがに、まだいないか」
空宮が指定した待ち合わせ場所に行くと、スマホを開いて気温を確認する。
「36度か。そりゃこんなに汗もかくわな」
今現在の暑さに驚きながら、空宮達が来るのを待った。
✲✲✲
5分ほど経った頃に、背後からやたらと元気な声が俺にかけられた。
「刻くんお待たせー」
「おう」
振り向くと水着姿に変身した凛達がいる。
「どうかした?」
空宮が俺の顔を下から覗き込むようにしてそう聞いてくる。
「あ、別に何でもない」
咄嗟にそう言う。咄嗟にそう言ったが誰がどう見ても少し不自然。認めたくはないけど、不覚にもこいつらに見とれてしまっていた。
「おやおやー?もしかして刻くん僕達の姿に見とれてたのかな?」
「違う」
プイッと別の方向を見ながらそう言った。
「もう分かりやすいな〜」
「本当だよね〜」
凛たちはケラケラと笑いながらそう言った。
(こいつら、俺で遊びやがって……許さないんだから)
「それで、ど、どうかな?」
そんな事を考えていると空宮からそう聞かれる。
空宮は頬を少し赤くしながら、俺に水着を見せてくる。
空宮が着ているのは、水色と白色のボーダー柄のもの。そして、上部の方にはフリルが付いていて可愛らしいデザイン。
「似合ってるんじゃないのか?」
「そ、そう?変じゃない?」
「変だったら似合ってるなんて言わない」
「ふふっ、そっか」
空宮はそう笑うと凛たちの方も見る。
「じゃあ私以外の3人はどうかな?」
「そうそう、僕達も忘れちゃいけないよー?悩殺させに来たんだからね」
凛はその豊満な胸を大きく揺らしながらそう言う。
(凛?そんなことを外でしたらダメよ?色んな男の目線があるからね?)
華山は控え目な白基調のオシャレ水着。上には薄目のパーカーを羽織っている。
そして凛は、黒基調のシンプル水着。だが、シンプルゆえにその胸がより一層の主張される。
残るは我が妹現。
現は白と黒のストライプ。普段の現からするといつもより大人っぽい。
「まぁ、全員似合ってると思う」
俺がそう言うと凛はぬっと顔を俺に近づけてきた。
「本当にそう思ってるぅ?」
「思ってる思ってる」
(顔が近い、少し当たってる、何がとは言わないけど、柔らかいそれが当たってる!)
俺は内心でそう叫びながら顔をひたすら逸らした。
これから1日こいつらとプールで遊ぶ訳だが、俺の気力が持つか分からん。
第76話終わりましたね。女の子が可愛いと思う水着とかがよく分からないんで、もう本当に適当です。前々回の服と言い難しいよねオシャレって。
さてと、次回は22日です。お楽しみに!
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