第697話.入園式
身内の入園式というのは私にとっては初めての体験だ。私自身は一人っ子で兄弟がいるわけではないから。とは言っても毎年のようにこれまで見守ってきていたのだけどね。今回は前からじゃなく、後ろから見守るのだ。
「あの子たち大丈夫かな?」
「大丈夫大丈夫。風香も鈴香も頭がいいから、しっかりとやれるさ」
「んー……だといいけど」
あの子たちの賢さは一番近くで見守ってきた私達が知っている。知っているのだが、やはりそれでも不安だ。これが親心と言うやつなのだろう。今になって良心が私の事を心配し続けていた意味が分かる。
幼稚園の少し大きい制服を小さいながら着こなし、ピシッと背筋を伸ばして座る2人。仲良しポニーテールを揺らしながら式を楽しんでいるようだ。
「ふふ……楽しそう」
「初めての幼稚園だからな」
親バカ2人は早く愛娘2人の制服姿を撮りたいという欲に駆られながら式が終わるのを待つ。
最後に園長先生の話が終わり子供達が各クラスの先生に連れられて教室に向かう。保護者である私達は廊下から子供達の様子を見守るような形だ。
初めての空間にワクワクが隠しきれないのか、仲良しポニーテールを揺らしながらあちらこちらを見ている。目立つからもう少し落ち着いて欲しいとは思うけれど、親に聞いた昔の私の様子そっくりそのままで、血は争えないのかもしれないと思うのだ。
うん、好奇心旺盛なのはいいことだよ。
子供達が聞く説明をどちらかと言うと親が熱心に聞く不思議な光景を見届けてから、いよいよ解散の時間となる。本格的に始まるのは2日後からだから今日は帰ってゆっくり休ませるのだ。
「ママー!」
「パパー!」
風香と鈴香がそれぞれに飛びつくように抱きついてきた。そんな子供たちを私達は抱き上げると、おかえり、と伝える。
「さ、帰ろっか」
「うん!おなかすいたー!」
「りんもすいたー!」
はらぺこあおむしの様にいっぱい食べて立派になるのかしら、なんて思ってしまいすこしクスッと笑う。2人は不思議そうにしていたが、すぐに飽きて他のものに興味を移すのだった。
今日は車で来ている。駐車場に停めておいた車に着くと、2人をチャイルドシートに座らせて私達は前に座った。
「じゃあ、しゅっぱーつしんこーう!」
刻の号令で私達3人がおー!と声をあげる。
アクセルを踏み前進する車。刻の安全運転に信頼を置いて私達は家路に着くのだった。
第697話終わりましたね。入園式ですって。皆さんは自分の入園式は覚えていますか?作者は卒業式しか覚えておりません。逆になんで覚えてたんでしょうね。
さてと次回は、11日です。お楽しみに!
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