第695話.お忍びデート
待ち合わせ場所で落ち合う。
辺りに人は少なく、お忍びデートのようだ。実際大地くんは日本の代表選手。スポーツ好きであれば確実に名前を知っているような人だからあながち間違いでは無いのだろう。
日陰で待っていた僕のところに駆け足で大地くんが向かってきた。空港から直接だったので手にはキャリーケースの取っ手が掴まれている。ガラガラとキャスターの回る音が響いていた。
「ごめん、おまたせ」
「ううん。それよりも大丈夫?疲れてない?」
尋ねると大地くんはニッと笑う。
「普段からもっときつい練習してるから、このくらいなら大丈夫。それよりも一旦どこかお店にでも行こっか」
「うん。何か持とうか?」
「いや、大丈夫。凛さんこそ普段世界中飛び回ってるんだから、それこそ休まないと。俺は強制的にオフの期間を設けられるからちゃんと疲れも取れてるし、大丈夫」
「そっか。じゃあゆっくりさせてもらおうかな」
歩き始めて数分後。近くに見つけたカフェに入る。
平日の昼時だからかお客さんは控えめ。おかげでリラックスして過ごせそうだ。
メニューを貰い僕達は2人で何にするのか決める。大地くんはコーヒーを適当に選んでからあとは追加で頼むことにするようだ。それでは僕は最初からスイーツでも頼もうかな。
美味しそうなケーキがずらりと並ぶ中で直感でビビっとなったものにする。
届くのが待つ間はポーランドでの練習の話や、向こうの街で見つけたお店の話などをしてもらった。僕の行ったことのない国だからどの話も全て新鮮に感じる。
「凛さんは何かあったりした?」
尋ねられて僕は首を横に振る。
「いつも通りだよ。朝起きて出勤して飛行機に乗って仕事をこなしてフライトから帰ってきて、それの繰り返し。僕は運がいいのか悪質なお客さんにもトラブルにも巻き込まれたことがないしさ、これといった面白エピソードも何も無いよ」
「ふーん?でも、トラブルに巻き込まれてないのなら良かった。空の上じゃ俺が助けに行けないからね」
「地上なら助けてくれる?」
「もちろん。国が違うくたってすぐに向かうさ」
甘ったるい惚気のような話をしていると苦いコーヒーが届く。白く立つ湯気が淹れたてであることを示すようだ。
更にそこから数分もすれば僕の頼んだケーキが届きひとまずは全てが届いたことになった。
「ん〜、おいひぃねぇ」
高校の時から何ら変わらぬ仕草でケーキを食べる。いい加減大人になりたまえと自分でも思うが、どうしてもこの感じが抜けないのだ。まぁ、僕らしくていいのだが。
そんな僕を見るように大地くんはコーヒーを飲んでいた。バレーで鍛えた腕の筋肉が逞しい。
と、本来聞きたかったことと、大地くんが帰ってきたこととは関係がないことに気を取られすぎたね。
そろそろ、本題に移ろう。
第695話終わりましたね。作者は課題に追われ、試験に追われ廃人になりそうですが、何とか生きてます。体力が持たねぇぜベイベ。
さてと次回は、7日です。お楽しみに!
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