第675話.ましろが見送ります
スーツ姿でビシッと決めた刻を見送る。リクルートバッグを持つとさながら戦うサラリーマンだが、彼はまだピチピチの大学生だ。
行ってらっしゃいと手を振り閉まる扉を眺める。カチャンと鍵を外から刻が掛けて行くのも見届けてから私はリビングに戻った。
今日はバイトもなく一日暇である。刻の式自体もそう長いものではないが、それでもお昼は余裕で超えるだろう。となるとだ、お昼の時間がお互いに合わなくなるのでそれぞれ好きなものを家で食べるなり、外食してくるなりに思考が進む訳だが、今日は気になっていたカフェに行ってみようと思うのだ。
そのカフェはモーニングが有名な場所なのだが、同時にランチも非常に人気のあるお店である。モーニングが有名すぎて薄れがちだが、通であればあるほどあえて朝を避けてお昼頃に赴き、そのランチを食べるらしい。なんでもサンドイッチセットが絶品なんだとか。
ましろのお昼を準備しつつ、私も自分の身支度を進める。今日は動きやすさ重視で行こう。
上は白のTシャツ。下はジーンズパンツでシンプルにまとめて、黒のキャップを被る。薄めのサングラスもかけながらネックレスをつければいい感じだ。
鏡を見ながらポーズを取って違和感が無いかを確認する。この確認作業。自分ではいいと思っていても人から変だと思われないかが心配で、何度も確認してしまう。
まぁ、何度見たって変わらないものは変わらない。ある程度の妥協と許容で私は納得した。
「さて、そろそろ行こうかな」
ましろのご飯とお水を用意しておきご飯を置いてあることだけ教えておく。部屋の奥から大きくあくびをするましろがてくてくとやってきた。
「ご飯、用意しておいたからね?ちゃんと食べるんだよ?」
「みゃん」
「ん〜、よしよしよしっ!いい子だ〜!」
わしゃわしゃと顔をもちもちしつつ撫でてあげる。ましろは嫌がるでもなく喜ぶでもなくされるがまま。こういったところも可愛らしい。
「それじゃあ、行ってくるね」
刻にした時と同じように、ましろにも手を振る。刻と違うのは今度は私が家を出る番だということだろう。
ましろのお見送りを受けて私は外に繰り出した。晴れた日差しが暖かい。というか直接当たるところは初春にしては暑いくらいだろう。
「今年は暑くなるぞー」
桜が落ちきり緑となった木を見ながら私はそう呟くのだった。
第675話終わりましたね。今日は日本ダービーですね。作者はダービーをちゃんと見始めたのは2023からです。一応2022の時も競馬は見ていたんですけど、その時はコロナで家で1人隔離されていたのでテレビが見れませんでした。悲しい。
さてと次回は、28日です。お楽しみに!
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