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第668話.愛ある躾

 完成したご飯を食卓に並べる。刻以上になぜかましろが飛んで喜んでいるが、きみの分は少な目だからねと釘を刺しておいた。

 いくら食べても平気とはいえ、私達は獣医や動物の専門家ではない。猫が元来肉食の動物であることは理解に容易いことではあるものの、あくまでこれは人間が食べるために調理されたもの。多くあげるのは良くない気がするのだ。それに子猫の成長促進には子猫用のエサが一番効率がいいに決まっている。

 食卓に並べたご飯にありつく前に、私はましろ用のご飯もちゃんと置いてあげた。ましろは犬のようにしっぽをフリフリとして楽しそう。

 ましろはやはり待ちきれなさそうなので私達も一緒に食べ始めることにする。

 まずは一口運んだ。

 うん、成功だ。さすが旅の路さん。分かりやすい上に味も最高、初心者向けでもあり玄人向けでもあるレシピを作り出す彼女は流石としか言いようがない。

 刻も美味しく食べれたようでニコニコ笑顔を浮かべていた。そうして何やら感想を言おうとしたらしきタイミングで隣から物凄い勢いでガツガツと食べる音が聞こえる。見てみるとエサに顔から突っ込むましろの姿があった。


「ましろさんや……もう少し綺麗に食べなはれ」


 勢いが凄すぎたせいか辺りにはエサが要所要所飛び散っている。まだ子猫だから仕方がないで済ますことも出来るが、一応この子も家族であり、そういった躾はしていかないといけないと思ってる。だからこそ、心苦しくはあるがここは鬼となって言うのだ。


「ましろ、綺麗に食べないとめっ!だよ」


 ましろの近くにしゃがみこみながら私はそう話しかける。近くで言葉が聞こえたからだろう、すぐにこちらに顔を向けてくれた。

 ましろの真っ白な毛並みはエサで汚れてしまっている。そして私の表情を見て自分が怒られているということもなんとなく感じとったのだろう。エサで汚れた顔をしゅんとさせながら小さくみゃうと鳴いた。そして先程までの勢いはどこへ行ったのか、随分と大人しく食べ始めた。

 エサを用意してあげた、なんなら私の手作りをあれだけ美味しそうに食べてくれていた身からすれば、あの食べっぷりは嬉しいという言葉以外に表現することが出来ない。けれど躾上叱らないといけず、その結果こうしてしゅんとした様子で食べられるのは何だか寂しいものだ。私が選んだ結果だから仕方がないのだが。

 頭を撫でやり厳しく言ってごめんねとだけ伝える。そしてまた美味しいご飯用意してあげるから、とも伝えておいた。

 静かにましろのしっぽが喜び始めていたのに気が付いたのは、私とましろの様子を見ていた刻だけだったのだろう。


第668話終わりましたね。推しは変えるものではなく増やすものという名言がありますが、実はこれには恐ろしいデメリットがあります。それはお金がかかりまくるということです。えぇ冗談抜きで金が要ります。ゲームだろうがアイドルだろうが、馬だろうが、VTuberだろうが。しかし推しの助けになると考えると人間は馬鹿なのでお金を沢山使ってしまうんですね。

さてと次回は、14日です。お楽しみに!

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