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第656話.こっちが本命

 ましろが来てから少しだった頃。やっと注文していたましろ専用のベッドが届いた。今までは刻お手製の段ボールベッドだったが、こちらはそこそこお金を出してクッション性も抜群のものを選んでいる。おそらく睡眠の質向上ですくすく育つだろう。

 刻にベッドを組み立ててもらいましろをふかふかなベッドの上に乗せる。

 どんな反応を見せてくれるのかとわくわくして見ていたらましろは初めて見るベッドに警戒心を抱いたのか、色んなところを猫パンチし始めた。といっても子猫の猫パンチ。大した威力では無いし、傷がつくこともない。

 ある程度してからましろにとってこのベッドは害がないと判断したようだ。コロンと小さな体をベッドに預けてみる。しばらくごろごろとして感触を確かめたようにした後唐突にましろは立ち上がった。

 いきなりベッドを降りるとなぜか玄関の方に歩き出す。


「ましろ?」


 私達は2人でましろの後ろについて行く。

 玄関に辿り着きましろはある一点を見つめて立ち止まった。その先にあったのは刻が手作りした段ボールベッドだ。新しいものが届いたから捨てようと玄関に置いておいたもの。ましろはちゃんと分かっていたのだろうか。

 段ボールのベッドにましろはのそのそと入る。捨てようと思っていたので中にタオルは敷かれておらず、お世辞にも寝心地はいいとは言い難い。しかし、それでもましろは居心地が良さそうにしていた。


「気に入ってるみたいだね、刻が作ったベッド」

「うん、そうみたいだな」


 見た目にはあまり現れていないが、声の高さに嬉しそうな感情が隠しきれていない。


「うーん、でもそうなるとあのベッドどうしようか。あれ結構お値段張ったからなぁ」

「うーん、置いとくだけでもいいんじゃないか?この段ボールベッドもそんな大きいものじゃないし、ましろが大きくなった時ようにあった方がいいと思うしさ」

「確かに、それもそうだね」


 新しいベッドはしばらく日の目を見なさそうなので、私達のベッドの隣にひっそりと置いておくことにした。

 ましろはお昼寝タイムなのか段ボールベッドを玄関から動かす時も微動だにせずに寝ている。


「この子は図太い精神の持ち主になりそうだね」

「そうだな。でも猫なんて気まぐれだし、そのくらいが多分一番いいんだよ」

「かな」


 我関せずと大口であくびをしながらましろはそっぽを向くように寝返りを打つ。

 人語を理解しているのでは無いのだろうかと思わずにはいられない。けどまぁ、いずれ本当に理解し出す時は来るのだろう。


第656話終わりましたね。さて新学期が始まりましたこの時期。忙しさと慣れない環境への変化で軽く精神病みそうな皆様、そういう時は何か楽しみを見出すことが大切ですよ。そしたら何とかなります。

さてと次回は、20日です。お楽しみに!

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