第646話.お昼ご飯
学校を出る時はまるで明日もまた登校するかのような軽やかな足取りだった。けれど胸ポケットには白桃色のコサージュが儚げに刺さっている。門出を祝うのと同時にさよならも告げられたような。そんな感覚だ。
軽い足取りはそのままに、私達はひとまず灘駅の方へと向かった。しかし目的地は灘駅にあらず。真の目的地は目下のからあげ専門店である。
ジュワリと店内で揚げられた大粒の唐揚げをこれでもかとお皿に載せた定食が人気なのだ。値段もリーズナブルで学生人気が特にいい。
お昼時を少しすぎたと言えど、さすがに人気店。ピークタイムほどではないが、かなりのお客さんで賑わっている。4人席が空くのは少し先になりそうだ。
店員さんに空き次第案内して貰えるように手配して、私達は店の外でゆっくりと物思いにふけることにした。
「卒業しちゃったねぇ」
「そうだねぇ」
呆気なさを感じているのか凛は随分と間の抜けたような表情をしている。先程まではお腹空いた!唐揚げまだかな!と元気な表情で一杯だったが、今は随分と大人びて見える。
「明日から何して過ごそう」
「今まで通りでいいんじゃない?」
「んー、それもそうなんだけどさぁ、せっかくなら何かこの機会に初めて見るのもいいのかなぁって」
「何かしてみたいことあるの?」
「特には!」
「えぇ……」
凛の自信満々なその表情に笑ってしまう。
「あ、でもゲーム実況とか楽しそうだなとは思うなぁ」
「ゲーム実況?刻、実況て簡単?」
「いや、そんなこと経験の無い俺に聞かれましても」
まさか話を振られるとは思っていなかったのか刻は目を丸くしている。
「でもまぁ、機材さえあれば何とかなるんじゃないか?マイクとかヘッドセットとかその他諸々。投稿式じゃなくて配信なら編集もほとんど要らないし、姿を写しさえしないならまぁ調べればなんとかなると思う」
「だってさ」
「ほうほう。家に帰ってから調べてみる!」
「うん、頑張ってね」
実際にするのかは知らないけど、凛がやってみたいことならそれに口出しするのは違うだろう。というか、普通に気になるし。もし始めたのならチャンネル教えてもらおうかな。
そんな感じでのんびりと時間を潰しながら待っていると店員さんに席に案内して貰えた。店の中は美味しそうな唐揚げの匂いで充ちている。きゅるると鳴りそうなお腹をさすりさすりとさすってから私達はメニューを見るのだった。
第645話終わりましたね。唐揚げが嫌いだという人はほとんどいないと思いますが、皆さんは唐揚げに何かつけて食べる派ですか?そうでない派ですか?さくしゃはつける時もあればつけない時もある人です。
さてと次回は、31日です。お楽しみに!
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