第633話.黄昏時の帰路の道
今日で全てが終わり、みたいな雰囲気を前回に醸し出しているが、今日はあくまで掃除をしに来ただけだ。卒業まではもう少しある。
帰る時も明日がまたあるみたいにあっさりと別れてそれぞれ帰路に着くのだ。
黄昏時の夕日は赤く燃えて影を長く伸ばす。
日が沈むにつれて気温は下がる。ほんの少し肌寒く感じる風がもう少ししたら春を運んでくるのだ。
芽吹く準備を始めた草気に目をやりながら私は刻と並んで帰るのだが、にしても大学生になってからの生活というのを想像するのがなかなか難しい。今までの生活とはガラリと変わる影響もあるだろうが、それでも想像しにくい。
私服で出ていって私服で帰ってくる。それが毎日だ。加えて大学からは通う学校も刻とは違う。ゆえに家を出る時間も変わるだろうし、そもそも授業のとり方でも色々変わってくる。単位制の授業で過ごしてこなかったから全てが初めてで不安だらけだ。
でもいいように考えたらお昼まで刻と一緒に寝てそこからゆっくり学校、もしくは全休であればゆっくり過ごすことだってできる。午前中だけの授業であればお昼からデートだってできるのだ。そう考えるとやはり高校よりも自由度が高い。
うん、不安だけじゃなくていいこともあるってことだ。
一抹の不安は楽しみに全て変換して、未来に向けて歩みを進める。
刻のいない学校生活というのはやはり寂しいものがあるけれど、でもお友達を沢山作ればそれも多少は和らぐだろう。それに家に帰れば必ず彼がいるのだ。
「ねぇ刻さんや」
「んー?」
「もうすぐ卒業ですけど、この3年間はどうでしたか?」
「そうだなぁ。1年目は大したことしてないからあれとして、2、3年は部活も楽しかったし行事も楽しかったな。凛がイギリスから帰ってきて幼馴染が集結したし、華山とも関わるようになったし、後輩もできた。中学の時よりもまともに後輩と呼べる後輩ができたよなぁ」
「そうだったね。刻の中学時代は孤高だったから」
「しょうがないだろー。みんな俺のレベルについて来れなかったんだから」
「そりゃあ1人だけ全国だからねぇ。気合いが違うし仕方がないよ」
懐かしい昔話も混じえてそんな話をする。
あっという間の3年間。
特にこの2年は本当にあっという間だ。
終わりが来るなんて本当は信じたくない。信じたくないけど、納得した振りをする。
そうすれば寂しさは少しだけ隠せるかもしれないから。
何年後かに思い出話で出来たらそれでいいと思うのだ。
第633話終わりましたね。卒業とは違いますが私のバ先の先輩も就職でバイトを辞めることとなり主力が私を含めた現役勢に移り変わりました。この先輩達が非常に優秀で今からこの先のバイト先がまともに回るのか不安で仕方がありません。
さてと次回は、5日です。お楽しみに!
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