第629話.かき揚げ
一足先に帰還してきたユウとお喋りをしながら凛と刻のことを待つ。昼休みの後も特に授業のない自由時間なので私達は非常に気楽に待つことが出来た。
「ユウのA定食、今日はどんなメニューなの?」
「今日のはかき揚げ丼でした」
「かき揚げ丼かぁ」
丼のフタをユウが開けてくれて中身を見せてくれる。中にあるのは野菜の色が金色の衣に包まれた美味しそうなかき揚げ。サクサクしていそうだ。
じゅるりとヨダレが出そうになるのを抑えつつ私はユウのトレーにお水のコップ以外のものがあることに気がつく。
「その黒い器何?」
私が尋ねるとユウは「あー」と言ってこれまたフタを開けてくれた。
「これはつゆですね。そうめんとかに使う麺つゆです」
「麺つゆ?」
「はい。食堂の人にこれを全体にかけてから解すようにして食べると美味しいよって言われました」
「あー、それは確かに美味しそうだ」
想像がしやすい。つゆでサクサクの衣がしっとりと濡れる。そうする事で柔らかく食べやすくなり、またつゆの味が染みてより一層美味しくなるのだ。
またまたじゅるりとヨダレを飲み込みつつ、今度家で作ってみようかしらと思う。
「お、今日のA定食はかき揚げ丼か」
後ろから刻の声がする。
手にはトレーを持っていて上には湯気のたつラーメンを載せていた。
「凛もじき来ると思う」
そう言いながら私の隣にトレーを置いて席に着いた。
「なんか人気デザートが残り一つだったらしくてな、凛はそれをかけたデスマッチジャンケンしてるよ」
「デスマッチジャンケンかぁ。今はどのくらい勝ち残ってるの?」
「俺が確認した時は残り5人とかだったな。スタート時が10人くらいだったから半分は勝ち残ってる」
「おぉ、結構いい感じなんだね」
「みたいだな」
そんな感じで凛の帰還を待つ。
と、数分もしないうちに勝ち誇った表情の凛が戻ってきた。
「分かりやすいよなぁ」
「だねぇ」
そんな事を刻と話しながら凛が座るまでを見届ける。
「ふっふかふー!僕は勝ったよ!勝ってしまったよ!」
「みたいだな」
「いやー、最後にこれを手にできたのは良かったよ!」
満足気に笑いながら凛はご飯も一緒に置く。
どうやらご飯はシチューにしたらしい。
うん、美味しそう。
みんな揃ったところで私達はご飯を食べ始める。
のんびり話しながら。少し麺が伸びていたが、そこは気にしないでおこう。気にしたら負けな気がする。
終わりの近づく昼休みに焦り始める周りを尻目に、私達は相変わらずゆっくりのペースだ。
第629話終わりましたね。かき揚げと丼の組み合わせってシンプルですけど最高に美味しいですよね。えぇ、ご飯の話をするとお腹も空きます。
さてと次回は、26日です。お楽しみに!
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