第625話.食べたかった理由
私作の渾身のパスタを刻に振る舞う。刻は相変わらず美味しそうに食べてくれるので、料理を作る人間としてこの上ない喜びだ。
「蒼の料理やっぱり美味しい」
「そりゃ、よかった」
「うんうん。毎日食べたい」
「毎日食べてるでしょー。あ、そういえば話は変わるけどさ」
「うん」
食べながら話を聞いてくれる刻。男の子なのに上目遣いが可愛いのはちょっとずるいと思う。
「なんで今日は私の作ったパスタが食べたかったの?刻の方が作り慣れてるし、レパートリーも多いと思うんだけど」
「蒼のが食べたかった理由かぁ」
そう言ってからうーんと考える仕草をする。
おいおい、食べたかった理由にそんなに時間がかかるのかい。
そう思いながら待っている間は私もパスタを食べ進めていた。
「うーん、大それた理由は無いけど、一番はシンプルに食べたかったからかなぁ。パスタは俺が作るもの、みたいな感じがあったからさ、蒼のが食べたくて」
「そんなの言ってくれたらもっと作るのに」
「……だって、俺が作ったパスタを蒼がめちゃくちゃ美味しそうに食べてくれるからさ、作りたくなっちゃうんだよ」
「……惚気ですか?」
「……いや、事実。多少は惚気もあるけど」
惚気を本人に話すやつがあるかと思わないでもない。が、まぁ刻の理由が可愛らしかったのでひとまず良しとしよう。
その後は少し気恥しさもあってか黙々と食べる時間を過ごす。
こういう日は大体夜のイチャつき度合いがいつもよりも大きいのだ。1年も付き合っているのだ、私は知ってるんだぞ。
✲✲✲
案の定夜のイチャイチャがいつもより激しかったなぁ、なんて思った寝落ちする10分前。
明日は久しぶりに学校に行かなければならない。自由登校期間ではあるが、受験が終わっている生徒は色々といいように使われるのだ。掃除だったり片付けだったりの奉仕作業にね。まぁ、暇だから構わないのだけれど。どうせなら部活にも顔を出そうか。
明日の予定をふわふわと考えながらお昼は学食の食べ納めにしようと1人決める。刻にもちゃんと朝に伝える予定だ。彼氏さんは既にゆっくりお休みなのでね。
第625話終わりましたね。皆さんのバレンタインの戦績はいかがでしたか。作者は妹の試作の毒味役の地位を確立したことで食べることが出来ました。妹まじ感謝。
さてと次回は、18話です。お楽しみに!
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