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第60話.膝枕

 果たしてこれは一体どうするのが正解なのか。空宮のベッドは使えなくなっており、寝るためには和室にある布団を使うしかない。ただしその布団は和室から持ち出すことが出来ないときた。そして和室では俺が寝るわけだ。

 うむ、どうしようか。

 1人頭を抱えながら悩む。そしてその様子を、空宮は俺の隣にちょこんと正座しながら見ている。


(空宮さんも考えるの手伝ってくれませんかね?俺よりもあなたの方が大問題な気がするんですけど)


 文句を頭の中で片っ端から並べた。


「刻どうしよっか」

「それは今考えてる最中」

「じゃあ私も考える!」


 空宮は元気よくそう言った。


(初めから考えててくれよぉ……)


 そう少し悲しくなりながら、俺は脳の前頭前野をフル稼働させる。


「あ、ダメだ。何も浮かばない」


 オーバーヒートしそうになっている頭を抑えて、一旦考えることをやめた。


(あー、頭がボーっとする。多分あれだな、頭の使いすぎと一緒に睡魔も襲って来てるんだろ)


 そのタブルパンチを食らったおかげで、視界がぼやけてくる。


(あぁ、まだ……解決案が……思い浮かんで……ない……のに……なぁ)


「あれっ!?刻どうしたの急に倒れて!」


 薄れゆく意識下で最後にその空宮の声だけが聞こえた。あとは左耳の下に柔らかい感触があるのだけ理解すると、俺の意識はプッツンと糸が切れたように無くなる。



✲✲✲



「……んぁ」


 どれほど経ったのか分からないが、しばらくした後に目を覚ました。この状況で分かる事は、意識が無くなる前最後に認識した左耳の下にある柔らかい感触が、まだあるという事。

 その正体が一体何なのかを確認したかったが、変な姿勢で寝ていたためか身体を少し痛めており、そうすることを許してはくれない。


(結局この柔らかいのは何だ?枕か?いやそれなら何となく分かるだろうし、本当に何なんだこれ)


 頭の中で色々な候補をあげてそして排除していく。

 そんな事を何回か繰り返していると、右耳の方から声が聞こえた。


「刻起きた?」


 少し乾いた喉を頑張って開きながら応える。


「起きたぞ」

「そう」


 空宮は俺の返事を聞くと素っ気なく返してきた。なにか不満があるようなそんな感じの声で。気になった俺は思わず空宮に聞く。


「何か素っ気ないな」

「そう?」

「うん」

「じゃあなんで素っ気ないように感じたの?」


 俺は空宮にそう聞かれて少しの間考えるとすぐに返事を返す。


「そうだな。普段の空宮なら、「そう」とかよりももっと文字数もテンションも高く言うからな。そんなところに素っ気なさを感じたんだと思う」

「そっか」


 空宮はまた素っ気なくそう返してくると、しばらく黙ってしまう。


(あれ、もしかして俺なにか言ってはならないこと言ってしまいました?)


 少し不安を覚えながら空宮がまた喋り始めるのを待った。一分もすると空宮はまた話し始めてくれる。


「刻」

「ん?どうした?」


 名前を呼ばれたのでそう返す。


「私が素っ気なく返した理由は簡単なんだよ?」

「そうなのか?」

「そう、本当に簡単な事。一人の女の子の乙女心が理由なんだよ」


 空宮がそう言うと、俺の頭が急に撫でられた。俺は思わずビクッと体を強ばらせてしまう。


「そんな警戒しないでよ。いつも通りなんだからさ」

「い、いやそんなことを急にやられたら誰でもこうなるって」

「そお?」


 俺の右耳の方から、くすくすと笑いをこらえる空宮の声が聞こえた。

 右耳の上からか。

 ん?右耳?


(ちょっと待てよ、今俺は空宮に頭を撫でられてるよな。そんでもって声は天井の方を向いている右耳から聞こえている。更には頭の下にはほんのりと温かみを感じる柔らかい何か)


 もしかしてこれって……、


「あれ、空宮?」

「どうしたの?」

「もしかしなくても俺今さ、空宮に膝枕してもらってる?」

「そうだけど。今さら?」


 俺は衝撃の事実に驚くほかなかった。

 いやむしろなんで気が付かなかったのか不思議なのだが。

 先程から体が少し痛いのを理由に、全然周囲の状態の環境を確認しなかったのも確かにあるが、それでも気づけよ俺!空宮もそりゃ、素っ気ない返事するわ!膝枕してるのにテンション高く保つってのはそりゃきついですよ。


「ごめん全然気づかなかった」

「えぇぇー!!?」


 俺の右耳には空宮の驚きを隠しきれない叫び声が聞こえる。

 鼓膜が破れるよ。


「本当にすまん!」


 俺は空宮の手を頭から優しくのけて、バッと起き上がった。


「も、もう!と、刻の、え、えーとその、あーもう!バカバカ!私すっごく恥ずかしかったんだからね!」

「本当にごめんて」


 空宮は顔を真っ赤に染めながら俺の肩をポカポカ叩いてくる。


「うぅ……」


(痛いような痛くないような。いや、痛くはないんだけどね?心に響くというかなんというか)


「はぁ、もういいよ。私寝るっ!」


 空宮はそう言うと俺が使う予定だった布団にくるまって、すーと寝息を立て始めた。


(俺の寝る場所どうするの?布団引っ張り出す?もうこの部屋で一緒に空宮と寝ちゃう?)


 それは段階ぶっ飛ばしすぎかなとか思ったけど、合宿で空宮が寝落ちして一緒の部屋で寝たの思い出した。

 俺は過去に前例があることに気づくと、布団を引っ張り出して部屋の隅で縮こまりながら眠り始める。

 前例があるとは言えども、女子と同じ部屋。緊張でなかなか寝付けないので、俺はただ目を閉じる。今日の出来事を振り返るために。


第60話終わりましたね。ついに60話ですよ。何となく書き始めてからここまで来ましたからね。しっかりと完結させますよ!しばらく完結しないけど!

さてと次回は21日です。お楽しみに!

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