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第58話.小悪魔シスター

 俺と空宮は家の最寄り駅で降りると、家に向かって歩き始める。俺達以外に浴衣を来ている人はここにはあまりおらず、少し目立っていた。だがそれは行きの時も同じ事なので特に気にせずに歩く。


「花火綺麗だったなぁ」

「そうだな」


 隣にいる空宮は改めて感傷に浸っているようだ。

 確かに今年の花火は去年よりも力を入れていたらしい。近くにいた毎年来ていたような口ぶりのおじさんが、「今年はいつもよりも派手だなぁ」とか言っていたのだから。

 そんなやり取りをしながら歩き続ける。だけど、そんなやり取りをしながらも俺は一つ気になることがあった。というか、聞いておかないといけない事があった。


「なぁ、空宮」

「ん、刻どうかした?」

「俺は空宮の家に行けばいいのでしょうか?それとも(うつみ)が嫌がるのを吹っ切って、家に強行突破するのがいいのでしょうか?」


 そう聞くと、空宮は顔をハッ思い出したような表情を浮かべた後すぐに思案顔になる。


(ごめんね?俺のために考えさせちゃって)


 内心で空宮に謝りながら、空宮の答えを待った。


「そうだねー。花火見る前にも言った通り、泊まるまではいかなくても、一旦私の家で待機しようか。それからは家に着いてから決めるってことで」

「了解。なんか色々とすまんな」

「いいよ全然。幼馴染同士なんだから助け合わなくちゃ」


 空宮は笑顔でそう言ってくれた。

 いや、それにしてもだ、一旦は空宮の家にお邪魔せにゃならんのか。しかもこの時間帯。前行った時はそこまで時間は遅くなかったけど、今回はもうかなり時間が経っている。迷惑にならないといいけど……。

 少し不安も抱えつつ歩みを進める。



✲✲✲



 駅から10分程歩いた所で空宮は歩くのをやめた。

 家の前に着いたのだ。


「なんか緊張する」


 そう言うと空宮は笑った。


「何で?前来た時は全然緊張してなかったじゃん」

「いやいや、今回は前回とは少し状況が違うぞ?」

「どこが違うの?」

「簡単だ。現がいないこと。あいつがいるのといないのとでは、雲泥の差程あるからな!?」

「えー、そんなに〜?」

「そんなにだ」


 家の前に着いたのにも関わらず、そんなやり取りを思わず数分してしまう。しばらくすると、急に空宮の家のドアがガチャりと開いた。


「蒼ー、外で喋るんじゃなくて家に上がってから喋りなさいよー」

「わっ!?びっくりした」


 中から出てきたのは空宮のお母さん。何度見ても思う。相変わらず若いなおい。


「そんなにびっくりすることもないんじゃないの?お母さん悲しいよ。シクシク」

「お母さん若くないんだから、泣き真似なんて若い子がするようなことしたらダメだよ」

「なぁっ!?お、お母さんはまだまだ現役ですー!全然いけますー!」


 空宮親子はそんなやり取りをする。

 なんだかデジャブ感がすごい。


「はぁ……。まぁ、刻ひとまず家に入ろっか」

「あぁ、そうさせてもらう」


 軽くそんなやり取りをすると空宮宅に入る。

 俺は靴を、空宮は履いていた草履を脱いで部屋に上がった。


「じゃあ刻くんはソファにでも座ってゆっくりしていってね」

「はい、そうさせてもらいます」


 おばさんに言われた通りソファに座った。


「じゃあ私はお茶取ってくるー」

「あ、いや別に大丈夫……って聞いてないな」


 空宮は俺の言葉には特に聞いておらず、タターっと少し小走り気味にキッチンまで行ってしまった。


(さて、こっちはこっちで現に文句の一つや二つは言ってやらないとな)


 巾着袋の中からスマホを取り出すと、LINEを開いて現との個別チャットの画面に移った。


『現今いいか?』


 俺がそう送ると数秒もすると既読の文字が着いた。


『どうしたの刻兄?まるで告白する時みたいな言い方だけど。あ、もしかして禁断の恋?しちゃう?やっちゃう〜?』


 現から届いたのはアホみたいな文。


(この子は一体何を言っているのやら。実の妹に恋心を抱く奴は中々やばいからな?シスコンとはまた訳が違うぞ?)


 そんな事を思いながら返信する。


『禁断の恋はしないぞ。そんな事より俺って今日は家に入れてもらえない感じ?』

『え、そうだよ?』


 現はさも当たり前かのようにそう返してくる。


(この子小悪魔なのかしら?)


 そんな風に思いながらも、最後に返事だけ送信しておく。


『了解。今日は何とかやり過ごすから明日覚えとけな?』


 シンプルな文面でそう返すと、スマホの画面を消す。送ってからすぐにブルブルとスマホのバイブが震えたが俺は特に気にしなかった。


(まぁ、多分あれだろ。俺が予想以上にシンプルに返したから、まじで怒られるとか思ったのかな?まぁ、しっかり怒ってあげますけどね)


「刻お茶持ってきたよ〜」

「サンキュ」


 俺は空宮が持ってきてくれたいい感じに冷えている麦茶をぐいっと飲む。


「ふぅ」

「それでどうなった?」


 空宮が俺に突拍子もなくそう聞いてきた。


「ん、何が?」

「何が?ってお家に帰れるのかどうかって事。ほら、今現ちゃんとLINEしてたでしょ?」

「あぁ、それか。それについてはな、現のやつが今日は帰ってくるなって」


 空宮にそう言うとキッチンの方からおばさんが顔を急に出してこう言った。


「じゃあ今日は泊まっていけば?」

「マジですか?」

「マジよ?」

「お母さん?」


 俺達の間に流れる空気は凝固する。

 一体俺は今日の夜どうなるのやら。


第58話終わりましたね。女子高生の幼馴染の家にお泊まりってどんな感じなんだろ。と思った今日この頃です。

さてと次回は17日です。お楽しみに!

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