第570話.土曜日の夕方
湯気の立つマグカップが3つテーブルの上に並ぶ。
テーブルの周りを囲うように3人して座りながらまったりとお喋りの時間を過ごしていた。
話す話題はクリスマスの事と、卒業した後のこと。クリスマスの内容は具体的だけれど、卒業後のことはふわふわとした中身の薄い内容だ。
マグカップの中にあるコーヒーを時折口に含みながらふぅと息を吐く。
「凛は最近上木くんとはどうなの?」
「ん、仲良しだよ?この前もカフェ巡りしてきたし」
「へ〜。楽しかった?」
「うん。ケーキもいっぱい食べたよ」
「良かったね〜。私も刻とカフェ巡りしよっかな」
「であればカフェ黒木に行ってみてはどうですか?クリスマスメニューが新しく出てるみたいですよ」
ユウからそう言われて私は尋ねる。
「どんなメニューがあるの?」
「サンタさんをイメージしたいちごと生クリームをふんだんに使ったショートケーキに、お供のトナカイをモチーフにしたチョコレートケーキ。あとはクリスマスのツリーをイメージした抹茶と色とりどりアイスのパフェがありますね」
「おぉ、カフェ黒木はクリスマスも本気だね」
「ですね。秋の味覚イベントもモンブラン関連が多く出てて楽しかったですよ」
カフェ黒木のファンであり常連であるユウによる黒木情報に耳を傾けながら土曜日のお昼が過ぎていく。
✲✲✲
2人が帰っていくのを見送ってから、少し経って入れ違いのように帰ってきた刻を迎え入れた。
ギューッとハグをしてからリビングに戻る。
刻は朝から夕方までバイトに行っていたので少し疲れた様子だ。
「今日は映画見に来る人多かった」
「土曜日だからね。大変だったでしょ」
「うん。まぁ休憩もあるし、めちゃくちゃ大変ってわけではないけど、じわじわ体力を削られはするよな」
ソファにぼすんっと腰掛けるとググーっと伸びをする。
「お疲れ様」
コーヒーをコトッと置いてあげると隣に腰かける。
「後で肩揉んであげようか?」
「いいのか?」
「うん。それで刻が少しでも楽になるならいくらでもしてあげる」
「じゃあお願いしようかな」
刻は嬉しそうに笑いながらコーヒーのマグに手を伸ばす。
ゆっくりと飲みながら深く息を吐くと「美味し」と呟いた。
インスタントなので基本誰が作っても同じ味にはなるが、けれどそれでも私は刻が美味しいと言ってくれるだけで嬉しくなってしまう。
どうしたって私は刻に惚れているのだ。
刻が何かを言ってくれるだけで、私はこうして嬉しくなってしまう。
第570話終わりましたね。現実世界ではハロウィンが近い今日この頃です。作者は一足先にユニバでハロウィン気分を味わってきましたが、小さい頃のようにお菓子を貰って歩くイベントに、また参加してみたいですよね。
さてと次回は、31日です。お楽しみに!
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