第557話.PhotoClubのルーキー
PhotoClubに入部してから早数ヶ月になる。
最初は小笠原さんの付き添いのような形で入部したが、今ではすっかり馴染んでしまっていた。
カメラも何とか用意することが出来て、今ではそれでしょっちゅう写真を撮っている。小笠原さんも負けず劣らず写真を撮りまくっているようだ。ただあまり上達しないと嘆いていたな。
俺からすれば十分上手いように見えるし、何より江草先輩も褒めていた。江草先輩は中学の頃から趣味で写真を撮るような人だったからその実力は折り紙付き。その人が上手いというのだから少なくとも下手ではないはずなのだが、それでも小笠原さんは納得が行かないような表情なのだ。
人それぞれに妥協点というか、ある程度の合格ラインというのを設けているのだろう。小笠原さんの場合はそれが高いというだけの話なのだろうが、俺の場合はそこまで厳しくないので、そこまでして高みを目指そうとする態度には関心しかない。
今後は俺と小笠原さんがこのPhotoClubを引き継いでいくのだから、俺自身もある程度は実力を身につけねばならぬと思って最近では散歩をしながら写真を撮るなんてことをしてるのだが、これがなかなか難しいのだ。
そもそもの話、普通の街中を一眼レフを持って撮ろうとしていると普通に目立つのだ。まずそれがなかなか嫌であるということ。加えて人通りが多くなってくると人の波にも気をつけながら撮らなければならない。写真なんて全力で集中して撮ってやっといいものが撮れるかどうかなのに、そんな中で人の波なんて気にしていたらいいものが撮れるわけがない。
そんなこんなで、俺は人通りの少ない場所に最近は足繁く通ってそこで写真を撮っているのだ。
ただ今までは1人で行っていたのだけど、どういうことかこの人も着いてきてしまったのだ。
「君嶋くん、こんな場所知ってたんだね」
「まぁ……良さげな場所探してた時に偶然見つけただけだけど。……というか小笠原さんは何しここへ?」
「君嶋くんに着いてきただけだけど?」
「い、いや……だからその理由が知りたいのであって」
「……理由がなきゃダメ?」
「いや、そういう訳じゃないけど……ただ疑問に思っただけで」
「そ?疑問に思っただけなら気にする必要は無いかな」
少しはぐらかされたような感覚を覚えたが、これ以上聞いても何も言ってくれなさそうだ。
気にはなるが、ここは切り替えが大事。俺は近くに止まっていた蝶を見つけると、そこにピントに合わせて写真を一枚撮る。
うん、前まではぼやけてたのが、今ではくっきり写っていい感じ。
確かな上達に微笑みながら俺はまた写真を撮るのだった。
第557話終わりましたね。みなさんは趣味がありますでしょうか。作者は競馬が好きですね。推し馬は当然いますが、今週はそのうちの一頭、ソングラインという子が毎日王冠で走りますので是非皆さん応援してあげてください。
さてと次回は、5日です。お楽しみに!
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