表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/700

第55話.待ち時間

 りんご飴片手に俺達は賑わっている屋台を見て回る。

 周りには親子や友達同士の高校生、カップルなどが沢山いる。


「あま〜い」


 隣では空宮が満面の笑みを浮かべながら、りんご飴を味わっていた。


「ぶどう飴もなかなか美味しいぞ」


 そう言うと空宮はりんご飴を舐めながらこちらを向いた。


「そうなの?」

「あぁ。瑞々(みずみず)しくて美味しいぞ」

「へー、じゃあ後で食べよっと」


 空宮はそう言ってまたりんご飴を食す。どうやら本当にりんご飴が好物のようだ。先程から焼きそばとか唐揚げとかのいい匂いがしてるのに、そちらに顔を向けようとすらしないのだから。

 先にぶどう飴の入っていた袋を近くにあったゴミ箱にポイッと捨てると、りんご飴を食べ始める。


(俺達さっきから飴しか食ってないな。よし、焼きそばも後で食べよ)


 焼きそばを食べるとそう心に誓うと、りんご飴の甘さに舌鼓を打った。


「やっぱり、りんご飴美味しいな」


 ボソッとそう独り言を呟くと、それに空宮がすぐに反応する。


「でしょでしょー!この甘さがね良いんだよ!しかもりんごをまるまる一個使うっていう、この贅沢。やめられないんだよねー」

「お、おう……」


 思ったよりも空宮に饒舌に語られた。普段はアホの子丸出しなのに、なぜだか本当にいつもより饒舌。


「ただ、りんご飴に唯一ダメなところがあるとするなら……」


 顎に手を添えながら少し考える仕草を見せた後に空宮は批評をしだした。


「そうだね。それは水分が少なすぎることだね」

「あー、確かにそれは分からんでもない。パサパサってほどではないけど、水分は物足りないよな」

「そう、そうなんだよ。その点ではぶどう飴は本当に水分たっぷりでいいよね」

「そうだな」



✲✲✲



「ここら辺ならよく見えるかな?」


 空宮は俺の手を引きながらたくさん人がいる中でも、大人サイズの人が2人座れる場所を見つける。


「見えるんじゃないのか?周りに大きい建物がある訳でもないし、なんなら開けてる場所なわけだしさ」

「そうだといいな〜」


 そう言いながら、先程のりんご飴のおじちゃん店主に頼み込んで譲ってもらったダンボールを下に敷いて座り込んだ。


「刻も座れば?」


 空宮はトントンと空宮の横を指で叩きながら、俺に座るのを勧めてくる。


「あぁ、そうさせてもらう」


 そう言うとゆっくりトンとダンボールの上に座った。


「今日何発ぐらい花火上がるかな?」


 空を見上げながら空宮はそう聞いてくる。


「何発ぐらいだろうな」


 そう言いながら巾着袋を開きスマホを取り出して調べ始める。

 『神戸花火大会何発?』と入力したら、あとは虫眼鏡のアイコンをタップして調べるだけだ。

 調べて1秒も経たずに出た検索結果を見て驚愕した。


「空宮」

「ん?な〜に?」

「一万発上がるってさ」

「え、一万発?本当?」


 空宮は驚いたのかこちらを見ながら、真実かどうかを俺にもう一度問うてくる。


「本当らしいぞ」

「ひゃー、花火をいっぱい見れるってことかぁ」


 空宮は楽しみそうな笑顔を浮かべると、急に空宮の巾着袋の中からスマホを取り出した。そして取り出したかと思えば、横にいる俺にさらに近づいてくる。


「え、どうした?」


 空宮にそう聞くと空宮は笑顔でこちらを向きながら口を開いた。


「写真一緒に撮ろうよ」

「え、別に俺はいいんだけど」


 ついつい反射的に俺がそう言うと、空宮は不満そうに口を膨らませる。


「むー、別にいいじゃん。私と刻の思い出の一枚ってことでさ、撮らせてよ」


 空宮はそう言って引き下がろうとはしない。俺は俺で1度断ったものの、よくよく考えれば拒む理由がほとんど、というか全然ないことに気がついてしまった。


(あれ?これって撮らないといけないパターンのやつじゃん)


 そんな事を思いながらも渋々口を開く


「分かった、でも一枚だけだぞ?」

「やったー!」


 俺がそう言うと空宮は可愛い笑顔を浮かべて喜ぶ。


(凛の時も思ったが、俺とのツーショットってそんなに嬉しいか?別に大した価値ないと思うんだけど)


「刻ほらこっちにもっと近づいて」

「はいはい」


 俺は空宮にさらに近づく。すぐ右隣にいる空宮からはシャンプーの良い香りがした。

 空宮はスマホのカメラを内カメ状態にして、画面を俺達の方に向ける。


「じゃあ、刻撮るよ」

「あぁ、いつでもどうぞ」

「はい、チーズ!」


 スマホのカメラの音がピピッと響き、写真が撮られた。

 先程取られた写真には満面の笑みを浮かべた空宮と、やはり少しぎこちない顔をした俺が写っている。

 空宮は撮られた写真を確認すると、撮る前と同じくらい嬉しそうにしていた。


「刻この写真いる?」


 空宮は俺に上目遣い気味にそう聞いてきた。


「いや別にどちらでも」


 俺がどちらともつかない曖昧な答えでその場を濁そうとすると、空宮はしばらく考える。


「うーん、じゃあそうだな〜。送るだけ送っとくよ!」


 空宮はそう言うなりすぐにスマホをまた開き、LINEを使って写真を俺に送信してきた。


「刻ちゃんと大切にしといてよね!間違っても消さないでよ」


 空宮は念を押すように俺にそう言うとスマホで時間を確認し始める。

 俺はその様子を横目に見ながら、写真を眺めた。


 間違っても消さないでよ、か。


 俺はその写真を保存すると、間違って消さないようにしっかりとロックをかけた。


第55話終わりましたね。多分次回花火が打ち上がります。多分というか、絶対ですね!

さてと次回は11日です。お楽しみに!

よろしければブックマークと☆もよろしくお願いします!増えれば増えるほど、作者は元気になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ