第541話.彩芽さん
映画館でのバイトは主に接客と清掃等の二つの作業に分かれる。基本的にはどちらの作業も行い、他のバイトと入れ代わり立ち代わりでやっていくのだ。個人的には清掃が一番楽でいいのだが、ごく稀にポップコーンが盛大に散乱している時はさすがに顔を顰めてしまう。
「彩芽さん、交代です」
「あーい。鏡坂くん頼んだよ〜」
バイト先の先輩にあたる彩芽さん。大学2年生で気だるそうな雰囲気が特徴の人だ。ただあくまで気だるそうというだけであって、こなす仕事は全て完璧で、お客さんに対する対応も目を見張るものがある。困った時はこの人を頼ればいいと、上司に言われるくらいだ。
「ねー。ポップコーン余ってたかな」
「確か少しだけあったかと」
「んー、分かった」
「あ、塩味は無いのでご注意を」
「んぇー……しょうがない、キャラメルで我慢しよ」
ただし、彩芽さんは裏ではガッツリだらけちゃう人なので、休憩室ではよくポップコーンをパクパクと食べているのだ。
「彩芽さん可愛いよな。な、そう思うよな鏡坂」
「まぁ、確かに綺麗な人ですよね」
「だよなぁ。彼氏とかいるのかな」
「それは彩芽さんに直接聞いてください」
「俺にそんな勇気があるとでも?」
「知りませんよそれは」
もう1人の先輩。名前はまだ覚えてない、からそう言われたので俺は適当にそう返す。悪い人ではないのだが、絡みが面倒くさいので出来ればあまり関わりたくないのだ。
「あー……彩芽さんと付き合えたらなぁ」
「告ったらいいじゃないですか」
「振られたら怖いだろ。鏡坂にはこの怖さ分かるのかー」
「俺は彼女いるんで、もちろん告白してますよ」
「……裏切り者かよぉ」
ガクッと項垂れる。
こちとら先輩の彼女欲しい事情なんて正直どうでもいいので、気にせず次来るお客さんの様子を眺めることにする。
確かに彩芽さんは綺麗な人だ。ウルフカットのダウナー系で、白い肌が特徴的な人。同じ空間にいたらあの人の周りだけ空気感が違うような、そんなオーラさえ感じさせる人だ。正直、こうしたバイトとかの繋がりがないと俺は関わることすらないようなタイプの人。まぁ、大学に入ればどの道そんな人ばかりだろう。
ともかく、彩芽さんは綺麗で、先輩の彼女欲しいのは知らんという事だ。うん。
第541話終わりましたね。彩芽さんという新キャラがサラッと出ましたが、何気に初めての大学生キャラなのではないのでしょうか。凛と蒼が快活系、華山が清楚系と今までダウナー系といったキャラがいないので考えるのはなんだか新鮮ですね。あ、緋山さんはヤンキー系(冗談です)です。
さてと次回は、3日です。お楽しみに!
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