第539話.くじ引き
ランニング帰りにコンビニに寄った。元々アイスと飲み物を買うだけの予定だったのだが、ふと入ってすぐのところで足を止めてしまう。思わぬものが視界に入ってしまったからだ。
「ラストワン賞まであと5枚……」
そう、俗に言う一番くじと呼ばれるものだ。アニメやゲームのグッズが景品になっていることが多く、どうやら今は世界的に有名な日本のゲームの最新作が対象らしい。
俺は俗に言うミーハーに近いところで、このゲームシリーズの過去作を一度のめり込むほどにやっていたことがある。なので一定の知識があるわけで、だからこそ最新作のPVを見た時はあの頃を思い出すような感覚にも襲われたりした。
そして今俺の目の前にはそのゲームのグッズが手に入る一番くじがあるわけだ。しかも残り5枚。一番くじの面白いところは、A賞と同等かそれ以上のレア度を誇るものがあるというところだろう。それがラストワン賞だ。そのラストワン賞まであと5枚となると、余計に疼くだろう。
俺は財布の中身を確認するために開いてみる。顔を出したのは野口さん数人と樋口さんが1人だ。この段階でラストワン賞まで引くのは可能ということが分かった。しかし、しかしなのだ。1枚引くだけで軽く700円が飛ぶのは少々痛すぎる。トータルで3500円強かかるわけだ。
腕を組み本来の目的であるアイスと飲み物の事なんかすっかり忘れて俺は本気で悩む。もう夕方も夕方で、日もかなり落ち始めている。早めに帰らないと蒼が寂しい思いをしてしまうので、俺は一大決心ということでアイスと飲み物は諦めてくじを選ぶことにした。
✲✲✲
「ただいま」
「おかえり〜」
キッチンの方からいい匂いがして、蒼はリビングに通ずる扉の袖からひょこっと顔を出して俺にそう返してくれる。
「うわっ、何その両手に持った大きな袋」
「あー、これ?」
俺はそう言いながらガサゴソと中を漁って中身を見せる。
「コンビニの一番くじ引いたらさ、A賞とラストワン賞が当たったんだよね」
「へ〜。フィギュア?」
「そうみたいだな」
「結構大きいんだね。どこに飾るの?」
「うーん、玄関とか?」
「あー、確かに棚の上にスペースあるし丁度いいかもね」
蒼はうんうんと頷きながら、あっ!?、と言ってキッチンの方に引っ込んだ。遠くからはセーフ、という声が小さく聞こえてくる。多分目を離した隙に何かがどうにかなったのだろう。
俺は手助けをするために靴を脱いでリビングの方に向かうのだった。
第539話終わりましたね。一番くじを作者は引いたことがありませんが、非常に興味引かれるものはありますよね。バイトに行く前によく寄るコンビニにもあるのですが、そこもラストワンまであと26枚とかなんですよね。……高すぎますね。
さてと次回は、30日です。お楽しみに!
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