第535話.映画館の面接
面接を終えて帰ってきた。
普段利用する時の裏側に潜入したようで何だか不思議な感覚がしたのを覚えている。
映画館のスタッフルーム。そこにて俺はバイトの面接をしてきたのだ。映画館でのバイトは非常に人気で、倍率も高い。そんなところが偶然募集しているのを見つけたら応募しないのは損だろう。
とまぁ、面接に通ったのか動画までは定かではないが、とにかくそういった事があったという話だ。昨日は蒼がスーパーにバイトの面接に行っていたし、運が良ければ2人ともバイト先を見つけれるということになるだろう。
にしても、面接の待合室に俺以外にも若い人が何人もいたな。おそらく全員映画好きなのだろうか。映画館でバイトをしていると、その映画館で映画を見る時に色々と優遇してくれる面があるので、映画好きならなおのこと受かりたいはずだ。
とは言っても俺も映画好きのその1人。そう簡単にバイトの空いた席を譲るわけにもいかないのだ。
「刻おかえり。面接どうだった?」
「んー、まぁ普通。応募者がめっちゃいるって感じでライバル多数かな」
「あー映画館って人気って言うもんね。あとスタバも」
「そうそう。若者受けのいいバイト先は若者で埋まってるんです」
なんて話をしながら俺は荷物を置く。
キッチンの方からは蒼の作る料理のいい香りがしてきた。そんな素晴らしくいい香りに思わず鼻腔をくすぐられつつ、俺は急ぎ足で風呂場に向かった。
✲✲✲
受かれば万々歳な映画館のバイト面接な訳だが、そもそもとしてうちの高校ではバイトが許可されているのかという話になってくるだろう。
結論から言えば原則禁止である。しかし、羽挟先生を含め、俺と蒼が双方の両親の合意の元、特殊な環境で暮らしている事は承知している。加えて、バイトする理由は親の仕送りに頼りすぎないようにするためという至極真っ当なもの。羽挟先生からの打診もありこうしてバイトの許可が出たわけだ。
素直に羽挟先生マジ感謝と心の中で南無三と合掌する。
とはいってもだ、俺達はあくまで高校生。大学生ほど働ける時間が長いわけでもなく、そもそもバイトに入れる日数もそこまで多いわけではない。だから他の高校生よりお金に余裕があるのかと尋ねられれば、実はあんまり大差なかったりするのだ。
「ま、蒼とのデートのために頑張って稼ぎますけどね……ぶくぶく」
湯船に沈んでいき、最後に思い切り顔を外に出てそのまま上がる。
急激な温度変化のせいか頭がクラクラするが、そこは気にせず生きていこう。
第535話終わりましたね。さて、前回謎だった刻のバイト面接先は映画館でした。刻の受けた映画館と蒼の受けたスーパーは入っている建物が同じなので、もしかしたらタイミングが合えばバイト帰りも一緒なのかもしれませんね。
さてと次回は、22日です。お楽しみに!
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