第528話.二人の手助け
ステージの上に立って下にいる人達を見下ろす。下から見ていた時も十分に人がいるとは思っていたけれど、こうしてみてみると、その予想を遥かに上回る数に驚かずにはいられない。
生徒会長の進行を待ちながら、私はステージ下にいる刻に手を振る。刻もそれに応えて手を振ってくれる。刻の周りにいた人は私が誰に手を振っていたのか分からなかったらしく、一時、もしかして俺に手を振ってるのかな?といった様子の男の子が何名か出てしまった。まあ、すぐに刻に手を振っていたのだと分かると、いやいや、勘違いなんかしてませんよ?といった表情になるので見ていて面白い。
「さて、みなさん準備の方はよろしいでしょうか。今から詳しい説明の方をさせていただきますね」
会長はマイクを片手に、そしてもう片方の手には説明用の紙を持って話し始める。
簡単に会長が説明したルールをまとめるとこういう事らしい。
まず、この巻き込み型イベントで主にするのはクイズ大会であると。そしてその大半の出題範囲はこの山海高校に関する内容。そして巻き込み型である一番の理由は、こうして観客から回答者を選出したのもそうだが、何よりも回答者に選ばれた人の友人も後々回答の手助けをする役として参加させることが可能なのだ。ゆえに巻き込み型ということだ。
私はこの説明を受けた後に刻の方を見る。
この説明通り行けば私は刻の事を手お助けマンとして呼び出すことが可能だ。どこからか、刻とは恋仲なのであって友達ではないだろー!!という意見も聞こえなくもないが、恋仲以前に私達は幼馴染で友人なのだ。なのでこのルールは私達にはしっかり適用される。いや、適用されなければならないのだ!
ちなみにステージ下からこちらを見る刻は嫌そうな顔をしている。そんな露骨な表情出さなくてもいいんだよ?と思いつつ、そんなに嫌ならなおのことステージの上に上げてやろうではないかという気概になるのだ。
そんなこんなで始まった第一問目。第一問目は第一問目らしく簡単な内容。校歌の二番目の最初の歌詞、三択のうち正しいものを一つ選べというもので、これは誰もお助けを使うことなく正解していた。
ウォーミングアップはこれくらいに、といった具合で始まる第二問目。次の問題は今年の四月に結婚した教員を答えろという問題だった。今回のは三択ではなく、各々の情報網に頼る問題だ。しかし私はこれになんなく答えることが出来る。何せ今年の四月に結婚したのは他でもない、私の担任である羽狭先生だ。自信満々に答えてここは安全に一点を勝ち取ることに成功する。
さて迎えた三問目。今回は急に難易度が上がった。生徒会が独自に調べたデータに基づいて作られた問題で、この高校内に存在するカップルの数を答えろというものだった。どうりで文化祭の始まる一週間前に変なアンケートが届いたわけだ。さて、この数の中には当然私と刻のカップルも含まれている。それも踏まえた上で、現段階で私が把握しているのは、雪のところと江草ちゃんのところ。あとはその他の三年生のみ。逆に言えば二年生と一年生の情報がほとんどと言ってもいいほど入ってこない。こんなものどうやって当てればいいのか、と思うがこんな時のお助けマンだ。私は刻のことを呼び出し助けを求める。
「カップルの数分かる?」
「分からん」
ノータイムで返されるその言葉。あまりにも無慈悲、とは思うがそれも仕方がない。何せ私が知らないのに、私より情報網薄めの刻が知るはずないのだ。ということで、時を読んだ本当の理由をお教えしよう!!
「刻、私のスマホある?」
「あるけど」
「借りるね」
「あ、うん。何か調べるのか?」
そう尋ねられたので私は調べるというか、呼び出すというか?と戯けながら話した。
見つけた。私は連絡先の一つを使ってとある人物を2人この場に召喚する。2人ともステージ下から見ていたようで、すぐに来てくれた。
「よく来てくれたよ、江草ちゃんに舞ちゃんっ!」
私の頼りになる後輩ちゃん達である。
第528話終わりましたね。なぜ、江草と小笠原なのか。それは何となく察することが出来ると思います。えぇ、蒼が把握していないのは一年生と2年生のカップルの数ですから。この2人はそれぞれの学年の生徒ですからね。何となくしたいことはわかって貰えると思います。
さてと次回は、8日です。お楽しみに!
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