第526話.私の妹?
刻は私のように表示詐欺を受けることなく、純粋なラブコメ漫画を見つけることが出来ていた。お互いに面白そうなものを見つけることができたことに満足しつつ、お家に帰ったら一緒に読もうと約束する。
美術部作成のオリジナルイラスト付き紙袋に漫画をしまいつつ、私達はその後も色々と見て回っていた。
何個かお店を見回った後に人の流れが急に変わり始めたのを体感で感じる。なんだろうと思って、流れの方向の先を見てみると、その先には刻達が手掛けたステージがあった。
そういえば、ステージでの巻き込み型のイベントってもうすぐスタートだったっけ。
今日の日程を思い出しながら納得すると、刻の手をくいっと引っ張った。
「私達もあれ見に行かない?」
「ステージのやつ?」
「うん。刻も頑張って作ってたし、それが使われるところも見たいでしょ?」
「まぁ、それはそうだな」
納得したように頷くと、今度は刻が私の手を引いて歩いた。
人の波に従いながら少しずつ前の方に行くと見やすい場所に着く。スタートするまでの時間は軽快なBGMが流されていて、それで少しの間は時間稼ぎをするようだ。にしても、観客巻き込み型のステージとは一体何をするのだろうか。あくまでイベントの主体は生徒会任せなので、私達はその内容まではよく知らない。なので、ワクワクドキドキとした気分で待つこととする。
周りにいるのは下の学年の子達なのか、初々しさが残る1年生と1年経って慣れた仕草の2年生は見ていて可愛らしい。私はお姉さん的な立場でそんな子達を見守りながら、そういえば最近は現ちゃんと会ってないなぁと思う。刻の妹で、私の幼馴染にも当たる可愛い子。私の事を蒼姉と呼んで慕ってくれるから、兄弟のいない私にとっても可愛らしい妹みたいなものなのだ。
「現ちゃん、元気かな」
隣に立つ刻に私は尋ね聞く。
「LINEしてる感じは元気そうだぞ。定期的に蒼に会いたいってメッセージが来るしな」
「そうなの?」
「あぁ。ただ、時期が蒼の受験時期に被ってたから一旦保留にさせといたんだけどな。それも終わったし、別に言ってもいいかなって」
「へ〜、なら久しぶりに会おうかな」
「ん、じゃあ現にはそう連絡しとく」
「うん。そうだ、現ちゃんを私達のお家に呼ぶのはどうかな?」
「マンションに?」
「うん。多分、間取りとかは写真越しでは見たことあるだろうけど、実際には来たことなかったでしょ?だからこの機会に遊びに来て欲しいなぁって思ってさ」
「なるほど。じゃあ、それも加えて連絡しとく」
刻は頷いてシュシュシュッとフリップ操作をした。その後、画面をタップして送信したらしい。
「現は多分授業中だから既読が着くのはもう少しあとだと思うけど、それまでは気長に……」
「ん?急に黙ってどうしたの?」
「あ、いや……現からいつ行けばいい?ってメッセージが音速で返ってきただけ」
「あれ、授業中なはずじゃ……ま、まぁいっか」
「そう……だな。俺達が気にしてもしょうがない」
うんうん、気にしない気にしなーい。
私達はそうして2人してそう言い聞かせ合う。
そうこうしているうちにマイクを持った生徒会長がステージ上に現れた。どうやらイベントの始まりらしい。
第526話終わりましたね。現のことを蒼は妹と思っているように、現もまた蒼のことを姉だと思っています。血の繋がりはないけれど、本当の姉妹のように仲がいい2人なのです。
さてと次回は、4日です。お楽しみに!
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