第521話.パワー系の彼氏さん
お客さんとして訪れてくれた江草ちゃん達を見送ってから、私は休憩に入ることにする。今日も今日とて何とか捻出したフリータイム。刻のフリータイムと全てが重なっているわけではないが、一部同じタイミングで休みが出てくるので、その時は一緒に回ることとなっている。
昨日はあまりグラウンドの方に出ているお店や遊べるブースには行かなかった。なので今回のメインはどちらかと言うと中庭の方よりもそちらとなるだろう。
グラウンドの方は開けた場所が多い分、広い空間を要することや、かなり大きな道具を使わなければならない飲食物を提供したりするクラスに重宝されている。
ただその中でも最も目立って、なおかつ最も大きいイベント事と言えば、観客巻き込み型のイベントだろう。このためだけに文化祭実行委員の主に男の子達と生徒会のメンバーでステージを作り上げていたのだ。もちろん刻も参加している。
安全性のために丈夫な木材や鉄パイプで基礎を作り、理系の子達によって彩られる電飾など結構な大掛かりなもので、作業の度に刻は死にそうな顔をしながら帰ってきていた。
筋トレを再開させて大分経ったからなのか、刻は初めて見た人でも筋肉があるのが分かるようになってきている。そのせいか、よく力仕事に回されるそうだ。ステージ建設組の中でも、主に鉄パイプや、太い木材を大量に運ぶらしい。
ちなみにだが、実行委員の女子組は休憩のご飯を作ったり、運んだりといったサポートで活躍していた。お腹がすいた男の子達は、一瞬でおにぎりなどを平らげていくので見ている時はただただ圧巻だったのを覚えている。
かくいう刻は1人で隅の方に行きマイペースに食べていたりした。みんなと食べればいいのに、なんて思いながら、私はお茶の入ったペットボトルを刻に届けて一緒に座っていたのだけれど。
なんだかんだ言って、過酷そうだったけど、刻もあの作業自体は楽しかったらしい。曰く、勉強のことを忘れられるからだそうだが、それはまぁ置いておくとしよう。
ともかく、グラウンドのステージは刻達による汗と涙の結晶で出来上がったものだということだ。
裏方での休憩を程々に私は外に出る。
一階の自販機でレモンティーを買うと秋の風吹く中でクピクピと飲んだ。
ぷはぁと息を吐きながら私は校舎の柱に背を預けた。
「刻の休憩時間、まだかなぁ」
独り言ちながら、鼻歌を歌ってほんの少しの寂しさを誤魔化す。
周りを歩く人は友達や彼氏彼女で回っていて楽しそう。私だってこの後彼氏と回るんだぞ、と内心では思ってみるものの、この場にいないからなんとも負け犬の遠吠えのような感じが抜けない。
第521話終わりましたね。刻の体はかなり筋肉質になっております。はい、ムッキムキのバッキバキな肉体が着痩せしやすい服の内側に潜んでおります。蒼だけがそれの全てを見れるんですね。羨ましいですね。
さてと次回は、25日です。お楽しみに!
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