第520話.おすすめのケーキ
先輩達のクラスに着く。
さすがは昨年の文化祭覇者達が集まったと言ったところか。人気度は計り知れず、基本的に列が出来上がっている。
列の最後尾に並んで待っていると人数を確認しに来た蒼先輩と目が合った。すぐに私達の存在に気がついた蒼先輩はテクテクとこちらに歩を進めてくる。
「江草ちゃん達も来てくれたんだ!」
「はい!昨日は先輩達が来てくれましたから、今度は私達が行かないと、って思って!」
嬉しそうに笑いながら蒼先輩は私の言葉を聞いてくれる。
「うんうん。あ、そうだ、まだ少し待ちそうだからさメニュー表だけ先に渡しておくね」
「ありがとうございますっ。ちなみにおすすめとかってあります?」
「おすすめはねぇ、基本全部いいけど、チョコケーキが個人的には一推しかな。凛の考えたデザインだから、綺麗だし可愛いよ!写真映えもするし、女の子には特におすすめ」
さすがは凛先輩だ。常日頃から趣味でスイーツを作っているだけある。知識とスキルがどんどんと上書きされて、よりいいものというのが凛先輩の中に生み出されていくのだろう。
私は蒼先輩のおすすめするチョコケーキに決めて今度は秋にも決めてもらう番だ。何年もの付き合いとなる私と秋だが、実は秋の好きなスイーツというのは案外知らなかったりする。だからこの機会に知っておくのもいいかもしれない。
「秋は何にする〜?」
「俺はだなぁ……ショートケーキ。いや、フルーツケーキも外せないな。それとも素直におすすめのチョコケーキにするのがマストか。悩むぅ……」
「チョコケーキは私の分けてあげれるから、他のにしたら?交換もできるよ」
「あ、確かに」
納得したように頷くと、あとはどちらにしようかな、と指を順番に差して選び始める秋だ。結局最後は確率に任せるという方式。今までの悩んでいた数分は何だったのかとは思いつつも、これで決まるのならばそれはそれでいいと思う。
ところでだ、残すところ数時間と後夜祭だけとなった文化祭で蒼先輩は先輩とは一緒に過ごさないのだろうか。たしかに昨日私達のクラスに遊びに来てくれたが、まさかその時間しか2人きりになれないというのもあまりにも寂しい気がする。聞けば2人とも実行委員でなおかつクラスの中心的役割もになっているらしい。ゆえにかなり忙しいらしいのだ。
多忙なのは理解するが、それで2人の時間が無くなっていいというわけではないと思う私は、どことなく複雑な気持ちに少しなる。
2人には出来るだけ沢山思い出を作って欲しいから。
まぁ、それを今この場で聞けるほど先輩も暇じゃないのでここでは言わない。
言う前にまずはケーキを楽しまなければ。
第520話終わりましたね。作者はチョコケーキが一番好きですが、みなさんは何が好きでしょうか。ショートケーキは生クリームがあまり得意では無いので好んで食べることは無いのですが、いちごは好きなのでそこだけはいいなと思ったりします。
さてと次回は、23日です。お楽しみに!
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