第510話.おはぎとお団子
刻と話す内容はいたっていつもと変わらない。普段通りで、一番リラックス出来るお喋りだ。
「江草ちゃんの服装って自分達で作ったのかな」
「どうだろう。クオリティが高いから正規品の可能性もあるけど、卓越した技術の持ち主もいるかもしれないしな。聞いてみないことには」
「だねぇ。もしあれを作れる子がいたら教えてもらいたいよ」
私が目指すのはなんでも出来る女性なので、裁縫能力が卓越していても損することは無いのだ。それに保育士とか幼稚園の先生を目指すなら、裁縫はむしろ出来た方が圧倒的にいいだろうしね。それに将来的に主婦となった時も困らない。
話は変わるが今日の文化祭は4時までの開催となっている。今が1時なのであと3時間ほどだ。明日も明日で忙しいので今日は出来るだけ楽しみきっておかないと勿体ない。明日も遊べないわけではないが、やれることは早いうちにだ。それに明日は後夜祭が開催される。そちらの為にも明日は仕事に集中して後夜祭の時には仕事が無い状態にした方がいい。
「ここの後はどこ行く?」
ふと私は尋ねる。
「んー……ご飯系はもういい気がするから、3年のお化け屋敷とか行ってみるか?」
「お化け屋敷!どこのクラスでやってたっけ」
「確か灯崎のクラスともう一個のクラスの合同だったはず。教室を何個か使って作ったらしいから、かなり規模が大きいらしいぞ」
「へ〜。怖いのかな」
「どうなんだろうな。あんまりそこら辺の噂は聞かないけど、案外怖くないのかもしれないぞ」
「なるほどね。まぁ、実際に見てからのお楽しみってことかな」
なんて話をしていると江草ちゃんがお盆の上におはぎとお団子等を載せて運んできてくれた。
「先輩達お待たせしました」
「お、ありがとー」
受け取ると江草ちゃんはニコニコとしたままその場を離れない。なんだろうと思っていると「あ、私の事は気にせず食べちゃってください!」と勧めてきた。
いくら後輩とはいえ、こうじっと見られた状態で食べるというのはなんとも恥ずかしい。そう思っているのは私だけではないらしく、刻も少しだけ食べにくそうだった。まぁ、食べるしかないので江草ちゃんの事を気にしないようにして食べよう。
「あ、美味しい」
お団子を食べた瞬間に思わずそう言ってしまう。これまでの人生の中で間違いなく一番美味しいお団子。まさか高校の文化祭で食べることになるとは、と思いながらこれは一体どこで手に入れたのだろうか、と思う。それを聞きたくて私は江草ちゃんの方を見た。するのそれを待っていましたよ、と言わんばかりのドヤ顔で待ち構えている江草ちゃん。
「気になりますよね、このお団子とおはぎの入手経路」
「う、うん。気になるけど……」
「ふっふっふー。実はですね、うちのクラスに和菓子屋の娘さんがいるんですよ!」
「そうなの?」
「はいっ!その子のお店から卸してこうやって提供してるんです。しかもその和菓子屋さん、全国大会でも優勝するレベルの造形美と美味しさを誇ってるので有名で〜。思わず私も昨日沢山食べちゃいました」
照れ照れと可愛らしく話す江草ちゃん。
にしても、クラスメイトに専門店の家の子がいるのは強い。私達のクラスにはそんな感じのクラスメイトがいないから正直羨ましい。全部事前用意の本気で回した状態で何とか保ってる状態だから。
まぁ、ないものねだりをしたって仕方がないのだ。私は目の前にあるこの美味しいお団子をぺろりと平らげるのみ。
そう思いながら私はまた一口、お団子を口に運ぶのだった。
第510話終わりましたね。みなさん和菓子好きですか?作者は和菓子好きです。程よい甘さが癖になるので、ショートケーキのような洋物よりも好きかもしれません。
さてと次回は、3日です。お楽しみに!
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