第507話.焼きそば
「おねーちゃん、おにーちゃんばいばーい」
「ばいばーい。もうお母さんから離れちゃダメだよー」
「見つかってよかったな」
「だね」
そう話す私達の視線の先には先程まで迷子になっていた女の子と、そのお母さんの2人が歩いている。校舎の中をぐるぐると探し回った結果やっとの事でお母さんと出会うことが出来たのだ。どうやら私達と同じように女の子を探していたお母さんが何度も何度も入れ違いになってしまっていたらしく、出会うまでに結構な時間を要してしまった。
ちなみにだが、これにて実行委員の仕事は一旦おしまいだ。あとはクラスの方だけなのだけど、先程LINEで凛から今日はもうゆっくり遊んできてもいいといった旨のメッセージが届いたのだ。この事はまだ刻には話していない。ちょっとしたサプライズのつもりで話してあげるつもりだ。
「はぁ……また仕事か」
もう仕事が無くなった事を知らない刻は大きく息を吐きながらそう呟く。まるで仕事に疲れた社会人のような背中をしながら歩く刻。私はそんな背中をポンッと叩いて振り向かせた。
「私達の今日の仕事、もう全部終わったよ」
「え?でもクラスの方はまだなんじゃ」
「ううん。凛からメッセージが来てね、今日はもう遊んでもいいよーって。多分気を使われちゃったかも」
「あー……なら後でお礼を言わないとな」
「だね。そのためにもまずは精一杯楽しまなきゃ」
私は刻の手を取りながら歩き出す。普段学校内で手を繋ぐことがないためか、少し驚いたような珍しいものを見るような目で見られる。
こら、これは見世物じゃないんだよ!君たちは君たちの青春を謳歌しなさいっ!
なんて内心で思いながら、私は私の青春を謳歌させてもらう。
適当な散策をしながら私は刻を引き連れて楽しそうな場所を探す。中庭では焼きそばを焼いていたり、たこ焼きを焼いていたり。あとははしまきなんかもある。水道を使える場所だと水鉄砲を使った的当てゲームなんてものもある。どれもこれも楽しそうだ。
「ふふっ、刻どれ行ってみるー?」
「俺は何でも。蒼が行きたい所選んでいいぞ」
「んー、ならお腹空いたし焼きそば食べたい」
「ん、分かった。じゃあ、買いに行くか」
刻の隣に並び立ちながら私は列に並ぶ。2、3人の列が前にあったが、それもすぐに無くなった。2つ焼きそばを頼み、お金を渡すと、既にプラスチックのパックに入れられたのものを受け取った。
「どこで食べよっか」
そんな話をしながら、程よく腰を下ろせる場所を探す。
中庭は人がごったがえして到底座れるような場所ではないので少し離れな場所を探すことにした。
歩いて歩いて、校舎の間を抜けて見つけたのは人が比較的少ないテニスコートの隣にある部活棟、の上のスペース。少し工夫して歩けば部活棟の上に上がるのは容易なことなのだ。
私達はコケないようにしながら歩いて程よく腰を下ろせるところまで進む。
「おぉ、グラウンドが見下ろせるね」
「だな。グラウンドでやってる出し物も見やすい」
「ね。あ、後であれも行こーよ」
私はグラウンドの方を指を差しながらそう言った。
刻は焼きそばを食べながら頷いてくれる。
って、もう食べ始めてるっ!?
私も置いていかれまいと、パックを開けて割り箸を割って食べ始めるのだった。
第507話おわりましたね。焼きそばって美味しいですよね。からしマヨネーズをかけて食べるのが作者大好きです。辛いものが好きなんですよね。
さてと次回は、27日です。お楽しみに!
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