第504話.強力な助っ人
職場環境が格段に改善された。
正確に言うと、超スーパーウルトラダイナミックな助っ人が来たのだ。こら、そこ。語彙力崩壊ってツッコまない。
まぁ、とにかく!僕達には願ってもない助っ人が来てくれたわけです。そんな救世主はただいまフライパンの上で作業を手際よく進めながら、次の料理の注文も確認していた。
「いやぁ、さすが蒼ちゃん。格が違うや」
「日頃から料理をすると、あの次元に到達するんですね」
僕も華山さんも「ふはぁ」と感心しながらその様を眺める。
きっと、いつもお家ではもっとラブラブしながら刻くんと料理を楽しんでいるんだろうけど、今回ばかりはその奥に秘めたる料理の鬼の部分を出てきたね。
自分で言うのもなんだけど、僕だって料理は普通に出来る。得意分野はスイーツだけど、人並み以上にはね。けど、日頃から作っているという訳ではないから、やっぱり蒼ちゃんの足元にも及ばない。この中で一番あのレベルに近いのは泊里さんかな。普段から妹ちゃんに作ってあげてるらしいから、間違いなく手馴れてはいるよね。
「っと、見とれてる場合じゃないや。僕達も作業しないと」
今回のカフェで提供するスイーツはそこまで難しいものは作らない。というか、作ればするのだけど、時間がかかりすぎてしまうから作れないというのが正しい。
基本ベースは予め用意しておいたもので、見た目や味の方で僕達は主に案を出しながら考えていた。
ちなみにその基本ベースとはショートケーキの所謂スポンジの部分。ホールで昨日の晩に何個も作って、今朝文化祭がスタートする前に切り分けておいた。あとは注文が届き次第、生クリームを塗ったりチョコレートソースでコーティングしたり、フルーツを載せたりといった単純作業で乗り切るわけだ。
まぁ、単純とは言ってもこれがなかなか大変なんだけど。ま、そこは気合で乗り切るしかない。こうして蒼ちゃんも手助けに来てくれたわけだし。
しかし、一つ気がかりなのが蒼ちゃんがここにいるのであれば、実行委員の相棒であり、彼氏である刻くんの事は放ったらかしという事にならないだろうか。恋人同士ならデートだってしたいだろうし、何より実行委員の仕事ってそう簡単に相棒に全託し出来るものなのだろうか。
うーむ、なんとなくだが、最悪デートは出来ないくらいの覚悟で来てる雰囲気が蒼ちゃんから感じるんだよねぇ。多分仕事はさすがにしに戻るだろうけど、なんとも言えない。
と、何となくここまで察してしまったらする事と言えば最早一つしかないだろう。
そう、蒼ちゃんが戻れるように僕達がさらにギアを上げて全力で頑張る。これに尽きる。
全く誰だい、こんな脳筋戦法を思いついたのは。あ、僕か。なんて茶番劇も少し挟みたいところだが、残念ながらそんな暇がある訳でもない。ただひたすらに、届く注文にタスクに対して全力で立ち向かいながら、ひたすらこなしていくしかないのだ。
まぁ、そんなこんなで開店当初に比べると明らかに店の回転速度が上がった。おかげで利益上昇、客入り増し増し。良かったのか悪かったのかよく分からない状況だ。蒼ちゃんがこの場を離れるにはそろそろいい時間だが、完全にスイッチが入っちゃってるみたいだし……参ったなぁ。
うーん、と頭を悩ませながら、僕は一度エプロンを脱いでカフェの方に向かう事にした。
目的はー……まだ内緒っ。
第504話終わりましたね。蒼が助っ人として調理班に参戦です。普段から刻のために愛情込めてご飯を作ってるかいあってか、料理のレベルは同棲を始める前より格段に上がったそうです。
さてと次回は、21日です。お楽しみに!
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