第502話.現状と課題
文化祭がスタートしてから私達のクラスの回転数はそこそこの数字を取れており、ひとまずは波に乗れたと考えてもいいだろう。さすがに去年のメイド喫茶ほどの勢いはないものの、他クラスの出し物で遊び疲れたりした人が休みに来る場所として十分な働きをしているようで、おかげで客数はある程度安定している。そして、私達の教室の位置が絶好の場所というのも、少なからず理由としては挙げられるだろう。1から5階までを繋ぐ中央階段。その最も近くに位置するのが私達の教室であり、今回のカフェの位置だ。ゆえに人目につきやすく、来やすいというメリットがとても大きい。
常にお客さんが一定数入ってくれているおかげか、私達はほとんど休みなく動き続ける。本来受付には2人体制で回す予定だったのが、なにぶん時間が惜しい。どうしても負担は大きくなってくるが、受付の子には必死に頼み込んで1人でやってもらうことにした。
「この安定性なら結構今回の順位も良さそうだね」
「だな。あとは供給が追いつき続ければなんとかなる」
うちの高校の文化祭には売上の競争という概念があるので、そこでとにかく高い順位を狙うのが毎年の恒例だ。そして去年はそれの一番上になったというわけだが、なぜここまでみんなが1位にこだわるのかとなるとふと疑問に思う者も出てくるだろう。
理由は実は案外単純なのだ。というのも、1位のクラスには文化祭の打ち上げに使う費用を学校側が負担してくれるという素晴らしい制度が存在するのだ。私達の高校はバイトが出来ない校則上、打ち上げ代はかなり高くつく。なので少しでも出費を減らしたいがためのこの本気度なのだ。それに打ち上げ代は後で高校に請求書を提出するという形で得るので、実質額の方もコントロール出来るという利点付き。目指さない理由がないのだ。
「凛達、大丈夫かな」
「様子見に行くか」
主に料理の提供をする調理班。それが凛やユウと言ったメンバーなのだが、何せお客さんの入る速度に対して料理の速度も上がるのかと尋ねられれば、そういう訳ではない。ゆえにかなりの負担がかかってしまう。
ほんの少し心配になった私達は、調理班の働く2階にある家庭科室に顔を出しに行くことにした。
1つ下の階なので移動自体は楽。それに料理を運ぶのもそれはそれで別の人がいるから凛達は本当に作るだけでいいのだけれど、それでも料理の大変さを知っていると何となく分かる。終わりが見えないって結構しんどい。
メニューの伝達方法は専用のLINEグループを通して行われている。これが近代化の力か、と思いつつ私は家庭科室の扉を叩いた。
「凛ー?忙しすぎたりしないー?」
中に入ると凛達は顔をパッと挙げた。頭に巻いた三角巾がペラっと顔にかかって視界が無くなっているので、私はそれを直してあげるとどんな状況か話を聞く。
「忙しさはそこそこだね。一応事前に効率的な動きを考えたり役割分担はしてるからまだマシだけど、お昼時のピーク時になるとちょっと分かんないかも」
「なるほど」
スマホに現状の声という形でメモを取ると私は「また来るから、頑張って!」と伝えた。凛は片手を上げて手を振ってくれる。
「昼時が一番ヤバそう……か」
隣に立つ刻がそうボソリと呟く。
うん。確かに午前中のこの時間でこの入り方だ。ご飯を欲する時間になればこれとは比にならないことになるのは避けられない。
何か策を考えなければ。
第502話です。最近は寝落ちが増えて投稿が遅れていますね。今回も途中までは書いてたんですよ?けど気がついたら朝になってたんです。なんででしょう。
さてと次回は、17日です。お楽しみに!
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