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第48話.自由奔放

 店から外に出て人力車からのお兄さんの元に戻る。それから、また人力車の上に乗ると俺達は紙袋を開けて、生八ツ橋を取り出し、食べ始めた。


「ん〜、おいひぃ!」


 凛は頬に手を当てながら生八ツ橋の味に舌鼓を打っている。俺も生八ツ橋を食べるべく、凛から一つ貰い口に入れた。


「おっ、本当に美味いな。あんこがいい感じの甘さ加減でさらにいい」

「そうですよね!僕もそういう所があの店の好きなところなんですよ」


 人力車のお兄さんは前を向き走りながら俺達にそう言った。


「お兄さんは甘いの好きなんですか?」

「はい、甘いの好きですよ。お饅頭とか気付いたらいっぱい食べてますしね」

「お饅頭かぁ。美味しいですよね」


 凛とお兄さんは仲良くお饅頭について話している。


(お饅頭は美味しいよ。でも団子も忘れちゃダメだからね)


 団子の株を上げつつ俺はまた一口パクリと八ツ橋を食べた。



✲✲✲



「はい、到着です」

「とォーッ!シュタッ!」


 祇園の街を一通り見て回った後、清水寺付近で下ろしてもらった。


「ありがとうございました」


 俺達はお礼を言い、チップ的な感じでお兄さんにお金を払うと、清水寺の方に向かった。

 道中には人が溢れんばかりに歩いており熱気がすごい。

 汗をタオルでトントンと叩くように拭きながら、本殿を目指す。


「これじゃあ、人が多すぎて道に迷っちゃいそうだよぉ……」


 隣で凛はそう言う。

 道に迷うも何も、ほぼ一方通行だからあんまり迷わないと思うのだが。

 凛はキャップを被っているおかげか、あまり暑そうな印象がない。いやまぁ、暑いのは暑いんだろうけども。


「道に迷わないように俺にしっかり着いてこいよ」


 そう言うと凛の前に立って歩き始める。

 人混みを避けずんずんと前に進むと、やっとのことで本殿が見えてきた。寺の中に入るとよくテレビや教科書なんかでも見るあの景色が広がる。


「高っ!怖っ!」


 凛はキャッキャッ言いながら楽しんでいるみたいだ。


「この高さから落ちてもな意外と死なないらしいぞ?」

「本当に!?」


 ちょっとした豆知識というか裏話的なのを話すと、凛が意外なことに食いつく。

 こういう事にはあまり興味が無いと思ってたんだが、そういう訳じゃないんだな。


「本当だよ。まずここは高さはあるにはあるが、高すぎる訳ではない。あともう一つの大きな要因はあれだな。下が土とかだから天然のクッションになるんだよ」

「なるほどね!」


(どうやら凛にはご理解を得られたようですね。まあ、落ちたら危ないことは同じなんだけど。ちなみにだが、この柵ちょっと低く過ぎやしないか?結構怖いんだけど)


「にしても、ここからの景色綺麗だね」


 凛は風に吹かれながらそう言う。多分めちゃくちゃ良い被写体になるんだろうな。


「ねぇ刻くん。写真撮らない?」


 デジカメをバッグから取りだし、片手に持ってそう言う。


「いや、別に俺はいいんだけど」

「まあまあそう言わずにね」


 俺の手をグイグイ引っ張りながら、柵の付近まで俺を連れて行く。


「俺は本当にいいんだけど……」


 少し遠慮しながらそう言えば凛は頬をプクッと膨らませた。


「もう刻くん、せっかく僕が勇気を出して誘ったんだからそこは一緒に撮ろうよ!」

「えぇ……」

「はい、文句は聞きません!じゃあ撮るよー」


 そう言うと同時に俺の横にグッと一気に近づいて、カメラをこちらに向ける。隣には俺の肩より少し高い位置に凛の頭があり、そしてやたらといい匂いが漂ってきた。


「ほら、刻くん笑って」

「お、おう。こうか?」


 俺は凛に言われた通りに笑顔を作る。ただ慣れてないせいか、少しぎこちない気がした。


「ふふっ」

「え、何?」


 急に凛が笑いだして俺は思わずそう聞いた。


「いや、刻くんの顔が面白くってね。別にそんな緊張した顔じゃなくてもいいよ?」

「いや、それが難しいんだけど」


 そう言いながらも何とか顔が強ばらない様に頑張る。

 やはり笑顔ってのは普段からしてないと難しいな。凛みたいには上手く出来ない。

 ピピッと音がなり写真が撮られる。

 凛はデジカメを俺たちの手元に近付けて撮った写真を確認した。


「おお、いい感じに撮れてるじゃん」

「これいい感じか?」

「え、いいじゃん!」

「えぇ……」


(確かに凛はめっちゃ可愛く撮れてるけどさ、うーわっ、やっぱり俺の顔やっぱりぎこちない。いや、さっきに比べたらまだマシなんだろうけど)


「後で送っとくね」


 凛はそう言いながら写真を見てにこにこしてる。

 何がそんなに嬉しいんだか。


「さぁ!最後はお土産買って帰るよー!」


 そう言うと凛はまた俺の腕を強く引く。周りの目を気にせず自由奔放に進む凛は、さながら何事にも囚われない自由人だ。


「刻くんどこ見てるのー?」


 俺は凛の声ではっとする。

 どうやらこの一瞬でぼーっとしていたみたいだ。


「特には何も見てないぞ?強いて言えばお前を見てるだけだけど」

「あ、そう?……へっ!?」

「どうした?」

「い、いや別に……何でも」


 凛は顔を朱に染めて俯く。

 俺はその様子に気を留めることもなくまた進んだ。


第48話終わりましたね。清水寺から飛び降りよう!と、言ってもね危ないものは危ないですからみなさん飛び降りないでくださいね?

さてと次回は28日です。お楽しみに!

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