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第36話.秘密の夜ふかし

 晩ご飯を食べ温泉に入りそして部屋に戻る。昨日とほとんど何も変わらない動き。だが違うところがあるとするならば、それは部屋に戻ってもあいつ達がいない事だろう。

 昨日は部屋が一つしか取れていなかったが、今日はホテルの計らいでもう一部屋確保されている。そこに俺は今日泊まって寝るわけだ。


「暇だ」


 そう言うと俺は1人布団の上で「ふあぁ」と欠伸をする。

 結論から言おう。この状況、ありえないぐらい暇だ。まぁ、その理由も分かりきってるんだけど。


「昨日はあいつ達がいたもんな」


 そう。昨日は凛とゲームしたり空宮たちの恋バナに巻き込まれたり、華山と話したり色々したからな。だからこそ、今この一人でいる状況がひどく暇でそして凄く寂しい。


「いい感じの暇つぶし何かないかな」


 部屋の辺りを見渡し何かないか探す。あるものと言えば、今俺の座ってる布団に座椅子。あとはテレビとゴミ箱ぐらい。暇を潰せるものがあまりにも少ないな。

 そんな感じで1人でうんうん唸りながら悩んでいると、ホテルの部屋に備え付けられているインターホンがピンポンと鳴った。


「ん、誰か来たのか?」


 ムクリと体を起こして立ち上がると、スリッパを履き玄関の方へ歩いていった。


「はいはい、どちら様?」


 俺は玄関の扉をゆっくり開く。

 開けた先にいたのはビニール袋を持った空宮だった。


「よっ!」


 空宮は笑顔で片手を上げて俺にそう言った。


「よっ!じゃねぇよ。こんな時間にどうしたんだ?」


 純粋な疑問だ。こんな時間に男一人の部屋に来るなんて、どんな理由があっての話なんだか。


「ん〜?私がこの時間に来た理由はね、きっと刻昨日の夜私達とずっと一緒にいたから、1人で寂しがってるんじゃないかなーって、思ったからだよ」

「別に寂しくはなかったけど」

「本当に?」

「寂しくはなかったけど、暇ではあった」

「じゃあ丁度いいね」


 寂しかったという事がバレたくがないために、すごく暇だったという事で押し切ったが、案外バレないものだ。

 空宮はそう言うと、テクテクと俺の部屋の中に入ってくる。空宮はそのまま奥へと行くと、和室に置いてあるテーブルの上に持ってきていたビニール袋を置いた。


「なぁ、空宮。そのビニール袋の中身は何だ?さっきから気になってたんだけど」

「あぁ、これね。これはねお菓子とジュースだよ」


 お菓子とジュースって、この時間に食べたら太るぞ?と、俺が空宮に言えるわけもなく、この事については心の中に留めておくことにした。


「お菓子とジュース?」


 そう聞くと空宮は逆に何で分からないの?とでも言うような顔になる。


「刻は分かってないなぁ。この時間に高校生が集まったら、それはもう夜ふかし以外、することは無いでしょ!」

「え、そういうもんなの?」

「そういうもんなの」


 空宮は「えっへん!」と胸を反らしてそう言う。


(うーむ、高校生が集まるって言っても残念ながら2人しかいないんだよなぁ)


 そう思いながら空宮の行動を見ていると、空宮は布団をテーブルの前に敷いてその上に座った。その後はポンポンと布団を左手で叩いて隣に座るよう俺に勧めてくる。


「ほら、刻も座って」

「おう」


 俺は勧められた通りに空宮の隣に座った。

 この部屋には俺と空宮しかいないため、空宮の息遣いから何から何まで全てよく分かる。


「まず何食べる?」


 空宮はそう言うとビニール袋の中から、ポテトチップスにポッキー、後はトッポにチロルチョコなんかを取りだした。

 チョコ率高いな。


「チョコでいいんじゃねえの?」


 そう言って俺はチョコを手に取る。


(えーと何々?カカオ70パーセントですって。あら苦い)


「それ、苦いんだよ。知ってた?」


 空宮は俺がチョコのパッケージの裏を見てるとそう言った。


「あぁ、知ってるぞ。今見たからな」

「見たなら知ってるよね」

「にしてもなんでカカオ70パーセントなんだ?もう少し甘くてもいいんじゃねえの?」


 俺が空宮にそう聞くと、空宮は真剣な顔をしながら腕を組んでこう言った。


「甘いものを食べるとね……」

「食べると?」

「体重が増えちゃうんだよ……」


 空宮はものすごく深刻そうにそう言う。

 そりゃまぁ、女子だし体重は気にするよな。でもさ、この時間にお菓子食べてる段階でだいぶやばいんじゃないかしら?

 そう思ってると、俺の頬にチクッとした痛みが走る。


「痛っ」


 俺が頬を擦りながら空宮の方を見ると、空宮がにやにやした顔でこっちを見てきていた。


「え、何?」

「い〜や。別に何も無いけど?」

「何も無かったら俺の頬を摘まないだろ普通」

「んー確かにそうだね。理由があるとしたら、刻にイタズラしたかったからかな」


 空宮はそう言ってくすくすと笑う。

 あーもう。ここは一発叱っておこうと思ったけど、この笑顔見たら叱る気も失せちゃったわ。これが美人幼馴染みの特権。

 とはいえ、注意はしておくけどね?


「空宮、イタズラを俺以外にする時はちゃんと意思表示をしてからしろよ?」


 俺は空宮にそう言っておく。


「刻相手には意思表示なくてもいいんだ?」

「まぁ、そうだけど」

「じゃあ、イタズラし放題だ」


 空宮はそう言うとまた笑顔になった。先程よりも小悪魔らしい可愛い笑顔で。



✲✲✲



「ほら、刻あーん」

「いや、いい」

「ほらもう、遠慮しないの」

「あぁ、もう……」

「あ、食べてくれた」


 空宮は俺がポッキーを食べたことにすごく喜んだ。と言うかそれ以前にどういう状況かを説明した方がいいな。


(まぁ、結論から言ってしまえば空宮が深夜テンションになった。その結果普段の空宮なら恥じらいながらしそうな事も、全く恥らう事なく出来てしまった、という感じかな?)


「もぉ、こっち向いて〜」


 空宮は俺の頬をつんつんとつついてそう言った。


「何でだよ」

「えー、お喋りしたいじゃん。私は刻と喋るの好きだよ?刻は私と喋るの好き?」

「嫌いじゃないけど」


 一言空宮にそう言うと、また何も無い天井を見上げた。


「嫌いじゃない……か。好きでもないの?」

「好き……じゃないわけではないけど」

「そっか、ならよかった」


 笑顔を浮かべ敷いてあった布団を抱きしめてパタリと敷布団に倒れ込むと、空宮は足をバタバタとさせ始めた。


「どうしたいきなり」

「何でもないよ〜」


 そうとだけ空宮は言うと足のバタバタは止んでしまう。しばらくすると隣からはすーすーと心地良さそうな寝息が聞こえてきた。

 どうやら寝たようだ。


(これじゃ、俺は布団で寝れないな)



第36話終わりましたね。夜更かしってなんかいけない事してるみたいで、楽しいですよね!

さてと次回は4日です。お楽しみに!

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