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世界の裏の魔法則  作者: 初日
第二章 危険生物狩猟協会
16/45

14

{神谷}


「(さすがは光夜の息子、といったところか)」


 この悠夜という少年の実力はたいしたものだった。

 互いに刃を交えながら、私はそう思った。


 私が光夜と初めて会ったのは四年前、狩人になりたいと、この危険生物狩猟協会を訪れたときだ。

 「渡り人」が狩人になることは、極めて稀なことだ。

 「渡り人」は、争い事のほとんど存在しない世界に住んでいたため、戦う事に慣れていない。

 子供の「渡り人」の中には、魔法や魔獣との戦いに対して憧れを持つ者も多くいるが、魔獣の恐ろしさを知るとすぐに諦める。

 別にそれを悪いことだとは思わない。誰だって命は惜しいし、「渡り人」は別に戦わなくても知識や技術で我々の生活に貢献してくれる。

 それでもやはり、根性がないと思ってしまう。

 だからこそ、光夜の危険を承知の上で狩人を目指すという心意気を私は気に入り、自ら強化魔法を伝授した。

 そして、光夜は凄まじい上達速度で強化魔法を覚え、達人と呼ばれる人種に追随する実力を手に入れて見せた。

 だからこそ、その光夜の息子にはとても興味があった。

 数が少なかったとはいえ、悪鬼の群れを単身で撃破したとなれば尚更だ。

 実力を確かめるため、というのは建前に過ぎない。ただ純粋に風霧悠夜と戦ってみたかった。

 そして、悠夜の実力は申し分ないものだった。

 若くして、強化、雷、風の三つの魔法を習得し、私の土の壁を使った攻撃にも、初見で対応して見せた。武器は駄目になってしまったが、元々私の持っているハルバードの性能は、悠夜の持っている刀より数段上の物だったのでこれは仕方のないことだろう。

 相手の武器はもう使用不可能なので、手合せはここまでだと思ったのだが。


「神谷さん。あなたは、人の実力を言いふらしたりしない。そう言いましたね」

「? そうだが?」


 私は唐突な問いに疑問を覚えながらも返事を返す。

 そして、悠夜はとんでもないこと口にした。


「神谷さん、今まで手を抜いていたことを謝罪します。それと、ここからは本気でいきます。」


 悠夜の雰囲気がガラリと変わる。


「っ!」


 全身に凄まじいプレッシャーが掛かる。こんなものは、かつて第四級指定危険生物と対峙したときでも感じたことがない。

 そして、悠夜が曲がった刀を投げ捨て、掌を前へ突き出すと、見たこともない複雑な術式が出現した。

 なんだ、それは?

 そう問い掛けるよりも速く。


バン!


 何かが破裂する音と共に、信じられない速度の風魔法が飛んできた。

 咄嗟に防御姿勢を取る。


「ぐっ!」


 しかし、その威力もまた信じられないものだった。凄まじい衝撃を受けて、体が宙に浮く。

 まずい。土魔法は地面に触れているのと、いないのでは、威力に大きな差があるのだ。

 悠夜もそれが分かっているようで、一気に距離を詰めてきた。


「おおおおお!!」


 悠夜を牽制するため、無理矢理空中でハルバードを振るう。これで倒せるとは思っていない。しかし、手に武器がない以上、無理に踏み込むことはできないハズだ。悠夜が回避行動をとれば、僅かだが時間が稼げる。そして、その間にこちらの足は地面に着く。

 そう思っていた。


ギャイイイィン!


「!?」


 だが、その算段は素手でハルバードを受け止めるという、あまりにも予想外で非常識な方法により呆気なく瓦解させられる。


 私は、自分でも気付かぬうちに、奥の手を使っていた。体に染み付いた経験がそうさせたのだ。この至近距離で使うのは、危険かもしれない。


「くらえ!」


 それでも私は、迷わず悠夜に向かって雷魔法を放った。

 直感がこの相手には問題ない、と告げていた。

 事実問題なかった。

 しかし、


「(これはなしだろう!?)」


 私の放った魔法は、私自身に帰ってきて


「ぐああああああ!!」

「そこまで!」


 私は薄れゆく意識の中で、光夜が試合終了を告げる声を聞いた。


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