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世界の裏の魔法則  作者: 初日
第二章 危険生物狩猟協会
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「悠夜、今日予定あるか?」


 食事中、光夜が唐突に聞いてきた。

 ちなみにこの世界の食文化は、悠夜の元いたところとほとんど変わらない。せいぜい、見たことのない野菜や、知らない食感の肉が少し混ざっている程度である。

 まあ、ここにいるのは日本から来た人間か、その子孫なのだから当然と言えば当然かもしれないが。


「森に置いてきた素材や薬草を、取って来ようと思ってる。ここでは高く売れそうだし」


 ストックしていた物には、いろいろと使えそうな物もあったはずだ。


「珍しい素材とか、いっぱいあるの!?」


 すかさず、一葉が食いつく。

 雪菜も、興味津々といった感じだ。


「珍しいかどうかは、持って帰ってからでないと分からないな」


 この周辺では見かけなかったので、たぶん珍しいとは思うが。


「でもあそこって、歩いて五日は掛かるわよ。往復で十日になるわ。ちゃんとした準備がいると思うけど……」


 雪子が気を使ってくれるが、悠夜は首を横に振る。

 

「走って行くから、三日もあれば十分だよ」


「三日!?」


 一葉がひっくり返った声を上げる。


「片道五日を二日も短縮するなんて、一体どんな体力してるの……?」


 雪菜は呆れ気味な声を漏らす。


 しかし


「魔法で強化した体力なら余裕さ、それと片道三日じゃなくて往復三日だ」

「「…………」」


 二人はとうとう、何もかも諦めたかの様な遠い顔になってしまった。


「ならその前に、俺と一緒に協会に来てくれ」


 そんな二人を置いて光夜が切り出した。


「別に構わないけど理由は?」

「会長にお前の事を紹介する。昨日、お前が悪鬼の群れを殲滅したってことは伏せて、悪鬼の死体が森の中にあった。としか報告してねぇんだが、会長にだけは本当の事話したんでな」

「話して大丈夫だった?」

「俺がこの世界に来て間もない頃は、よく世話になった人だ。信用できる」


 光夜はきっぱりと言い切った。

 光夜は昔から妙な人脈を多く持っていたが、それはこちらに来てからも変わっていないようだ。

 それに、光夜には人を見る目もあるし、そこまで言うなら大丈夫だろう。


「僕は会長に会ってどうすればいいワケ?」

「お前が単独で悪鬼の群れを殲滅可能だってことを証明しろ。」


 光夜の答えは簡潔だった。


「ちなみに、会長はもう結構な年のくせに、現役バリバリのバトルジャンキーだ。お前との手合せを楽しみにしてるぜ」


 そして余計なことまで付け足した。


「やっぱり行くのやめていい?」


 物凄く面倒臭そうな気がする。


「ダメだ」


 だが、この問いに対する答えもまた簡潔だった。






 そして、光夜と悠夜は現在、協会、正式には危険生物狩猟協会と呼ばれる建物へと向かっている。

 今の悠夜は、簡素なシャツとズボンの上に皮製のジャケットを羽織って、腰には光夜の予備の刀を佩いている。

 光夜が、悠夜の持っていた装備は目立ちすぎると用意した物だ。


「そういえば、会長の強さってどれ位?」


 悠夜はずっと気になっていたことを聞いてみた。

 実力を認めさせるといっても、どれ位なら認められるのかが分からない。

 自分の我流魔法は普通の魔法に比べて圧倒的なアドバンテージを持っているが、いくら光夜が信用している人物でも、それを使うのは避けたい。

 一応、悠夜は昨日の内に一般に普及している、火、水、氷、雷、風、土の属性と強化の魔法を使えるようになっている。

 すでに全系統の魔法を習得している悠夜にとっては、単に自分が今使っている魔法の術式を、大幅にグレードダウンさせただけなのだが、周りは「信じられない」といった表情で、自信をかなりなくした様子だった。

 しかし、ただ魔法を使えるだけなのと、魔法を使いこなすことができるのとでは話が違う。


「俺は会長が本気出してるところは見たことねぇが、第四級の魔獣倒したこともあるらしいぞ、もちろん一人でってわけじゃねえが、使える魔法は、強化と土属性だ」

「(微妙だな)」


 悠夜は、そう思った。

 使っていいのは、今まで使ってきたものとは性能に雲泥の差がある魔法。

 その魔法も、昨日初めて使ったものばかりで慣れていない。

 中の上ぐらい、と言って光夜に渡された装備も、悠夜にしてみれば粗末なもの。


「(できれば、強化と、一つか、二つの属性だけで済ませたいな……。)」


 そんなことを考えているうちに、協会が見えて来た。


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