二十四章 四季祭「春」 其の漆
サクラコ裏話。
亜号奈々はロックが好き。アイドルも好きだが、彼女に取っての一番の偶像はとあるロックバンド。彼女の目標はアイドルとロックを掛け合わせた新しい形の音楽を作ることで現在模索中。
「一回戦、皆様如何だったでしょうか!? まさかまさかの、最初から神秘拡張が出て来る驚きの展開!圧倒的逆境の中、それを乗り越え、勝利を掴んだのは桜子選手!選手へのインタビューと行きたいですが二人とも治療室に送られてしまったのでそれはまた今度に!それでは皆様、お待たせしました!四季祭「春」一回戦、第二試合の準備が整いました! 」
舞台の修復が住んでおり、観客席へと実況者の大声が鳴り響いた。
「一回戦が想像を絶する盛り上がりを見せましたが、次の試合も熱はそのまま!ジャンジャン盛り上げて参りましょう!それじゃあ、第二試合を魅せてくれるのはこいつらだ!!!! 」
入場ゲートが開き、生徒が歩き出すもそこには水色の髪をした青年だけが立っていた。
「第二試合は!亜号奈々選手VSレイズ・ヴァリティタスってあれ?! あ、亜号選手は?! 」
レイズだけが現れたことにクロノは驚きを隠せずに思わず声を上げてしまい、会場もザワザワとどよめき始めた。
「レ、レイズ選手!亜号選手はどこに?! 」
「俺が立った時には誰もいなかった」
「え、え〜、じゃ、じゃあ、このままだと不戦勝?! 四季祭史上初めての不戦勝となりますがどうしましょう」
運営側すら困り果てていた最中、上空からバルバルというプロペラが回る音がした。
BULLET Schoolと記されたヘリコプターは会場の上空を旋回しており、観客もそれに気づくと何があったのかとソワソワし始める。
そんなヘリコプターから飛び出した影が一つ。
地上との距離は500メートル。
普通の人間であれば死んでしまう様な距離からそれは姿を現した。
「神秘解放、偶像!!!! 」
地上との距離は残り200メートル。
頭上には黄色い輪っかが顕現するとそのタイミングで手に握られていた槍がギターとなり、それを自信満々に掻き鳴らす。
様々な音色が具現化し、地面に打ち付けると音楽がクッションとなり、舞台にヒビを作った。
先程見た時はツインテールであったが今は後ろに髪を伸ばしたウルフカットになっており、着地に成功した少女は大声で自身の名を上げた。
「偶像の神秘を持つ、みんなのアイドル!崇拝しなさい!敬いなさい!亜号奈々のお通りよ! 」
***
「誰だ?! うちの学園の私物持ち出したの!? 」
如月百兎は会場を見て、頭を抱えながらキレていた。先程まで穏やかな時間が流れていたのに、その空気は一変、ドタバタと一気に騒がしくなる。
「百兎の感知能力は学園都市のモノでは発揮できない。まんまと穴をつかれたわね。はぁ、全く」
頭を抱える対策本部。
鳴り止まない電話はとその応対。
そんな彼らを気にすることなく、試合は始まった。
***
「え、えーと、とんでもないパフォーマンスでしたね!しかし、これで役者は揃いました!このまま参りましょう!試合開始!!!! 」
会場は騒然としているものの試合の開始が宣言され、レイズは相手がすでに神秘解放をしていることで自身も同様に神秘を解放した。
「神秘解放、夜乃神」
黒い球体が周辺を浮遊する杖へとなり、それを前にして再び口を開こうした。
「待って、あんた私になんか言うことない? 」
唐突に話しかけられたがレイズは無視した。
「夜乃神・重力杭」
杖の周辺を浮遊していた黒い球体が奈々の背後に突如現れ、黒い杭となり、それが彼女を押し潰そうとその場の重力を変化させた。
奈々は自分の話を無視した怒りを向けようとギターの弦に手を置くもそれよりも早く、黒い杭は彼女の背後に現れていた。
自身が地上に立つための重力が変わり、一瞬にして彼女の動きを止めるとレイズは既に次の攻撃に移っていた。
重力に押しつぶされていた奈々との距離を詰めると杖の周辺に浮遊していた黒い球体を変化させ様と口を開いた。
「夜乃神・重力鎌」
浮遊していた黒い球体は鎌の刃に変化し、奈々はその攻撃に気づくも対処に遅れ、体に巨大な切り傷が生まれた。
だが、レイズの連撃はそれだけでは止まなかった。
傷ついた体目掛けて蹴りを入れると再び重力で動けなくし、持つ武器全てを奈々へとぶつけ続けた。
蹴っては切り、切っては重力によって動きを遅らせる。
何度も繰り返し、既に、奈々の体はボロボロになっており、試合は早くも終わりを迎える様に見えた。
レイズが鎌をもって奈々の体に新しい傷を生もうとした瞬間、彼女は自身が握るギターを再び掻き鳴らす。
そして、ギターから音色が具現化し、レイズにぶつかると彼の体を吹き飛ばし、互いに距離が生まれた。
「痛いわね!人の話聞いてるの?! 」
切り傷まみれの奈々が声を上げるもレイズはため息を吐き、それに答えた。
「別に、お前と話す気もつもりもないぞ」
「私はあるっての!まぁ、いいわ。あんた私に言うことない? 」
「ない」
「あっそ、じゃなくて?! さっきのパフォーマンスとかどうだったかの感想聞かせなさいよ! 」
奈々は地団駄を踏み、プンスカと怒り出した。
自分が戦っている相手が意味も分からずキレ散らかす
ことに頭を抱えたい心情であるものの冷静対処しようと応える。
「あえて言うなら、あの音楽、どっちかと言うとロックだろ。アイドルなんてもんじゃないバチバチのロックバンドのやつだ」
「あんた、このロックバンド知ってるの? 」
「昔、知り合いが聞いてたからな」
レイズの意外な反応に、奈々は驚くも、すぐにニヤニヤとしながら再び口を開いた。
「渋いはね。いや、ロックと言っとこうかしらあなたの友達。それなら、いいわ。私の神秘は偶像!そして、偶像は常に可愛くなきゃいけないの。だから、今の怪我まみれは可愛くない」
奈々の体に回っていた神秘が一箇所に集中し、ギターを握る力が強まるとそれを地面に叩きつけた。
地面に叩きつけられたギターはボロボロ砕け、自ら武器を破壊した奈々の手には何も残っていない。だが、そんな中、彼女は不敵の笑みを浮かべ、手を空高くあげると声を上げた。
「偶像☆崇拝」
偶像への祈りが彼女の源であり、本来の神秘。
ギターが砕けたと同時に神秘が跳ね上がり、レイズによってつけられた体の傷が塞がれた。
その神秘に当てられた観客の何人かはその力に取り込まれ、自然と両腕を握り祈りを捧げていた。
「私の神秘は偶像。私は私が負けないと思う偶像に成れる。偶像は常に無敵じゃないといけないからね。これで開示はお終い。こっから全力全開よ」
言い終わった瞬間、奈々は足を踏み込むとその箇所はヒビ割れ、レイズの目の前に現れた。
「偶像☆衝撃! 」
レイズ目掛けて放たれた拳は神秘を纏っており、先程と違い、純粋なまでの暴力へと進化する。
自らが持つ得物をギリギリで挟み込むもその一撃はレイズの体を一瞬にして吹き飛ばした。
彼の体が簡単に壁まで吹き飛び鈍い音が鳴り響くと会場から歓声が鳴った。あまりにも一瞬の出来事であるもののその一撃は決着の一撃となるそう思っていた奈々は自らに浴びせられる喝采を受け、勝利を宣言しようとした。
「夜乃神・重力杭銃」
黒い杭が二つ放たれ、それを素手で弾く。
レイズは少しばかり服がほつれているものの傷自体はあまり負っておらず、手に持つ杖を構え、奈々へと立ち向かった。
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