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山崎さんを知りませんか?  作者: 佐伯瑠璃
第一章 医者として
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山崎VS幹部たち

久しぶりにVSでございます。


(山崎がっ、熱に冒された椿を襲っている!!)


と、勝手に勘違いした四人はその光景に釘付けだった。

山崎の影に隠れた椿の様子はここからでは見えない。時折、角度を変え椿の唇を堪能している。ように見える。


実際は粥を食べたせているだけなのだが・・・。


サーっと開いた障子の音に、椿が山崎の肩越しにこちらを見た。

髪は下ろされ、頬を赤く染め、瞳は潤んている。


「あっ」と、言ったのが分かった。


すると、ゆっくりと山崎が振り向いた。

いつもの何を考えているか分からない表情だ。


「皆さん、お揃いで」


平然と答える山崎に悶々としていた藤堂が言った。


「山崎くん、君っ、病人に何してんだよ!」


病気で弱っているところに漬け込んで、卑怯な奴だと思っているのだろう。わなわなと込み上げる怒りは握りしめた拳を見れば分かる。


「おい、平助。いいじゃねえか二人は想い合ってるんだ、それくらい当たり前だろ。な?」

「でもっ、弱っている時にあんなっ。最低だろ!」


原田が宥めるが、怒りはおさまらない。


「あの、それで皆さんは何か用がおありなのでしょうか」


怪訝な顔で山崎が四人に問う。


「椿の様子を見に来たのだ」と斎藤が言った。

すると椿が、体を横にずらして手をついて頭を下げた。


「斎藤さん。助けて頂いてありがとうございます。お陰で熱はすっかり下がりました」

「そうか、よかったな。ならば邪魔者は帰るか」

「ん?」


首を傾げる椿に小さな笑みを見せ、斎藤は去って行った。

勘違いはしたままだか、ある意味賢い行動である。


「椿さん、治ったらまた僕の様子も見てくださいね」

「沖田さん勿論です。咳はでますか?お部屋の空気入れ替えしてくださいね」

「椿さんは怒ってないのですか?」

「怒る?」

「僕が言った、男心の事ですよ」

「・・・すみません、覚えていません」


すると沖田は一瞬きょとんとし、すぐに右の口角を上げた。

こういう表情をする時はろくな事がない。しかし、距離があるせいか椿にはそれが分からなかった。


「いいんですよ。ただ、僕の男心が疼いただけです。椿さんは気にしなくていいですよ。お大事に」


思わせぶりな言葉を残して、沖田も去った。

山崎の眉が次第に歪んで行くのを気づいた者はいるだろうか。


「あ、あれだ。山崎も気にするな。椿が心配で様子見に来ただけだからよ、邪魔するつもりはなかったんだ。いや、元気みたいでよかった。椿が倒れると皆が困っちまうからな」


「原田さん、ありがとうございます」

「おう。けどあれだ、ちゃんと治ってからにしろよ?けっこう体力使うからな。その辺でやめておけ。山崎おまえなら我慢できるだろ」


すると、眉間にシワを寄せた山崎が明らかに不機嫌そうな声で聞き返す。


「原田さん、意味が分からないのですが」

「病み上がりの女に強いるなよ?じゃあな」


爽やかな笑顔を残して、原田も去った。

残ったのは藤堂一人。


「皆甘すぎるんだよ。山崎くんさ、病み上がりの弱ったとこに漬け込んで口づけなんかしちゃってさ!俺達が来なかったらそのまま押し倒してたんだろ!いくら好き合ってるからって、それは男として武士としてどうかと思うぜ?」


椿は焦った。藤堂は何て事を言ってくれたと。


「藤堂、さん?何か勘違いを・・・」

「椿、庇う必要はねえんだって。嫌な時は嫌って叫べよ!俺達が守ってやるから」

「え、だから」


山崎の肩がふるふると揺れている。

これを何処かで見た記憶が・・・マズイ!


「椿さん、横になって待っていて下さい」

「はい」


山崎はスッと立ち上がり、藤堂の前まで進むと低い声で


「沖田さん、原田さんを呼んで広間に来てください」

「なんだよ言い訳かよ」

「イイから、呼んてきて下さいっ!!!」

「うわっ」


そして、山崎たちは広間に行ってしまった。


「ど、どうしよう。よく分からないけどマズイと思う」


椿はふらつく足取りで土方の部屋に向かった。

あの人たち私闘するんじゃ、それって・・・切腹!!!


「土方さん、土方さん!」

「椿か?どうした、顔が青いぞ」


椿は一気に土方に先ほどの部屋での事を説明した。私闘させてはならない。絶対に!!


「はぁ、はぁ、はぁ」

「椿、大丈夫か?おまえ、またぶっ倒れるぞ」


土方はふらつく椿の腰を支えながら広間へ向かった。

其処には山崎と原田、沖田、藤堂がいた。


(なんだこの空気は)


「土方さんっ」

「椿、大丈夫だ。暫く様子でも見とけ」

「え!」


すると、山崎が捲し立てるようにこう言った。


「椿さんの心配は無用です。俺が責任をもって看病しますから。それから、皆さんが思っているような事はシていませんっ!そういう事を思い付くあなた方の方が武士としてどうかと。ねえ、藤堂さん!」


「っ。じゃ、じゃあさっき何してたんだよ!」

「粥を食べさせていただけですっ!」

「・・・粥?」


「それから、沖田さん」

「はい」

「男心の件に関しては些か俺も困っています。それはこちらで何とかしますから、お構いなく!」

「原田さん」

「お?」

「出来るだけ椿さんとは二人きりにならないで下さい。あなたの色香は彼女には強すぎる」

「なっ」


それだけ言うと、山崎は広間から出てきた。

そして土方と椿の姿を見て(寄り添っている)眉を歪めた。


「椿さん、寝ていてくださいと言いましたよね?」

「へっ」

「土方さん、椿さんが可愛くて仕方ないのは分かりますが。どうか副長の仕事をして下さい。このような諍いで手を煩わせて申し訳ありません。以後、気をつけます」


土方に会釈し、引き剥がすように椿を自分に引き寄せる。

まだ体調が不安定な椿をスッと抱え上げ、踵を返し颯爽とその場を離れた。


土・・・あいつヤルな!!

原・・・本当に山崎か!?

藤・・・カッコイイじゃん!

沖・・・面白いなぁ、さすが椿さん


「椿さん、大人しくしていないとダメじゃないですか」

「すみません」

「いえ、体調が治ったら少し勉強をしましょう」

「それは、なんの」

「男心です!」

「ひっ」


山崎が男心を指南するようだ。

しかし、この後、長州の動きが活発になり始めたことから当面はお預けになってしまうのだが。


「取り敢えず、部屋に戻ったらお説教です」と耳元で囁かれ、椿は今度こそ観念したのか、山崎にされるがままに看病を受けたらしい。



添い寝をしてから山崎の独占欲は強まるばかりだ。


椿は俺の女だっ!とは言いませんが、着実に俺の椿になりつつあります。

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