第七十一話 仲直りの方法もクズなのが酒飲み
ヤマトの国を出て、数週間が過ぎた。
俺とキリヤの二人旅は、相変わらず静かで、重苦しい空気に満ちていた。
俺が悪いのは分かっている。
しかも、今まで気付かなかったが
よく思い返すとヴラドを倒した時にキリヤはボロボロだった。
初めはヴラドにやられたとばかり思っていたが
その前の会話でヴラドは水月で軽々と追い返したと言っていた。
おそらくヴラドを追い返すだけならキリヤでも出来たはずだ。
だから、キリヤを傷付けたのは俺だ…
そんな俺を見捨てず仲間の元まで引っ張って連れてきてくれた。
謝罪とお礼を言いたい気持ちがある。
だが、言うきっかけが無い…
その後ろめたい思いだけが心につっかえていた
旅路の途中、一行は澄んだ川が流れる開けた場所で野営をすることになった。
皆自分の事は自分で行うことになっている。
俺も自分の衣服を洗うために川で洗濯をしようとしていた。
「あっ…」
同じくキリヤも自分の下着を持って洗濯に来ていた
俺らはそれぞれ少し離れたところで何も話さず洗濯をしていた。
ここで言うしかない
「なぁキ…」
そう言いかけたところで
「ルンルンルンッルルウン」
少し下流のところにブランがある意味天才的な音程の鼻歌を歌いながら洗濯に来ていた
これまでだったらキリヤが近づいてきて
おい、相棒、ブランの下着の色で賭けようぜ
とか言ってくるのだが
一切何も言ってこない
俺も、折角二人きりになってごめんとありがとうを言おうとしていたのに
言い出せなくなってしまった
彼女は、岩の上で洗濯板代わりに服をこすり始めた。だが、その時だった。
足を置いた岩には、つるりとした苔が生えていたのだ。
「―――きゃっ!?」
可愛らしい悲鳴と共に、ブランの体は綺麗な放物線を描いて川の中へとダイブした。
ザッバーン!という盛大な水音。
「ブラン!?」
俺とキリヤは顔を見合わせて
「さ、探しに行った方がいいよな…?」
「あ、ああ追いかけよう」
俺たちは川沿いを急いで駆けていった
百メートルほど先の対岸にブランが川から上がるのが見えた
「とりあえずは良かったな、どうするよ博史、俺様らは先に帰るか?」
「いや、あのブランだぞ、道に迷うに決まっている
俺らが洗濯してたとこらへんに橋が掛かっていたよな
そこまで戻ってブランを迎えに行こう」
急いで橋を渡り、ブランが上がったところに戻る
ブランの濡れた足跡を辿ると近くの洞穴に続いていた
「全く、ついてないわ、あたしが川から落ちたって言ったら
また、ポンコツブランだってみんなに馬鹿にされる
服を乾かすのに火を付けるのには石と石を擦るんだっけ…」
大きな岩の向こう側。
入り口の太陽の光に照らされて、一人の女のシルエットが、くっきりと浮かび上がっていた。
「「ブ……!」」
俺とキリヤは、同時に息を呑んだ。
声も出せず、その場に凍り付く。
彼女は、濡れた服を脱ぎ、下着だけの姿で着くはずのない火を起こそうとしていた。
普段のボーイッシュな服装からは想像もつかないほど、華奢で、そして驚くほど女性的なラインを描いていた。
俺らは瞬時に入り口の岩の陰に隠れる
時折、彼女が身じろぎするたびに、そのシルエットが揺れる。
髪を絞る仕草、冷えた腕をさする仕草、下着姿でしゃがみ込み懸命に石を打つ仕草
その全てが、直接見るよりも、遥かに生々しく、そして背徳的だった。
(…見ちゃ、いけねぇ…)
隣を見ると、キリヤも、同じように動けないでいた。
岩に映るブランの女性的なシルエットを眺めていたら
「そうよ、銃があるんだったわ、撃てば火が付くかもしれない」
と突然バァアンと発砲し、
ブランのひっくり返ったシルエットを見たところで
俺らは危険と判断して離れた
「「まさかのピンクだったな」」
俺らは声を揃えて言い、イメージと違うなとか、意外と胸が大きかったとか、笑いあった
「…なあ、キリヤ」
「…言うな、相棒」
言葉は、それだけで十分だった。
俺たちは、顔を見合わせると、再びぷっと吹き出した。
そして、それはやがて、腹を抱えての大きな笑い声に変わっていった。
アメリコ以来、俺たちの間にあった、あの重苦しくて気まずい壁は、もうどこにもなかった。
「もうそろそろ皆が探し出すころだろう」
「そうだな、この辺なら探しに来た感じになるだろう」
俺らは声を合わせ
少し離れたところから洞穴めがけて
「「ブラーンどこ行ったー?」」
少し時間が経った後
洞穴からビチョビチョのブランが出てきた
「ひ、博史にキリヤ、あたしはここにいるけどどうしたの?」
ブランはビチョビチョの服にぴったりと張り付き下着のラインが浮き出ている
そして何より俺らはこの色までも知っている
「ブラン、突然いなくなったから皆探していたんだぞ
どうした、そんなに濡れて」
「な、何でもないわ、洗濯して川になんて落ちてないんだから」
「そっか、洗濯して川に落ちたんだな」
俺は服を脱いでブランにかけてあげた
ブランは驚いた顔をし、キリヤはひゅう、と口笛を鳴らした。
「「ブランー」」
野営の方から皆の声がする
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