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第六十八話 サクラの決意


出発の時

巫女と将軍が見送りに来てくれた

「フローレン、ダーリンとの間には何もなかったのね」

「ああ、触られただけよ」


「全く…ダーリンったら私のを触れないからって

仕方がないわねー」

巫女は恋する乙女の様にもじもじする


「っと、ところで、サクラ、君はどうしますか?

私が巫女として冥界にアクセス出来なくなった今

君の力が必要なので私の跡をついで貰わないと困るのですが

(サクラが継いだらヨォーヨに会いに行けるし…)」


「あっちは……」

サクラは東の山並みを見つめた。

朝霧が流れ、遠くで鳥の声が響いている。


「明らかに、あっちより実力が上……」

彼の声には、悔しさと焦りが滲んでいた。


「しかも、あっちみたいな一族だけで伝承されていたんじゃない。

 ここは実力のある者が集まって、切磋琢磨して鍛え上げられてる……」


拳を握る音が静寂に響く。

その手には、かつてブランが使っていた弾丸が握られていた。


「今回、ブランはんが死んでしまったのは――あちきの未熟さゆえ」

唇が震える。

それでも、サクラはまっすぐに前を向いた。


「……あっちは、もっと強くならねばならぬ」


風が吹き、彼の髪を揺らした。

その横顔には、かすかな涙の跡が光っていた。


ミーナがそっと近づく。

「サクラ……ブランは、あなたを責めたりしないよ」


サクラは首を振った。

「……あちきは逃げへん。」


 その言葉に、ブランが歩み寄った。

「サクラ、あなたのせいじゃない。

あたしは自分で選んだんだ」


サクラは静かに首を振る。

「そうやとしても、あちきがもっと正確に読み取れたら、守れた。

 ……けど、後悔ばかりしてても駄目なのも分かっている」


将軍が優しく微笑む。

「サクラ、俺公は巫女はこいつ以外ありえないと思っていたが

以前戦った、サクラのことなら信じられる。

 “サクラなら、この国を託せる”」


サクラは目を閉じ、胸の奥でその言葉を噛みしめる。

「……せやね。

 あちきは、ここに残る。」


風が吹き、桜の花びらが舞った。

まるで空が、彼女の決意を祝福するかのように。


博史が肩の荷を整え、空を見上げる。

「……サクラ、また会おう。」


「うん。博史はん」


博史たちは背を向ける。


サクラは最後まで見送った。

その背が霧に溶け、姿が見えなくなるまで、祈るように手を合わせていた。


涙はこぼれなかった。

代わりに、笑みが浮かんだ。

それは悲しみではなく――希望の笑み。


やがて霧が晴れ、光が差し込む。

サクラの髪が陽光を受け、白く輝いた。


「――あちきも、強くなる。

 この国の人らがもう二度と泣かんように、

 今度は“守るための巫女”になるんや」


風が吹き抜け、桜の枝を揺らす。

一枚の花びらが舞い上がり、旅立つ仲間の背へと流れていった。


それはまるで、彼女の祈りそのものだった。




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