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第六十三話 将軍は酒が好きに決まっている

翌朝、誰も昨夜のことには触れなかった。




早速、蘇生の秘術を知るという「巫女」に会うため

国の中央にそびえる神聖な神社へと向かった。


しかし、神社の荘厳な門の前で、彼らは鎧武者たちによって行く手を阻まれる。

「止まれ。ここは神域。

異国の者、穢れを持つ者が足を踏み入れて良い場所ではない」


衛兵の言葉は、冷たく、有無を言わせぬ響きを持っていた。

「待ってくれ! 俺たちは、巫女様に会って、頼みたいことがあるんだ!」


キリヤが声を荒らげるが、衛兵たちは眉一つ動かさない。

「…どうやら、簡単には通してくれないみたいね」

マリーがため息をつく。


この国は、獣人が中心でありながら、

人間の国からの侵攻を幾度も退けてきた歴史を持つ。

外部の者、特に人間に対する警戒心が極端に強い。


「…困りましたね。どうしましょうか」

ルサーリカが途方に暮れていると、衛兵の一人が、一行の後ろに立つ水月を一瞥し

「我らが国の守護者である将軍様からも、お前たちのような素性の知れぬ武力集団は、固く門に入れるなとのお達しが出ている」

将軍――この国の軍事を司る、もう一人の権力者。


「俺様たちは将軍にこの酒を献上しに来たんだ」

キリヤがそう言う

今までのキリヤは武力で解決しようとしていたが

もう違う

アメリコでの一件がなければ、今までのキリヤは、問答無用でここに殴り込みをかけていただろう。武力だけが解決策ではないと、あの絶望的な旅の中で学んだのだ。


「酒…だと…?」

鎧武者の一人が言う

「ば、馬鹿野郎!知らねぇ奴からの酒を将軍様に差し出すわけには行かねぇだろう」


「まあまあそんなこと言わず、いっぱいいかがですか」

マリーが手慣れたように酒を差し出すと

鎧武者は一口ごくりと飲み込んだ

「う、旨い!何だこの酒は!?」


「俺様達の『シューティングスター』特別の酒だぜ」


「し、シューティングスター…

これほどの酒を持つ者を門前払いした事が

後々将軍様の耳に入ったら切腹は免れぬ…

貴様ら待って居ろ、話だけ将軍様にしてきてやる」


最高級の「シューティングスターの酒」を携え、将軍の屋敷を訪れた。

広い部屋の中央に鎮座する大きな猫の獣族が堂々と胡坐で鎮座していた。


「ほう、これが…」

将軍は、酒に強い興味を示した。

将軍の声は威厳に満ちていたが図太い声ではなく

女性の声だった…


彼女の尻尾をよく観ると、猫ではなくライオンの尻尾だった。

フローレンは将軍にグググと喉を鳴らしているが

将軍は一向に構わず、酒にのみ興味を持っている。


「一杯、いかがですかな?」

チェンマンの言葉に、将軍は豪快に笑った。

「よかろう! その酒が本物か、俺公が舌で確かめてやる!」


その夜、将軍の屋敷では、盛大な宴が開かれた。

キリヤは、将軍と互角に酒を酌み交わし、

武勇伝を語り合い、いつしか二人の間には奇妙な友情が芽生えていた。

「がはは! お主、面白い奴よな! 博史とやらから、そんな面白い飲み方を学んだのか!」

将軍が、屈託なく尋ねる。


「おうよ! 相棒は、酒の飲み方だけは天才的なんだぜ!」


「で、その相棒とやらはどこにおる?」

シューティングスターの面々が顔を合わせる


「今は休養中なのよ」

最初に口を開いたのは、マリーだった。その声は、いつものように明るいが、どこか無理をしている響きがあった。


「休養か?」

将軍の目が、鋭く光る。

「ほう。この俺公との宴を断ってまで、休まねばならんほどの深手を負っているとでも言うのか?」

「…ああ」

キリヤが、短く答えた。その顔から、いつもの軽薄な笑みは消えていた。

「…ちょっと、な。色々あって、今は心を休めてるんだ

だから、巫女に会わせて欲しいんだ」


彼女は、それを聞くと以上何も問うことなく、

盃に残っていた酒を一気に飲み干した。

「…そうか」

将軍は、盃をドン、とテーブルに置くと、それまでの上機嫌な雰囲気を一変させ、厳かな口調で言った。

「悪いがお前たちを巫女に合わせるわけにはいかない」

「何でだよ!」

キリヤが、思わず声を荒らげる。


「お前らなら分かるだろう、フローレン、サクラ

獣人が人間から受ける扱いを

こいつらがそんなことをしないのは分かる

だが、簡単に許しちまっては代々俺ら将軍が守ってきた意味がねぇだろう」

将軍の闘気が膨れ上がる


「ふ、フローレンはん…」


「サクラ…やるしかないだろう」

フローレンとサクラが、静かに武器に手をかける。



将軍が、ゆっくりと立ち上がる。その巨躯は、まるで獅子そのもの。

「ああ、そうだ、俺公にそんな話を通したければ力づくで通させるんだぜ」


三人の強者が、静かに睨み合う。

先に動いたのは、フローレンだった。

「刺す♥」

彼女は床を蹴り、槍を構えて一直線に将軍に突進する。その速さは、もはや人間の目では追えない。

しかし、将軍は全く動じない。

「甘い!」

将軍は、迫りくる槍の穂先を、その身にまとった着物の袖で、いとも容易く絡め取った。

「なっ…!?」

フローレンが驚愕する。

「力だけでは、俺公には届かんぞ、小娘!」

将軍は、そのまま袖を引いてフローレンの体勢を崩すと、がら空きになった胴体に、重い鉄拳を叩き込もうとした。

その瞬間、将軍の足元から、一本の影が伸び、将軍の鉄拳の軌道を逸らした。

サクラの『占星術』による、未来予測に基づいた呪術。

「ほう、面白い術を使う」

将軍は、足元の影を一瞥すると、興味深そうに言った。

「だが、影があるのは、光があるからこそよ!」

将軍が咆哮すると、その体から金色の闘気が爆発した。

サクラの影の呪縛が、光によって焼き尽くされて消える。

「くっ…!」

サクラが、術を破られた反動で膝をつく。

フローレンは体勢を立て直し、再び槍を構える。サクラも、新たな呪符を手に、将軍を睨みつける。

二人がかりでも、まるで歯が立たない。これが、ヤマトの国を守護する将軍の力。

「どうした? もう終わりか?」

将軍が、余裕の笑みを浮かべた、その時だった。

「―――フローレン! サクラ! 合わせろ!」


博史の声に、二人はハッとする。

フローレンは、槍を構え直す。しかし、その狙いは将軍ではない。道場の天井だ。

サクラは、呪符を天に掲げる。その狙いは、将軍ではない。フローレンの槍の穂先だ。

「刺す♥!」

「星よ、我が声に応えよ!」

フローレンの槍が天井を砕き、大量の瓦礫が降り注ぐ。

サクラの呪術が、その瓦礫の一つ一つに「重力増加」の呪いを付与する。

ただの瓦礫が、砲弾のような質量を持って、将軍の頭上へと降り注いだ。

「がはは! 面白い! だが、そんな小細工!」

将軍が、それらを全て闘気で弾き飛ばそうとした、その一瞬。

彼女の視界から、フローレンとサクラの姿が、完全に消えていた。

「どこへ…?」

「―――ここだ!」

「―――ここや!」

声は、左右から。

瓦礫の雨に気を取られた一瞬の隙を突き、二人は将軍の死角へと回り込んでいたのだ。

サクラの影が、将軍の逃げ道を阻み。

フローレンの槍が、将軍の脇腹を狙う。


完璧な連携による、必殺の一撃が迫る。

「…見事だ」

将軍は、そう呟くと、静かに目を閉じた。

将軍は再び静かに目を開くとニカッと笑い

「おっしゃぁー!

友達と拳を混じ合わせ、酒を飲んだ後と言ったら風呂だろう!

ひとっ風呂かまそうぜ!」


「…悪いな、風呂は大好きなんだが、今は『取引』の方が大事なんだ

なあ、将軍、早く、俺様達を巫女に会わせてくれねぇか!

ブランを生き返らせなきゃ行けねぇんだ」


キリヤの言葉を聞くと将軍は酒をひっくり返し再び激高した

「てめぇら、あのクソの神どもに頼み事をするつもりかぁ?」

戦いの時以上の覇気にフローレンが冷や汗をかく


「この国は神と繋がっているから守られているんじゃなかったの?」

ルサーリカが冷静に問いかける


「ああ、国はそうだ…これは俺公の私怨だ…

まあ、良い…約束は約束だ

あの女の所に案内しよう」



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その他の作品も読んで頂けると嬉しいです。

【最恐オーガは他種族女子と仲良くなりたい】

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