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第四十七話 強い女性は強い

――――――――――――――――――――――

【回想終わり】



そして、これから決勝

本当は準決勝を本日行い

明日決勝のはずだったのだが


俺とキリヤが失格になってしまったため

トーナメントは一気に決勝へと進むことになり

本日そのまま決勝が行われた


決勝戦のカードは、W・ムーン対、残虐絶倫ゼファーだった


だったというのはとっくに決着は着いた

昨日の事を聞いている間

W・ムーンが一瞬でゼファーを吹き飛ばしてしまったからだ

「今大会の優勝はW・ムーン!」

審判の宣言も、どこか呆然としていた。


そのまま、闘技場で祝勝会が行われた


「優勝者のWムーンさんには聖剣を…」

司会が恭しく聖剣を差し出すと


「要らないわ」

W・ムーンは、その聖剣を無造作に蹴り飛ばした

カランカランと音を立てて転がる


次の瞬間、聖剣は抜かれた時のような衝撃波を会場中に放った


「あんた、傷付けられただけじゃ物足りないの?」

W・ムーンは、聖剣が放つ衝撃波をものともせず

それ以上の威圧感を聖剣に向けて放つ。

すると、あれほど傲慢だった聖剣が

まるで叱られた子犬のように大人しくなった。


「物が意思を持つと面倒なのよ」


「そ、それじゃ聖剣は…」


「そんなのわたしの知ったことでは無いわ

そんなことより、博史って言ったかしら」

彼女の仮面が、まっすぐに俺を捉える。

「私も仲間に入れて」

わ、私…?

まさかとは思ったけど女の人なのか…?

てか、女の子なら俺らが駄目だった『騎士の夜の嗜み』を

夜のをどうやってクリアしたんだ?


「ば、バカ言ってんじゃないよ」

ブランが焦ったように叫ぶ


「そう…」

仮面で分からないが少し悲しそうな気配が漂う


「いきなりでよく分からないが、なんでパーティに入りたいんだ?」


「…あんた日本人だよね」

そう言うと仮面を取った


その下に現れたのは、息を呑むほどに美しい

しかし氷のように冷たい表情の女性

男にしては声が高めで線が細いと思っていたが…

というより博史は彼女の顔を知っていた


「女性最強格闘家…神楽水月…」

彼女は相変わらず無表情のまま


「そう

私の名前を知っているのね」


「俺が死ぬ数日前に行方不明になったとテレビで見たが

死んでいたのか?」


「その様子だとこっちに来た時期も同じようね」


「なんだなんだ、謎の仮面剣星が美しい女性で博史の知り合いなのか?」

珍しくキリヤが口説きに行かない。

それほどまでに、彼女から発せられる『殺気』は濃密だった。

それは、闘技場で感じた誰の殺気とも違う

生物としての格の違いを感じさせる

絶対的な強者のオーラ。

凡人の俺ですら、本能が「逃げろ」と警鐘を鳴らしている。


博史は目の前の猛獣を怒らせない様に言葉を選びながら発する

「彼女は有名人で俺が一方的に知っているだけだ

暗部家系の末裔で格闘家として敵が居なさ過ぎて、

次は男の格闘家と戦うってなった時に失踪したと聞いていたが」


「詳しいわね」


「…日本人だったら知らない方がおかしいよ」

この人の前で武道を多少かじったことあるなんて言えない…


「そんな強いやつが何で死んだんだ?

病気か?」

ボリスの能天気な言葉に一瞬緊張が走る


「殺されたのよ」


「殺された?

そんなに強い君がか?」


「暗部家系の暗殺手段なんか古かったって事ね

それで本題だけれども

私も一緒に行っていいかしら」


「駄目だ、危険過ぎる」

その言葉にフローレンが真っ先に反応する


「まあ、待ってフローレンちゃん」

興奮気味のフローレンをマリーが制する

神楽水月ちゃんは転生人なんだよねー

その強さはスキルか何か?」


「スキル?」


「ええ、転生してきた人は強いスキルを持っている

博史ちゃんは持っていないらしいけどね」


そう言えば『酒乱』のスキルは言ってないんだった

てか、ここでもう言ってもいいかもしれない

「実は…」

「特に感じたことはないけれど」

水月の返答にタイミングを逃してしまった


「使わないと本人は気付かないですものね

ギルドに行って確かめてみましょう

彼女の事知らなくて拒絶も歓迎も出来ないでしょうから」



マリーの提案に、誰も反論はできなかった

俺たちは、水月を伴って再び闘技場の国のギルドへと向かった


ギルドの扉を開けると、職員や冒険者たちの視線が一斉にこちらに集まる。

昨日、絶対王者である聖剣を破ったキリヤと、得体の知れない勝ち方をした俺。

そして、優勝した謎の仮面剣士(W・ムーン)を連れているのだから

注目されないはずがない


「あ、あの…スキルを確認したいのですが…」

俺が受付に声をかけると、職員は緊張した面持ちで奥の機械へと案内してくれた

それは、水晶が埋め込まれた古めかしい機械だった。

「水月ちゃん、どうぞ」


「この機械でスキルっていうのが分かるの?」

「ええ、やってみて」

マリーに促され、水月は無表情のまま機械にそっと手を乗せた。

水晶が淡い光を放ち、カタカタと音を立てて文字が浮かび上がってくる

皆が固唾を飲んで、その結果を見守った



【固有スキル:レタスとキャベツを見分けられる】


「な、なんだそのスキルははは」

キリヤが緊張が溶けたように野次を言う


「…私の初めての殺しは

私がレタスとキャベツを間違えたのをバカにしてきた

5つ上のハトコだった」

その言葉にみなが冷や汗をかく


「だ、駄目だ駄目だこいつは危険過ぎる!」

フローレンの言葉に

水月がその場をあとにしようとする


「ま、待って!

急に異世界に来て一人で生きていくのって

とっても大変だと思う

君の言葉に嘘はない

だから一緒に行かないか?」


「おい、博史!」

「あら、博史も男ねー

ドキドキしちゃうわー」

「俺様も女の子が増えるのは大賛成だぜ」

と皆がそれぞれの思いを発する


「俺は一人ではこの世界で生きていけなかった

だから、君から入りたいって言ってくれたのを

決して無下には出来ない」


「そうねー

その強さがスキルじゃないってこと

マリリンも興味があるしー

でも、まだ、混乱している子もいるから

出発する前に考えをまとめてもう一度貴方に会いに行くわ」


「ええ」

そう言うと水月は再びギルドを後にしようとした


「ちょ、まてよ」

あ…女の子に言いたいセリフで

いつも妄想してたからとっさに出てしまった…


「貴方に、そのものまねは似合わないわ」

この人が元ネタを知っていると

鼻から花火が出そうなほど恥ずかしい…


「博史…なに顔を赤くしているのよ

いやらしい」

ブランがボソッと小声で言う


「あ、いや、これは…間違えただけで…

って、君が剣を抜いたの見たことないけど

それって魔物の素材を使ったものだよね」


水月は軽く頷く


「君が作ったの?

龍の素材があって、戦闘時に上に羽織るモノが欲しいんだけど

作れないかな?

あ、もちろんお金は払ってくれる

ルサーリカが」

周りの視線がルサーリカに集まる


「変な言い方しないでよね

基本は博史自身の報酬から天引きだから」


「素材の加工は出来るけど

裁縫は出来ないわ

上着の部品だけになるけどそれでも良い?」


「あとは私がやるわ

毎回の博史の防具よりマシだから」

ミーナがため息交じりに言う


「分かったわ、泊っているところまで持ってきて」


「ああ、助かるよ」

水月は自分の宿泊施設を告げるとそのまま帰っていった



「張り込むわよ」

小声でマリーが言う


「絶対に気付かれるだろう」


「だからいいのよ、何も怪しい事をしていないんだったら

つけられたところで大丈夫でしょう」



その夜、ブランと博史が水月の監視をする番だ

正直こんなことをして意味があるのか

彼女の実力ならいつどこから監視されているまで気付いていそうだ


彼女は自分のホテルに戻った

「カーテンを締められたら監視は終わりだな」


「博史…何か期待してない?」

そ、そんなまさか、カーテンを開けたまま着替えてくれないかなとか思ってないからね


彼女は期待通りか否かカーテンを開けたまま仮面を脱いだ

そして、俺の期待通り…ではなく

服を着たまま、余程疲れたのかそのまま寝床に入ってしまった


俺らに何もやましい事をしてないですよ

アピールでもしているのだろうか


「ブラン寝てしまったな…

どうするよ?」

俺が肩を落としていると、隣でブランが息を殺しているのに気づいた


「なに残念がっているのよ、むっつり博史

寝てしまったのなら帰るわよ」

とブランが言い帰ろうとしたその時


水月の毛布が小刻みに揺れている

顔を赤くし、「うっ」とうめき声を上げてような様子だ


具合が悪いのだろうか、

二十歳そこらの女性が一人で異世界を生きてきて辛かったのだろうか

そのような心配をしながら

もし具合が悪いのなら

助けにいかないといけないと思っている

と様子がおかしい


心配になって身を乗り出すと、

その様子は明らかに尋常ではなかった。


呼吸は荒く、肩ではなく、

もっと腰に近い部分が小刻みに動いている。


顔が赤いのは悲しみや涙かと思ったら

紅潮という言葉が合う表情


そう…


エクスタシー


「な、何やっているのあの女…?」

ブランが、信じられないといった表情で声を漏らす。

「博史…何じっと見てるのよ!

行くわよ!

あんな女絶対に仲間にしないんだから」


もっと見ていたかった


あんな強く気丈な女性が

その晩はあんなことをするのかと思うと…


野営に戻ると、後夜祭という名の酒盛りが始まっていた。

だが、その夜、俺はどうしても酒を飲む気になれなかった。


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