第三十九話 闘技場は男の憧れ
闘技場――それは剣が築いた聖域
かつて世界を救った勇者の聖剣が
自らの意志で創り上げた戦場
闘技場の優勝者は
強きものが使えば
世界を分かつことが出来るとまで言われた
聖剣を手に入れることが出来る
今それを手にしているのは聖剣自身
白銀の髪、深き空のような瞳。
青年の姿をしたその者こそ聖剣レーヴァン
世界を救い封じられた英雄の遺産
自らを打ち倒す“真の勇者”を求めて
この場に立ち続けている
闘技場には
剣の力を欲しがる者
栄光を求める者
復讐に囚われた者――
富と名声を求めた男どもが集る
だが誰一人として
彼を“倒す”には至らなかった
力だけでは足りない
心だけでも、届かない
全てを背負い
光をもたらす者
そして、また新たな挑戦者たちが、敵わぬ夢を求めて闘技場へと足を踏み入れる
水の都を後にし
俺たちは次の目的地へ向かうことにした
次の目的地は情熱の国
——剣闘士たちが集う
闘技場のある地
風景は次第に変わっていった
湿った水の都の空気から
乾燥した熱気を感じる大地へ
赤土の道が続き、遠くには雄大な岩山が広がる
「さて、皆さん」
旅の資金管理を一手に担うルサーリカが
帳簿を片手に重々しく口を開いた
「水の都での一件で、資金が底を尽きそうです
闘技場で旅費を稼いで貰います」
ルサーリカの言葉が、もはやパーティの恒例行事の号令になってきた
「ダンジョンの報酬とジジイの金がたっぷりあったネ
もうないネ?」
メィェンタオが不思議そうに首をかしげる
「誰かさんが裁判沙汰になりそうなところを
迷惑料で丸く収めたのですよ」
ルサーリカの冷たい視線がキリヤを射抜く
「キリヤ借金ネ」
「何で金出したのに
追い出されんだよ」
キリヤが不満を叫ぶ
「金をだしたから
追い出されるだけで
すんだんですよ」
ルサーリカの言葉に、キリヤはぐうの音も出ない
その剣幕にすっかり怯んでいる
「闘技場って次の国にあるのか?
どんな国なんだ?」
「バニッシュは 情熱と欲望の国
聖剣が主を求める為に闘技場を作り
実力者が集まり発展していったのよー」
「実力者が集まった国?
セイみたいな国なんか?」
フェフチェンコが尋ねる
「闘技場の強さとダンジョン内での強さは結構違うわ
闘技場は純粋な戦いの強さ
ダンジョン内は戦いだけでなく
サバイバル能力や仲間とのコミュニケーションが大事になってくるからね
闘技場で名を馳せた冒険者がダンジョンであっさり死んだり
逆もまたよくある話よ」
マリーはそこで言葉を区切り
ニヤリと笑った
「そして一番違うのは
闘技場は個の戦い
実力者と言えど死闘は怖い
多くの男は女を買って
戦いに望むの
売春と闘技場の国
だから欲望と情熱の国
ねぇキリヤ
羽目を外し過ぎないようにねー」
「うっ…
そ、そういうマリーは大丈夫なのかよ」
「マリリンは良識の範囲内で
お互い合意の上だから大丈夫なのー」
良識とは何だろうと疑問に思う
「てか、闘技場と売春
それだけで国が成り立つのか?
俺の前世にそんな国は無かったが」
「もちろん売春は主な産業だけれど
他にも観光、賭博
それだけの産業があれば人も集まる
人が集まれば、衣食住が充実し、生活する人も多くなる
国として充分成り立つわー」
「賭博かぁー」
キリヤの目がギラリと光る。
「なあマリー、俺様と博史二人に、このパーティの全財産賭けねぇか?
こんな簡単なことで、この先の旅が楽になるのは願ったりだろ」
「お、おい、俺が出るのか?」
「メィェンタオも出るネ
剣星の称号
ジジイの免状より価値あるネ
みなメィェンタオに賭けるネ!」
「メィェンタオ…
いいのかそれで…
てか、剣使えるのか?」
「お前らと違って
あちきにはまだ役に立てる事
何もないネ
闘技場で勝てば良いんだから
剣は必要無いネ」
メィェンタオはメィェンタオなりに
色々と思うところがあったのだろうか
「そうねメィェンタオ
何が何でも勝って旅費を得ましょう
でも賭博は駄目です」
ルサーリカがスパっとキリヤの提案を切り捨てる
背後にいたボリスとミジムがギクッとするのが見えた
「何でだよルサーリカ
な、確実に儲かれる話があるんだから
乗るに決まっているだろう?」
「確実な事などありません
賭博は大本が儲かる仕組みです
賭博でリスクを取るべきではないです
やりたいのなら自分のモンでやってください」
「お、俺様、モン持ってねぇんだけど」
「それじゃあ諦めて
優勝賞金だけを狙うべきですね」
ルサーリカの正論に、キリヤはしぶしぶ引き下がった
「それならフローレンも出た方が良くないか?」
俺がそう言うと、
フローレンは期待に満ちた目でしっぽを振り振りする
「フローレンは止めたほうがいいわ
あの無差別攻撃は闘技場向きじゃないもの」
マリーにそう言われ、しゅんとしっぽが垂れてしまった
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