第三十六話 戦いとは人それぞれ
路地の突き当たり、小さな橋の下に続く隙間に身を滑り込ませる。
そこに普通は目に留まらない扉がある。
剥げかけた木材と鉄の鋲。
扉のすぐ横に埋め込まれた小さなランプが特定のリズムでわずかに明滅していた。
『ここからあのやろーの気配がするぜ』
「博史!」
ブランが勢いよく扉を開けるとそこは隠れ家的なバーだった
「な、何ですか
お客様ですか…?」
バーテンダーの女性がびっくりした様子で接客する
「あ、可愛い子ちゃん俺様とバックヤードで」
キリヤが口説こうと近づいた時
『おい、ケイティそいつ魔族だぜ』
バーテンダーの女性がアイスピックをキリヤの喉に突き刺す
完全に油断していたキリヤの喉のど真ん中に当たるが
アイスピックは喉を突き刺さらず皮膚の表面で止まった
「固い…!
我が呪われし冥界の槍で傷が付かないとは
お前らがジュラサンを殺した者どもか」
バーテンダーの女性
ナリールがそう言うと店に居た半分位の人達が立ち上がり
魔族に変身した
「か、可愛い!
お、俺様がやる!
こういうの待っていたんだ」
とにやけた表情でキリヤが言う
「女の子だからってなめないで頂きたい
我が名はナリール
冥府の国を支配し
幾千の世界を渡り歩き
宇宙の真理を得て闇夜の魂を読み解く
我が祝福の名こそナリール!」
ナリールは両手を広げ周りの魔族達はおおおと拍手をしている
『ケイティ、地下から気配がするぜ』
「行かせるか」
ナリールが地下に向かうケイティとブランに襲い掛かる
キリヤがナリールのアイスピックを素手で止めた
「先に行け!」
キリヤはそう言い
次の手でナリールの胸を掌で触りにかかる
「くっなんて固さだ…」
とキリヤの掌が胸に触れる寸前
体を立て直す為にナリールはキリヤから距離を取る
「惜しいなー
そう、これだぜ戦闘の醍醐味は
なぁなぁ
女の子の敵なら手が滑っておっぱい触っても良いんだもんなー
正当防衛ってやつだよなぁー
あとさー可愛い子に聞きたいと思っていたんだけどさぁー
きみーうんちでるの?
可愛い子はうんち出ないって聞いたけどほんとなの
ねぇ教えてよぉー
おしえてぇー」
キリヤは再びナリールの胸を大胆にも揉むために襲い掛かる
ナリールは懐に入ってくるキリヤの後頭部にアイスピックを突き刺そうとし
キリヤの手がナリールの胸を捕える寸前
キリヤがマリリンの魔法で潰れた
「ふぅ…戦力に余裕があるとはいえ
マリリンこっちに来て正解だったわね
キリヤ、敵とはいえ
そうゆう事は人としてどうかとマリリン思うの」
潰されたキリヤが
再びナリールに襲い掛かる
「マリー邪魔すんなぁー」
マリーの拳を1つ二つ躱しナリールに後ろから
お尻に向かってキリヤが襲い掛かる
ナリールの尻にあと一歩で触れそうな所でキリヤが黒焦げになる
なんなのこいつら…
何も出来ない…
キリヤは黒こげのまま違う魔族の女に襲い掛かる
「き、きやぁああー」
襲い掛かられた女の子が悲鳴を上げると
マリーの守護霊の足で潰れる
「マリリン…フローレンといいキリヤといい、何で味方で戦う方が多いの」
「どけぇーマリー」
「トール」
ブランとケイティはバーの奥にある階段を下ると
先ほどまで自分たちが捕まっていたような
いくつかの牢屋がある空間に出た
「博史!」
ブランが叫ぶ
「ぶ、ブラン助けてくれ」
牢の1つから博史の声が聞こえる
牢に近づくと鎖でグルグル巻きにされた博史が椅子に縛られていた
「何やっているの博史、あんたならとっとと出られるでしょ」
「出られないから捕まっているんだろう
ところでマリーも、キリヤも、フローレンもメィェンタオも居ないのか?
「居ないわ、キリヤは上で敵を引き付けているわ」
「ブラン、ケイティ気を付けろ!」
博史がいうのと同時
ロドギーが巨体で二人を潰しに掛かる
二人は博史のお陰で一瞬早く気付き回避した
二人が居た石畳に大きな手形が残る
――――まずい、デバフのブランとバフのケイティだと攻撃手段が無い
「危ないわね…
束縛‼」
「ぐぬぬ」
ロドギーがブランの魔法で縛られる
「なんであんたは頼りになる時とならない時があるんだよ」
「このしょ…束縛を解くでしゅ
さもないとおにいしゃんがこの中の誰かを殺すでしゅ」
「この部屋にもう一人敵がいるの…?
なんで教えてくれないのよ、ベックズこのやろーです」
『うるせぇなぁ
そいつだったら博史の後ろ
首に何か刺して注入しようとしているぜ』
「…博史さんの後ろで毒か何かを入れようとしているらしい、このやろーです」
「しょ、しょいちゅを死なせたくなかったら早くこれを解くでしゅ!」
「……博史がそんなのにやられるわけないだろう」
え…なにその自信…
いや、毒とか死ぬんだけど…
「るるるるらぃ、だったるぁここで確実に一人ぃやっちまっうぜぃぃ」
姿を消したままロドギーの針の先端が博史に突き刺され
液体が注入され意識が飛んだ瞬間
背後にいたロドギーが吹き飛んだ
「な、なにが起こったでしゅ…?」
その時目で追えたものはその場に誰一人居なかった
博史に注射したのはヴェルダンデから殺害用として渡されたメチルアルコール
酒に入っているエタノールと違い毒性の強い工業用アルコールだ
症状としてはアルコール中毒に変わりはないために
解剖学が発達していない世界の酒場で死んだとしてもアルコール中毒として扱われる
昔は日本でも貧困層の間では高価な酒の代用品として飲まれ多くの中毒者を出した
「に、にいしゃんに何てことするでしゅううう!!」
ロドギーはブランを足で押しつぶそうとするも
博史が高速で蹴り飛ばす
『ひゅうーやるじゃねぇか』
「す、すごいですね…博史さん…
こんなの初めて見ました
あ、ヴェルダンデのやろーはです?」
「しゅすしゅしゅす
待つでしゅ
にいしゃんがお前以外の誰かを殺しゅでしゅ」
ロドギーがかろうじて立ち上がる
ドロギーの姿が見えなかった
ドロギーは深い傷を追いながらも
スキルは解除せず次の行動に移っていた
「くそっ」
ブランとケイティが周りを警戒する
「ベックズさん、敵は?」
『また毒を拾ってお前らを狙えるとこで動いているんだがな
今の場所伝えても動いているから見えなきゃ攻撃出来ねーな』
「そうですか
…あちき、覚悟決めました。ばかやろーです
あちきにお任せ下さい!このやろーです」
「ケイティ、何するの?」
「スキル解除の歌
つま先からー」
「黙るでしゅ!
先にこの娘を殺しゅでしゅ」
ケイティの皮膚の表面が透明な何かに引き裂かれた瞬間
再び博史がドルディを蹴り飛ばした。
流石のドルディも二発食らっては瀕死の状態だ
博史にとってブランかケイティどちらかが狙われる状況では成す術無しだが
ケイティが狙われると分かっていればギリギリ間に合った
「ちょっとーあちきの歌聞いてくださいよーこのやろーです」
『バカヤロー小娘
スキル解除はちんがやっているんだからな』
「あ、わ、わ、わでしゅううう」
ブランが拘束魔法で二人を捕えた
「ふぅ、マリリンでも、キリヤ相手だと骨が折れたわね」
マリーの横で黒焦げのキリヤが転がっている
「っっ…!」
成すすべなく立ち尽くす魔族たち
「ま、怪物め私達をどうするつもり
深淵なる磔にも拷問にも屈しませんから!」
「キリヤー終わったよ…
って、マリリン?
キリヤ何で死んでるの?」
「ブランちゃん、そっちも終わったのね」
「…っ!ドロギーもロドギーも敵対組織に葬られてしまったっていうの
小娘に擬態して騙していたのね…小賢しい」
「ブランちゃんこの子らも縛ってちゃんとした兵士に渡しましょう
ところでヴェルダンデは?」
『そいつの気配はもうこの都から消えたぜ
逃げ足の速いチキン野郎だな』
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