第二十四話 酒はすべてを水に流す
朝の霧がゆっくりと消えゆく中
城壁が空のかすかな光を浴びて赤く染まる
その壮大な城門の両側には
雄々しい石獅子が鎮座し力強い威圧感を放つ
門の上には金色の文字が掲げられ
荘厳な書体が煌めいていた
迷宮都市 セイ
城壁で囲まれた城を中心に
遠くには細長いはげ山
実際にこのような場所があるのか知らないが
イメージだと中国
迷宮、ダンジョン
男なら心をくすぐられない訳がない。
でも、ここはゲームの中ではなく
生身の人間だ
ゲームのダンジョンは
死ぬこと前提で作られている
初見殺しなど「あーあ」で済まない
迷宮に潜るにしても安全第一
危ういと思ったら
直ぐ引き返す
その心を忘れてはいけない
「そろそろ皆さんのお金も尽きそうですし
任務の後はダンジョンで稼ぐのも良いですね」
そんな俺の心を読むかのように
ルサーリカが最近のお財布事情を話す
「そんなはずねぇだろ!
クリスたちがいっぱい持たせてくれたのに
食糧はブランのせいで無いけどな」
「キリヤあたしに喧嘩売っているのかい?」
「ポンコツブランに売るもんなんてねぇよ
全部ガラクタになるからなははは」
「てめぇこのやろ」
「はいはい、喧嘩は止めなさい」
ルサーリカが二人の間に入る
あれから俺の目には
ルサーリカの雰囲気が変わった
今までは一歩引いて
文句言われながらも
黙って雑務をこなす
古き母のイメージだったが
今は言いたいことを言い
少しオープンになった
「博史も見てないで
止めなさい」
「はい、すみません」
ルサーリカに怒られることも
多くなってきた
城内へ足を踏み入れると
整然とした石畳の道が広がり
両側には赤と金の色彩が映える屋根を持つ建物が立ち並んでいた。
屋根の端には龍と鳳凰の彫刻が施され
陽光の下でその金細工がきらめく。
「折角の迷宮都市なんだ
未踏のダンジョンの一つや二つ
踏破するのが男の夢だぜ」
キリヤが男の気持ちを代弁するも
「毎日毎日宴会を開いてるんですから
お金は当然無くなります
ギルドに着いたら
得れるか分からない迷宮探索より
任務ですからね」
「えー…任務って
つまんないのが多いじゃんかい」
「生活が第一
迷宮は後でです」
ルサーリカが厳しめに言うと
「ほーい」
と不満そうに返事をした
「資金不足か…
酒も買うとたけぇからな
穀物や果物を発酵させれば酒は出来る
俺らのパーティでも作ってみるか」
料理人のバゲロのチェンマンが言う
今更だけど料理人のくせに
バゲロって良くないよな
まあ料理がとびきり美味いし
衛生管理もめっちゃきちんとしているから
そこまで気にしてないけど
「おお、良いじゃねぇか
シューティングスター特製
共に冒険した酒
結構売れそうじゃないか」
とほら吹きのミジムが言う
「はいはい、
売るのは今度やってくださいね
今はお金が無いので
ちゃんと働いてくださいね」
「わかってるよルサーリカ
酒だから漬けて置くだけだ
任務はちゃんとやるからよ」
道を進むと
市場の活気が耳に飛び込んできた。
絹や陶磁器を売る商人たち
鮮やかな色合いの布や
精巧な器を並べ
通りを行き交う人々に声をかけていた。
香辛料の山から立ち上る芳しい香り
肉の串焼きがじゅうじゅうと音を立て
煙が空に舞い上がる
食欲をそそる香ばしい匂いは
俺たちの足を一瞬止めさせた。
「お、活気があるじゃねぇか
なぁルサーリカ
資金って事なら
屋台でも出すのはどうだ?
見たところセイのローカルフードが多くて
ロマネンドの料理は無い
まあまあ売れると思うんだが」
「そうね、それもありかかもね」
人々の衣服は絹と麻で織られており
官吏の者たちは深緑や青の長衣に帯剣を下げていた
女性たちは 髪を高く結い上げ
かんざしや花飾りを差し込んでいた
遠くからは
宮廷を囲む高い城壁と白い石の塔が見えた
塔の上には 鳳凰の旗がはためき
国の威厳を示していた
城門を守る衛兵たちは槍と楯を手に持ち
無言のまま厳かに立ち尽くしていた
岩肌がむき出しの山の
高い塔を上ると
冒険者ギルドがある
今回はキリヤは来ていない
マリリンに止められた
だから今日はブランと二人で来ている
ブランはアルブジルから
俺のことを避けている気がする
夜も特に酒は飲まず
誰よりも早く寝ている
フローレンに博史は下痢ピー野郎って
言われたからだろうか…?
よく分からん
そんな空気を察してか
マリーがブランと二人で行って来いと言い出した
もうあいつがリーダーで良くないか?
「千里の道も一歩から
ようこそ冒険者ギルドへ」
アルブジルは緑色
ここのお姉さんは何色…だろうか
「ロマネンドのシューティングスターです
暫くこの国で働こうと思っています」
「遠くからご苦労様です」
「こここらここまでの任務
すべてやります」
どうすればラッキーパンチを貰えるだろうか…
ポケットに入っている小銭を
「あああっ」と言ってバラまく?
駄目だ
キリヤは何故潰された?
マリーは万が一俺らが変なことしない様に
監視しているのだったら
俺はキリヤと違って頑丈じゃない…
殺される
自分から仕掛けるのはリスクが高すぎる
「助かります
ここに集まるのは腕に自身がある人
簡単な任務は溜まる一方で…」
振り向いた瞬間
ボタンを留めたシャツの膨らみ
その膨らみが作った
ちょっとした隙間
黄色のが光った
ビンゴぉ!!!
こ、この世界にキャミソールという概念は無いのだろうか…
ロマネンドでは上からだったから分からない
ブランの野球拳は記憶に無い
この世界に映像を残せる手段があったら…
写真の構造ってどんなだったっけな
光を紙に焼き付けるんだったか…
そんなことを思っていると
隣から鋭い視線を感じた
分かっている
俺はエッチなことを考えても
犯罪には手を出すつもりも
出せる度胸も無い
任務の内容は
ペットの捜索や魔物の討伐討伐
ありきたりで危険がなさそうな任務だ
とりあえず即日完遂出来そうな任務だけ
持ち帰ろう
帰り際
やはり気まずい…
こうゆう時は何か話題を見つけなきゃ…
「ぶ…ブランって変わったね」
「何がだい?」
あ、これは言葉を間違えちゃいけないやつだ
髪切ったねって言って
髪切ってないって言われたら
今後話してくれないやつかもしれない
「か、髪も伸びたし
一人称もあたいじゃ無く
あたしになったし」
「…昔は
強くならなきゃいけないって
焦ってたからねぃ…」
「色々あったもんね」
これは俺から深堀りしない方が
良いやつかもしれない
「…博史ずっと言いたかった事が
あるんだけど」
「…」
あ、これ俺叱られるやつか
ブランがお風呂に入っている時
下着を盗もうと妄想したことか?
ブランが寝ている時
こっそりパンツをのぞき見しようと考えたことか?
ブランが屈む時
未発達な胸の隙間から
乳首を見ようとしたことか?
どれも未遂なはずなのに…
「あ、あたしを救ってくれてありがとう」
「…??」
ありがとう…?
なんで?
「防具の事とか弟の事とか…」
「あー俺
あの時の事覚えてないんだよね」
「うん、そう言うと思っていた
それでも救われたから
これ…」
ブランが渡してきたのは
いびつな模様が入った
木彫りの小刀のようなもの
「うわっ!掘ったの?」
これが上手い訳では無いのは
正解を知らない俺でも分かる
そんなブランがわざわざ掘るなんて
それだけ防具の事気にしてたのか
「あたしらの部族に伝わるお守り
アルブジルの木を掘って作ったんだ」
「ありがとう
大切にするよ
なんだ、てっきり
ブランのない胸を覗こうとたのがバレて
怒ってたのかと思ったわはは…」
バァシシーン
とブランの綺麗な平手打ちが
俺の顔を強く弾いた
「むっつりドスケベ下痢ピー野郎」
スタスタと俺を置いて
パーティに戻っていった
博史が遅れてパーティに戻ると
後ろから
「モテるわね」
「うわっ!
びっくりした
マリーどうしたんだ」
マリーはブランから貰った小刀をじっと見て
「お守りね…
下手だけど
想いが込められている
…博史
モテるのは良いけれど
一人に絞りなさい」
「いや、モテて無いんだけど
てか、一人に絞れって
マザーの助言か?
説得力無いぞ」
博史は半分冗談のつもりで言ったが
マリーはガラにも無く真剣な表情をしている
「…そうね
私みたくなりたくなかったら
助言を聞いておいた方が良いわ」
珍しい
マリーが自分の事を【私】というなんて
「俺がマリーみたいに
色んな人を相手に出来ると
自分ですら
全く思わないんだけど」
「…そうね
むっつりドスケベチキン博史だもんね
マリリンの独り言よ
忘れて!」
ちょっと待て
女性陣の中で
俺はむっつりドスケベチキンになっているのか…?
さっきブランには
むっつりドスケベ下痢ピー野郎って言われたし…
いや、間違いじゃないけどだな…
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